FOOCO メンバーインタビュー Vol.3/EARTH&ME 丸田さん
vol. 3 2022-09-05 0
「カラダとココロにおいしいお菓子を、大切なあなたに。大切な私に」
FOOCO メンバーインタビュー Vol.3/EARTH&ME 丸田さん
「シェアキッチンを使っているのは、どんなひとで、どんなふうに活動しているんだろう」
シェアキッチンという選択肢を考えた時、まず思い浮かぶそんな疑問。実際にFOOCOを利用しているメンバーに、シェアキッチンを使い始めたきっかけや、“シェア”ならではの良さ、これからの展望をお聞きしました。
娘さんを抱っこしながら明るく笑うのは、《EARTH&ME》の丸田さん。ヴィーガン&グルテンフリーのお菓子を作っています。乳製品と小麦粉、そのどちらも使わないお菓子はなかなか珍しく、オープンから一年にして多くのファンが。「罪悪感のないお菓子を食べてほしい」と語るその瞳に、確かな想いを感じるインタビューでした。
文・写真=炭田友望
【お話を聞いたひと】 EARTH&ME/丸田さん https://www.instagram.com/earth_a_me/?hl=ja ヴィーガン&グルテンフリースイーツのお店。材料もできるだけオーガニック原料を使用し、やさしい甘さに仕上げられています。動物性食品と小麦粉を使っていないスイーツは珍しく、ファンも多い。子供から大人まで安心して食べられるおやつが揃っています。 |
■「お菓子を食べなくても、生きていけるけど」
それでも作るお菓子が生みだす、豊かな時間。
生地を混ぜている時も、出来上がったお菓子を梱包している時も、すっと伸びた背筋が印象的な丸田さん。
「10年ほど、ヨガのインストラクターをしていました。生徒さんに直接触れたり、体やメンタルのことを考える仕事をしていると、体をつくる“食べること”とは無縁ではいられなくて。レッスンで私から『あれ食べて、これ食べて』なんてお伝えしていないのに、生徒さんたちに『この食べ物はどうですか?』と聞かれることも多くて、“食”とは切り離せない生活でした」
自分が食べたものでパフォーマンスが変わるので、食べるものに無頓着だった生徒さんも自然と気にするようになっていくそう。
「ただ、ヨガの世界はインストラクターが飽和状態ということもあり、ずっと『このままでいいのかな』とキャリアに悩んでいたんです。ちょうど娘のアトピーにも悩まされていて、小麦粉に反応しやすかったのでおやつ選びにも苦労していて……」
そこへさらに重なったのが、新型コロナウイルス。
スタジオレッスンがすべてオンラインに切り替わったことで改めてキャリアを見つめ直し、ヴィーガン&グルテンフリースイーツの《EARTH&ME》をはじめる。
とはいえ、ヨガを生業にしていた丸田さんが“体にやさしいお弁当”や“野菜スープ”ではなく、“お菓子”を選んだのはなぜだろう。
「そこは挑戦でした。でもそれが面白いかなって(笑)。お菓子づくりのプロではないけど、私のしてきた経験から生み出せるものがあるはずだって。
お菓子って生きるために必要ないけど、やっぱりおいしいし、食べたら幸せだし、誰にとっても楽しい時間をくれるものだと思うんです。だから“罪悪感”を抱えることなく、安心して手に取れるお菓子を作りたくてはじめました」
そこには、子供を育てる母としての想いも重なる。
「『これ食べてよかったのかな?』『子供には食べさせない方がいいのかな?』って、考えるのもストレスですよね。しかも、子供にはダメと言ったものを、なんで自分は食べてるんだろう?と我に返ったり(苦笑)。
《EARTH&ME》では、そういう自分自身の気持ちも大切に、みんなでテーブルを囲みながら“一緒に食べられる”お菓子をお届けしています。ヴィーガンやグルテンフリーを意識していない人も『なんだか安心だから』で選んで、それで心が軽くなり『おいしいからまた選ぼう』と思ってもらえたら嬉しいです」
