【特別寄稿】町に演劇が満ちる二日間~ひた演劇祭見聞録
vol. 1 2013-08-11 0
ひた演劇祭のページをご覧頂いている皆さま、ありがとうございます!
昨年、ひた演劇祭にお越しいただいた編集者・ライターの大堀久美子さんが寄稿してくださいました!
ひた演劇祭の様子など、ご参考にしていただければと思います。
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町に演劇が満ちる二日間~ひた演劇祭見聞録
ひた演劇祭の様子など、初めて訪れた日田の町は、夏の強い日差しに照らされ風景自体が発光しているようだった。
東京に住む私が、九州の演劇をコンスタントに取材し始めてもう5、6年になろうか。訪れた劇場、取材する劇団も少しずつ増え、その繋がりの中で知ったの が「第2回ひた演劇祭」の存在だ。開催は2日間だが、地元市民参加劇を含めた4作品が1日で観劇できるという欲張りなプログラムに惹かれ、足を運んだ。
バスターミナルから歩くこと10分弱、初訪問のパトリア日田は実に魅力的な劇場だった。地場産の木材や陶土を使っているという建物は、内観・外観ともに 優しい質感で居心地は抜群。前庭の水場には水遊びする親子の姿もあり、施設が地域にとって必要な「場」になっていると感じられた。
観劇は熊本の劇団・不思議少年『帰れない3人』、海外でも評価の高いチェルフィッチュ、岡田利規作・演出の一人芝居『女優の魂』、長崎の劇団・F's Company主宰、福田修志作・演出による市民参加劇『川面に浮かぶ』、そして地元の劇団ソングラインの『MIDSUMMER CAROL ガマ王子vsザリガニ魔人』(後藤ひろひと作)の順で。作風、表現方法が異なる4作品の詳細はここに書き切れないが、フレッシュな感性が弾けた『帰れな い~』、ずば抜けた完成度を見せた『女優~』、戯曲への愛が溢れる『~ザリガニ魔人』と、それぞれに楽しんだ。中でも個人的に強く心に残ったのは『川 面~』で、水郷・日田を象徴する川辺を舞台に、10代から50代までの市民の想いや体験を盛り込んだという台詞には、ささやかだからこそ掛け替えのない日 常の断片がキラキラと輝き、胸の奥までしみ込んで来るようだった。
多彩なプログラムは、演劇祭プロデューサー・高野桂子氏の“巻き込み力”の強さによるものだろう。自身の劇団village80%での活動に留まらず、 外部での出演、創作機会をフルに活かしてネットワークを広げ、日田の町に様々な演劇をもたらす才能を呼び込んで来る。第3回のプログラムも上演作品数こそ 減ったが、市民参加のバリエーションが増えるなど新展開を見せている。
小さな町が演劇で満たされる2日間。その幸せな空気を胸いっぱい吸い込むため、今年もまた、八月の終わりに日田を訪ねることになりそうだ。
(編集者・ライター:大堀久美子)
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