馬耕と効率
vol. 1 2021-11-01 0
馬耕とは、馬に犂(すき)を引かせて田畑を耕すことです。
農機具のパワーが今も「馬力」で表されているのは、
かつてはそれらがほんとうに馬力で行われていたからです。
「プラウ」「カルチベーター」も馬に引かせていた道具が
そのまま(というわけではないけど)トラクターにくっついています。
※今年4月に行われた馬耕ワークショップの様子です。
それで、馬耕をしていると、よくトラクターと比べる視点に遭遇します。
比べるまでもなく、速さや耕せる範囲がかなわないことは、
今現在、馬との農業で生計を立てている人が皆無であることが証明しています。
ですが、近年フランスではワイン用のブドウ畑に再び馬が戻って来ている
ところが増えているそうで、土が良くなり品質が良くなりワインの質が上がり・・・
ということが起こっているそうです。
2019年長野で開催された「馬と人の結びつきを考える会」では
フランスから馬と働いている方々が講師に来てくださり、実践指導や講演がありました。
私たちは後日、資料を見せていただいたのですが
「いまになって気付くのは、ワインをつくるのに馬を捨てるのは早すぎました。
経済的にも、作業効率を考えても馬を使った方が色々な面でとても面白い」
という話に、ワクワクする未来のビジョンが広がっていく気持ちでした。
そもそもなぜ耕起するのか、についてはいろいろな考えや理由があると思いますが
健やかな土で健やかな作物を育てることが目的だということを考えると
必ずしも耕起しなくてもいい、という場面や畑も出て来たり、
耕す速さや広さだけでははかれないことがあります。
実際、馬耕で畑をつくっていると、機械の耕運機よりザクザクとした仕上がりになってしまって
見た目には粗かったりするのですが、大雨の後の水はけなどを比較すると
空気を含んだザクザクとした馬耕畑は水はけが良くなっていたり、と
馬耕の効果を感じることも多いです。
そして馬耕のすごいところは、エンジンが草で、排気が馬糞=堆肥という
完全循環システムというところです!
ちょっとそこで燃料補給(草を食う=人の草刈りの手間が省ける)してもらっている間に
人間は別の作業をして・・・という夢の協働関係が成立します。
馬は牛と違って反芻することができず(馬は胃がひとつ牛は胃が4つ)
消化効率がとても悪いのです。
そのかわりになが〜い腸を持っていて、腸内の微生物がたっぷり含まれた
「まだちょっと草のようなもの」といううんこを生み出します。
これが、とても良質の堆肥になるのです。
匂いもまるでヨーグルトみたいで、私は馬糞の匂いがだいすきです。
それから、一見オマケのようですが、実はもっともと言っていいくらい
重要なポイントは、馬と働くことは楽しく、子どもたちも一緒にでき、
そして何より働く馬は美しいということです。
「昔のお百姓さんが『来年も(明日も)また頑張ろう』と思えたのは、
日々目の前に広がる風景に美しさがあったから」
高知で自給的暮らしをしていた頃に聞いた地元の年配の方からのこの言葉が
ずっと心に残っています。
人が幸せに働き続けられること、次の世代に誇りをもって伝えられること、
長い長いスパンで見てみると、実は馬耕というのは持続可能かつ効率が良いのでは
とそんなところからも思ったりするのです。
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