絵はどんどん変わっていく。(岩根彰子)
vol. 32 2017-08-20 0
上の写真はカメラマンの江森さんが7月上旬に撮影した一枚です。
アトリエの隅にある洗面所から切り取られた一瞬。まるで額に飾られた絵のようですが、この部分、今では別の色やモチーフが重ねられてずいぶん違う雰囲気になっています。だから、この絵はもうどこにも存在しないのです。
以前、アトリエの家主でもある鉄工所の須田社長が、「他の絵描きさんは今日はここと決めた場所をじっくり描いていく人が多かったけど、根本さんはキャンバスの前を行ったり来たりして思いつくままに描いてるよね」と何気なくおっしゃったことがあります。
本当にその通りで、特に最初の頃の根本さんは湧き出すイメージのままにキャンバスに色をのせて、そこから浮かび上がってくるモチーフを形にしていく、いわばアドリブ的な描き方をしていました。
その頃、iPhoneで撮影したこれらの部分も、いまではすっかり印象が変わっていたり、別の色で塗り込められてしまっています。
決まった構図の絵を仕上げていくのとは違い、その場のイメージをどんどんキャンバスにのせていく描き方だからこそ、完成した絵の下にいろいろなモチーフや色が存在していたことを想像しながら最終形を見ることができる。その面白さは、現場に立ち会わせてもらったからこそ味わえるものだなあと、アトリエを訪れるたびに変化していく絵を見て、しみじみ思います。
そんな風に日々変化していく絵を、鉄工所で働くオヤジさんたちが手や顔を洗うついでに見ていたというのも、なんだかとてもいいなと思うのです。
実はアトリエには定点カメラが設置され、描き始めからの絵の変化はつぶさに記録されています。除幕式の際には、その過程も映像としてお披露目する予定。新ゲルニカがどんな風に生まれて育っていったのか。そして最終的にキャンバスに何が描き出されたのか。どうぞ、その目で確かめにきてください。
岩根彰子