4月26日 キャンバス張りレポート その3(岩根彰子)
vol. 7 2017-05-03 0
昼食後、作業再開。キャンバスの端の仕上げにかかります。
やはり重要なのは角。仮留めを外し、最後のたるみをとって、きれいに処理していきます。
いい角!
完成したキャンバスを壁に立てかけ、残り3枚も同じ作業を繰り返します。
4枚目の段階では、この状態から→→ここまで20分足らず。
その後、キャンバスを下塗りした根本さんによれば、やはり1枚目より4枚目の方がしっかり張れていたとのこと。とはいえ1枚目も描くのには何の問題もないそうです。
ちなみに裏側はこんな感じ。
▲合間合間にこれから絵を描く壁を眺める根本さん
▲チョロもキャンバス偵察
そんな作業の合間、画材メーカーのターナー色彩株式会社から宅配便が届きました。協賛という形で提供していただく絵の具です。
ターナーの担当者さんからレクチャーを受けた後、最終的には会田さんがひととおり見つくろって選んでくださったのですが、画材選びに関してはまた別レポートにて。
▲おもちゃ箱をのぞきこむような表情の3人
さて、少し時間を戻して昼食前、会田さんが壁に立てられた木枠の厚みと、床から一番上の桟までの高さを測り始めます。
その後、隅に置いてあった電ノコの使い方を、たまたま居合わせた工房の方に聞き、細い角材をカット。
さらに薄い板と重ねて……
こういう形の木切れを8個、用意しました。ここまでをさくさくっと昼食前に済ませてしまった会田さん。午後になってキャンバスが次々と仕上がっていくなか、取り出したのはこんな道具です。
電源を入れると赤いラインが壁に映し出されます。これを棚の上に置いて、ラインの高さを調節。
そのラインに合わせて、作っておいた木切れを壁に固定していきます。
こういう形で壁に固定されました。そして、作業中よけてあったキャンバスを運び込み……
取り付けた木材にキャンバスの桟をひっかけます。
あっという間に、張りあがったばかりのキャンバスが2枚、壁に固定されました。あの木材はキャンバスをかけるフックだったのです。
大きな絵はキャンバスを壁に斜めに立てかけて描くこともあるが、今回は4枚を並べて一枚の大きな絵にするので、最初から壁に設置しておいた方がいいだろう、という会田さんの判断でした。キャンバスは壁に掛けただけで完全に固定はしていないので、横方向へは多少動きます。
その後もスムーズに作業は進み、最初の1枚を設置してから30分ちょっとの間に最後のキャンバスが壁に掛かりました。次の作業を先回りしていく現場監督のスマートさと、助っ人の皆さんの手際の良さあってこそ。
さらにその勢いで、作業用の足場も組んでしまいます。
脚立だと画材を足元に置けないので、高い位置に描くときにはこちらの方が便利だろうとのこと。根本さんが実際に上ってみますが、なかなかの高さ。一人では危ないので、アシスタントが欲しいところです。
▲キャンバスを見ながらしみじみ話し込む3人。感慨深げです
朝10時に作業をスタートして、実作業が終わったのは17時半過ぎ。1日で無事に終わるかどうか……と予想していたので、意外に早く終わった気がします。
やはり後半、慣れてきてキャンバス張りのペースがあがったことと、会田さんによる素晴らしい段取りのおかげです。お手伝いしていただいた皆さん、本当にありがとうございました。
ようやくこれから約5ヶ月、根本さんが新ゲルニカを描くアトリエの準備が整いました。こうしてみるとやはりゲルニカサイズのキャンバスは大きい。けれど、ピンと張った真っ白なキャンバスを見ていると、一体ここにどんな絵が描かれていくのか、楽しみでしかありません。
そして密かにアトリエの床を撮影している根本さんを見て、絵が仕上がるころにはこのアトリエそのものがひとつの作品になっているのかもしれない、などと思ったりもしていました。この時点では、まさか早々に南の島から亀がやってこようとは予想もしませんでしたが……。
ちなみにピカソの「ゲルニカ」のテーマになったゲルニカ爆撃が行われたのは1937年4月26日。ちょうど80年前のこの日でした。
すでに因果の川は、流れはじめているようです。
(キャンバス張りレポート 了)
(岩根彰子)