『逆光』をテーマにした写真集が完成。写真家・石間秀耶よりメッセージ!
vol. 5 2021-06-24 0
はじめまして、映画『逆光』のスチール撮影を務めました。
写真家の石間秀耶と申します。クラウドファンディングリターンにも含まれる写真集
『ONOMICHI』についてお話します。
今回、私と映画との関わり方は一般的な映画スチール撮影とは異なったもので、告知やポスター
ビジュアルで使用される一般的な写真の使いかたではなく、この題材にたいして写真作品だからこそできる映画とは異なった視点での解釈をした写真集になります。
色んな視点で映画『逆光』を見てほしいと須藤蓮監督からの、これまでに聞いたことのない提案
に戸惑いながらも「映画は総合芸術だ」と熱弁する強い眼差しと、作品制作にワクワクし、話し
を受けたその場で直感で承諾をしました。もちろん、若手、無名である自分には大変恐縮するお
話しです。しかし、須藤蓮監督が自分の写真を最後まで信用してくれたこと、渡辺あやさんの脚本に惚れ込んだことが背中をおし撮影に臨むことができました。
映画が舞台とした1970年代の三島由紀夫文学に心酔した若者たちのそれぞれの葛藤は、現代を生きる私たち若者にとっても強く共感するものがあります。それらの感情的な葛藤のイメージを尾道の景色を媒介として、写真制作をしました。
・写真集制作にあたり
7月17日映画「逆光」公開にあわせ、写真集『ONOMICHI』を自費出版します。
須藤監督の映画制作にかけている想いや、写真集に強く影響をうけてきたこともあって、一年
間、この写真集にすべてをかけるつもりで制作をしてまいりました。
写真集完成までの工程は
撮影→現像→暗室プリント→構成→スキャン→印刷→製本
とスキャンまでを全て自身の手作業で行い、1970年代の写真家がしてきた工程と同じ工程をた
どって当時の写真集の質感に寄せるよう、こだわりました。私が印刷について無知だったことも
あり、暗室のプリントを写真集印刷で再現したく今年に印刷会社へ入社し印刷を学びながら、今
作に打ち込んできました。
・写真集制作の現実
印刷会社への入社後、現在の印刷業界にある衰退を肌身で感じてきました。
写真集は、印刷の単価が高く、写真家自身が自費出版し、部数も売れるものではないため高品
質、少部数で値段をあげて販売することが普通です。紙媒体の減少や発表する媒体が変わったこ
となど様々な理由がありますが、気軽に手に取れなくなった写真集は、発注数も減り印刷会社も
経営が苦しくなります。私は、昔の年代の写真集が好きで、いつの時代にも残っていく写真集が
いつか作れなくなってしまうんじゃないかと危機感を強く感じました。
良い紙で、良い印刷で現代を写真集に残すことは、絶対になくしたくありません。
例えば、1968年に発売された「プロヴォーク」という伝説的な同人誌は、少部数で出版された写
真集が現代にも残り続け、原本からスキャンし作られた完全復刻版が刊行され当時の新品同様の
写真集が今でも見ることができます。こうして残り続けていく写真集は、印刷会社と日本の高い印刷技術があってこそです。
こうした経験から、より良い印刷で気軽に手にとって写真、印刷、紙の質感を感じていただきた
くハードカバー、96ページの重圧感のある写真集を3500円で販売いたします。
正直、発行部数の300冊売り切っても、個人としては利益がありません。しかし、映画『逆光』
の配給活動や志を間近で見て、写真集のこの先にある未来に微力ながらも一石を投じたいと思い
ます。
是非、気軽に手にとって触って見ていただきたいです。
現在、写真集の先行予約販売を受け付けております。
7月17日の尾道での発売後に、写真集を郵送します。先行予約の特典として
トートバッグもつきますので、この機会に是非よろしくお願いいたします。
https://publishing-meme.stores.jp/
Hideya Ishima | 石間秀耶
1997年静岡県生まれ。独学で写真を学んだ後、2019年より「Ether (ROCKET) 」「トー
キョーアナロ グ vol. 8 , vol.10 」にて作品を発表し始める。ノンバイナリーである自身を
テーマにしたシリーズ作品では、多様なセクシュアリティを持つ50名にセクシュアリティ
についてインタビューを行い作品を制作。2021年春からは写真集を主にした印刷会社へ
勤めるかたわら写真家としての活動をおこなっている。
Instagram https://www.instagram.com/_i_hideya/
(事務局北村による転載)