中澤系の時間
vol. 15 2018-09-13 0
先日一緒に飲んだ人が急に「時間の反対って何だと思います?」って言ったんです。 初めてお会いした人だったのに、そんな質問を口に出すこの人はおもしろい人だな、と思いました。そしてその問題の彼の答えは忘れてしまいました。ごめんなさい。
その時から考えていて、私なりの答えは「出来事」です。「現前」でもあるかな、と思ったんですが、主体が「私」になってしまう気がして、「時間」には「私」は必要ないので、「出来事」だと思います。
時間は流れて行くイメージがあります。だから、「直線」であって「線分」ではない。だから時間の反対は、「時間ではないもの」ではなくて、「時間の無いもの」だと思う。そうすると、決して切り取って見ることのできない瞬間だと思うんです。ただ、何かが起こっているという出来事。
どうでしょうか。
今回の展示は「中澤系」という歌人の短歌を書きます。
展示のテーマは「時間」。
中澤系は若くして亡くなりました。もっともっと彼の言葉を読みたかったと思います。
彼の歌集「uta0001. txt」におさめられている短歌は、進んで行くにつれて、彼自身の死が切実に感じられます。
その彼の死と、私自身の生とを、書という本来ならば「時間」を感じられない物で作り上げることがテーマです。
私はもともと根暗なので、死についてよく考えます。
「なぜ死なないんですか?」と聞かれたら、私はなんて答えるだろう、ということを小さい頃から考えていました。今のところの答えは「私がいつか自分で命を断ったら、あなたと関わったこの時間が無かったことになるから」です。
例えば、極論ですが、「死にたい」と告白してきた友人に対して、「あなたに死なないでほしい」 と私が伝えたのに、その私が自殺してしまったら、その言葉が無意味になるし、その友人と過ごした時間を私自身が消してしまうことによって、友人の存在すらも否定してしまうと思っているからです。
私が生まれる前と、死んだあとは何か違っていたらいいなあ、という願望でもあります。
こう昔から考えてきた私にとって、生きた「時間」、何かが起きた「時間」はとてもとても大きなテーマです。それを中澤系の言葉を借りて、作品にできたら、と考えています。
皆様に作品を見て頂けますように。