作り手の工夫次第で、体と心の両方にとって栄養になるものを届けられるというのが丸田さんの想い。店名にかけて「私、“自分”のことも大切にしたいんです」と言いながら、ふふっと笑う。
キャリアに行き詰まった時、その悩みをそのままにするのではなく、自分の気持ちに耳を傾ける。自分の経験を信じて、やりたいことはやってみる。その大切さを丸田さんは教えてくれた。
■シェアキッチンには、信頼できる仲間がいる。
『FOOCO』以外にも、シェアキッチンの利用経験がある丸田さん。「どちらも、とてもお世話になりました」と丁寧に断りを入れてから、『FOOCO』ならではの特長を語ってくれた。
「大きな違いは、キッチンがオープンなところと、店頭販売が可能なところです。それがあるだけでこんなに活動に広がりが生まれるんだと、自分でも驚いています」
どういうことか、詳しくたずねてみた。
「以前使っていたところは完全個室だったので、滅多に他の方に会えなかったんです。どんな人がいて、どんなものを作っているのかもよく分からなくて。『FOOCO』はキッチンが2つあるので、メンバーさんたちと自然に仲良くなれるのがいいですね。お菓子づくりや販売のことを相談しやすいし、弱音も吐きやすい。ひとりでやっていると心細くなるので、コミュニティがあるのは心強いです。私は皆さんお一人ずつに、勝手に仲間意識を持っています(笑)」
楽しげに話す丸田さん。店頭販売に関しても、聞いてみた。
「マルシェやイベントなどの“売る場所”を一生懸命探さなくてもいいのは、すごく恵まれていると感じます。家から材料を持ってくるのに運んで、出来上がったものを売るためにまた運んで、という移動がすごく大変だったので……」
そうしみじみと語る。確かに、出来上がったお菓子を壊れないように梱包して運ぶのは、慣れないうちは神経を使いそうだ。「それに」と続ける丸田さん。
「ここは他の方たちの作業工程が見えるので、どれだけ丁寧に愛情を込めて作られているのか伝わってくるんです。隣同士で作っているとお人柄も知れるので、なによりも信頼があります。だからコラボ販売のお誘いをしたりして、すごく楽しく活動しています」
▲この日は、ザ・ベイカーロブソンの伊藤さんと“グルテンフリー”コラボ。
丸田さんは、積極的にコラボ営業をおこなっているメンバーのひとり。
「信頼できる作り手さんと一緒にやれるからこそ、宣伝も頑張りたくなるし、張り合いがでます。キッチンでの作業中はお互いバタバタしているので、コラボ営業の時はゆっくりお話できるのもいいんです」
メンバー間に信頼関係が培われているからこそ、一緒に販売スペースを使えるのだろう。近々、三組同時のコラボ営業も企画しているそう。楽しく活動されているのが分かり、こちらも嬉しくなる。
最後に、利用を悩んでいる方に向けて一言お願いしたところ、少し考えてからこんなメッセージをくれた。
「シェアキッチンに、失敗はありません。続けるのが難しかったらやめればいいし、お店を開くのと違って自分ひとりで、誰にも迷惑をかけることなくはじめられます。動いてみないと分からないことは沢山あるので、是非やってみてください! 私もメンバーさんたちに助けられてきたので、一緒に悩みましょう」
まっすぐで力強い言葉が、頼もしい。
『FOOCO』がオープンして間もないが、丸田さんをはじめメンバーの中に温かいコミュニティが醸成されていることを実感した。様々なバックグラウンドを持つメンバーと一緒に活動する楽しさが伝わるインタビューとなった。
■インタビューを終えて
シェアキッチンに失敗はない、というのは本当にその通りだと思う。
やめようと思えばいつでもやめられるので、自分の進みたい道の歩き心地を確認するにはもってこいだ。
意外と歩きやすいかもしれないし、思わぬ障害に足を止められるかもしれない。でもそれは、歩き出さないと分からない。
悩んだままでいいから、『FOOCO』とメンバーたちをパートナーに、一緒に歩き出せれば嬉しい。