「共有書店」世話役・藤原 玄明さんインタビュー
vol. 9 2023-03-16 0
「本の長屋」の1階部分にできる、「共有書店」。その世話役を務める藤原玄明さんにお話を聞きました。
“街につながる”長屋建築の魅力を生かし、
文化的なコミュニケーションの場にしたい
――2023年5月にオープン予定の「共有書店」で、世話役をなさるそうですね。以前は編集者として働いていたそうですが、どんな経緯で共有書店に関わることになったのですか。
大学で建築学を学ぶ中で、建築の歴史の勉強にハマってしまいました。特に都市の歴史を調べる「都市史」という分野に興味をもち、大学院に進んで主にアジアの集合住宅の歴史的な研究をしました。卒業後は、神奈川の100年続く工務店に5年ほど勤めて、設計と現場監督を経験。木造住宅を実際につくるということを学びました。
共同書店の世話役を務める、藤原さん
その後、地域情報誌を制作する会社に勤めました。その際、担当する街のことを常に「都市史」的な見方をしていて、街を深堀りするという自分の興味と、同時並行で仕事をすることができました。
杉並区の情報誌の制作でいろいろと街を歩く中で、コクテイル書房の狩野さんに出会いました。コクテイル書房は大正期の長屋をとても素敵な雰囲気に改装して営業しています。そうした建築の魅力と、狩野さんの取り組みや考え方に強く興味を惹かれました。
そのようなタイミングで、制作会社を退職し、独立して会社を作ることになりました。狩野さんに「杉並の歴史を深堀りしていくような読書会を定期的にできないか」と相談をしたときに、「本の長屋」の構想を聞きました。そこで「共有書店の管理人をお願いできないか」とお話をいただいたので、すぐに「ぜひやらせてください」言ったんです。
――藤原さんが研究していた「集合住宅の歴史」と、今回の「本の長屋」プロジェクトは、古い建築という点で重なるところがありますね。
まさに、僕の大学院の修士論文のテーマが「明治・大正・昭和初期の大阪の長屋の研究」でした。「本の長屋」は大正期に建てられた4軒長屋の一角で営業を行うとのことで、自分が研究していた時代とも重なるので、すごく親近感があります。
本の長屋のイメージを考えるために藤原さんが作成したメモ
この長屋は重要文化財になるような優秀な建物ではありませんが、個人的には、街につながるような柔軟さが大好きです。日本の木造建築には、改築や増築を自由に繰り返す、フレキシブルな面白さがあります。共有書店でも、そのような空間を表現できるのではと思っています。
――共有書店がどんな場になってほしいですか。そのために、藤原さんが心がけたいと思っていることはありますか。
地元の人が気軽に来ることができて、文化に対してのコミュニケーションをとれるような場になればいいのかなと感じています。そのために、空間も固定的なものではなく、手軽に変化していくような場にしていければと思っています。
――最後に、狩野さんへの応援メッセージをお願いします。
「本の長屋」プロジェクトに関わらせていただき、ありがとうございます。コクテイル書房がやってきたことの延長上に今回の「本の長屋」プロジェクトがあると思うので、自分自身の考えていることと相乗効果を生んでいけるように精一杯頑張ります。