「青をえらべば」参加ミュージシャンの紹介です
vol. 18 2020-08-03 0
「青をえらべば」のピアノは中村大史(アニー)くんです。
2020年5月8日。アニーくんからピアノのテイクが届いた。
ああ、、アニーくんだ。。そう思った。
音楽をしていて、僕が一番好きなのは、音がその人らしさを携えている瞬間に出会う時だろう。
僕はそれを、無垢と巧みの掛け合わせだと解釈している。
楽器と心が繋がれるようになるまでの時間を、僕は知っているつもりだし、
それは単純な技術の問題でないということもだ。
そして、答えはない。
あるのは、自然科学という前提。
その海を僕らは航海する。
たまに宇宙にまで思いを馳せたりもするが、結局大海原に戻ってくる。
音楽って、反応することだと思う。
反応して、寄り添うこと。
それは、僕にとっての音楽。
寄り添える喜びも、寄り添えない時の苦しさも、また音楽。
コロナ禍で、僕は思ったことを書いた。
この想いを、誰の音と共有したいかって考えた。
青くさくて、ダサくて、かっこよくない、
無防備な僕に向き合ってくれそうな音楽家。
アニーくんが思い浮かんだ。
その日の夕方も、僕は一人公園で空を見上げていた。
アニーくんのピアノが入ったばかりの「青をえらべは」を何度も聞いた。
缶ビールが無くなって、近くの酒屋にもう一本買いに行った。
「冷えてますよ~。」
そういうお爺さんが差し出した缶ビールは、そんなに冷えていなかった。
公園に戻って、もう何度か聴いた。
君の「青」は、「青」のまま伝わらないだろう。
ここにある「青」という文字は「黒い」のだ。
意味でなはく色彩で捉えると、そうなる。
僕の「青」は君の「青」ではない。
その「青」、、色で捉えましょうかね?
そういう前提は、、まあ、必要だけど、
アニーくんは、きっと、
僕の言う「青」に、ちゃんと応えてくれる。
例えばそれが、僕の思っていた「青」でなかったとしても、僕はその「青」を僕の「青」に混ぜてみたくなる。
音楽をする時、それが一番大切なことかもしれない。
音楽だけじゃないと思うけど、音を重ねてほしい相手とは、
一緒に旅へ出るくらいの気持ちなのだ。
そして実際、音は旅に出る。
数日前、アニーくんが新しいスタジオに遊びに来た。
近況を語り合って、ちょっとだけアニーくんがピアノを弾いた。
密閉されたビルの一室の、
一箇所だけ外が見えるようにこだわった窓の向こうで、
梅雨空が曖昧な夕闇を迎えていた。
季節外れの冬の曲だった。
アニーくん、いつもありがとう。
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中村 大史 / Hirofumi Nakamura
1985年、北海道生まれ。
幼少期より親しんだピアノや、その後出会ったギター、ブズーキ、アコーディオン、マンドリン、バンジョー、ハープ等の楽器を用いて、演奏・作曲をする。
tricolor, John John Festival, O’Jizo 等のケルト・アイルランド音楽バンドでの国内外の演奏活動、アコーディオンデュオmomo椿* での創作活動、様々なライブサポートや録音参加、芝居・コンテンポラリーダンス・映像の音楽を担当する等、活動は多岐に渡る。東京芸術大学音楽環境創造科卒。