プロダクションノート#4
vol. 6 2018-06-21 0
瀬々監督によるプロダクションノート4回目です。
【ロケ現場】
クランクインは2016年10月7日。初日は滋賀の豊郷小学校講堂で宇野祥平演じる、実業同志会の理事、森本とギロチン社の掠(リャク)のシーンから始まった。まずはギロチン社のシーンをあげていくスケジュールだ。アジトのシーンでは部屋の中に何人も集まって議論、撮影は深夜まで及ぶ。撮り終えギロチン社役の俳優たちも一旦帰京。10日、「古田のヨリの表情を追加撮影したい」と助監督の海野に伝える。既に荒巻全紀以外の俳優はいない。東出も別の仕事で不在。半分片付けられたセットで荒巻と演出部総出で俳優をやり寛 一 郎のアップのリアクション芝居を撮っていく。寛 一 郎の存在感の無さが気になった。人前で芝居をするのが初めてである新人俳優、それは十分わかっていたが、殻を破るにはどうすればいいか。寛 一 郎がダメだったらこの映画が終わる。
13日、寛 一 郎と倉地啓司役の荒巻との爆弾実験のシーン。前日にセリフ変更の差し込みを渡す。心情を吐露しあうものに変えた。翌日の撮影では寛 一 郎向けのカメラが何テイクも続く。テイク自体は長廻しで役者のテンションが上り詰めるまでカットしない。「もう一回」撮影は昼食時間も過ぎ、気がつけば鍋島のカメラは8分程のテイクが既に40回を超えていた。「自分で考えてこい」寛 一 郎が離れ茂みの中に消えて戻ってくる。それでも撮影は続き、陽が沈む頃ようやく終わる。その後予定されていた東出とのシーンまで届かなかった。昼から待っていた東出が近づいてきて言った。「僕ができることがあったらやります」翌日、東出はレンタカーを自ら借りて寛 一 郎をドライブに誘い様々な話をしたらしい。それが、転機になった。その後の演技は徐々に存在感を増していく。
寛 一 郎はクランクアップ時には、7キロ痩せていた。
一方、力士役の女優たちは、舞鶴ロケ中には大部屋で雑魚寝の合宿状態で寝食を共にする。「玉岩興行一座」さながらの絆を築いていった。撮影の合間に公園で四股の自主練習を行う。親方役の渋川清彦は撮影以外でも彼女たちに面倒を見た。食事に連れて行くなどして、出演ギャラの大半が消えた。
映画の後半戦に突入。木竜麻生が標的となった。木竜は芝居の基本は出来ている。だが感情の一線をなかなか超えない。後半は大西礼芳演じる勝虎が物語を背負っていく。大西の演技は目を見張るものがあった。「このままじゃ、大西に主役を取られるぞ」敢えて木竜に言った。木竜は泣きそうな目をしながらじっと黙って耐える。そしてカメラの前には、遮二無二ぶつかっていく花菊そのもの、木竜麻生がそこにいた。
第一次撮影が終了したのは10月29日。12月9日、大井川鉄道で一日撮影を行い全撮影終了。2016年はこうして終わった。
次回へ続く