登録せよ、さもなくば存在しない!
vol. 5 2026-10-22 0
RegisterYourself_EssenFolkwangMuseum
version(1978)
VTRデッキとモニターの前に人物が背を向けて座り、マイクに向かって「私は××だ」と名乗り、それが終わるとデッキの録画停止ボタンを押す。目前のモニターには背中越しの自分が映り、彼らはVTRの録画ボタンを押し、来場者が入れ替わり立ち代わり、顔と声を録画していきます。1970年代に発表された飯村隆彦の観客参加型の作品《レジスタ
ー・ユアセルフ》では、画廊の来場者が背中だけの自己を録画登録してゆきます。
アメリカの選挙制度は日本のように住民票があれば自動的に投票ができるわけではなく、有権者自身が登録しなければ投票ができないということです。「ヴィデオデモクラシーをやってみた」と飯村自身が説明するように、観客の能動性を誘発するようカメラ‐モニターのシステムの利用し、民主主義的な技術の可能性を試みた社会参与型の作品として受け止めることができます。アンナ・カネパ・ギャラリーで1978年に同作を行った記録映像には「自身を登録せよ。登録しなければ、あなたは人間として存在しないも同然だ。Register Yourself, Unless you register, you are no person」と書かれており、ヨシダミノル、刀根康尚ほかニューヨークの飯村の周辺にいた邦人作家ほかが自分たちを登録していきます。そのなかには構造映画や知覚映画で知られるトニー・コンラッドも同展を訪れ、自分の名前を切れ切れに叫ぶ様子などが記録映像に残っています。
この他にドイツのベルリン芸術アカデミー(1973)やクンストハレケルン(1974)でも行われたようですが、作品リストに記載されている「ベルリンテープ」の記録は現在のところ見つかっていませんでした。ところで2025年に同国のエッセンフォルクヴァンク美術館からDVDにダビングされた同作と思われる映像と「館内にこのような動画が見つかったがこれは何か」というという問合せがきました。それは飯村さんがドイツのエッセンを訪れた際に《レジスター・ユアセルフ エッセン版》(1979)を行った記録であり、アーカイヴ作業で見つけてあった記録写真と、先方の動画ファイルを交換する形でアーカイブの情報共有することができました。世界を股にかけて活動していたエピソードであり、異なる地域で同一の試みを行うことで各国の社会システムの違いを浮き彫りにする試みとなっていることに気づきました。(K.T)
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