佐渡島 真野/尾畑酒造 五代目蔵元 尾畑留美子様より応援メッセージ
vol. 27 2020-11-27 0
彼女との出会いは突然やってきた。
もう数年前の冬、私が以前映画会社で働いていたことをインターネットで知ったという彼女は、ある日突然、尾畑酒造にやってきた。話を聞くと、佐渡島には縁もゆかりもない移住者で、云十年映画館のなかったこの島で、映画館を運営したいと言う。
映画館にできそうな酒蔵はないか、デジタルは勿論だがフィルム映写機も置きたい、こんな作品を上映するつもりだ、云々。私に口をはさむ隙も与えず、一方的に一時間半ほどしゃべり倒すと、ホッとしたように「フ~」とため息をついた。
その瞬間、私は思った。「この子は、きっとヤルな」、と。
それから5年ほどたっただろうか。一通の手紙が届いた。差出人は、cafeガシマシネマ堀田弥生。封を開けるとオープンした映画館の招待券が入っていた。出会った時を思い出してつい笑いが込み上げた。“やっぱりなぁ!私の勘も捨てたもんじゃないな。”
早速訪ねたその場所は、佐渡金山の麓にある一軒の古い木造住宅。なんと、元鉱山長住宅を改装して映画館(シネマ&カフェ)としたのだ。堀田夫妻がほぼDIYで仕上げた、夢とこだわりを詰め込んだ素敵なシネマ空間。バラバラの場所から集めたという、バラバラの椅子たちが、そんな空間に妙に調和して収まっている。映画を鑑賞したならば、これまで都会で足を運んだ数々の映画館とは全く異なる不思議な劇場体験が待っていた。
その後何度も足を運んでいるけれど、中でも印象深いのは、この8月、クラウドファンディングの立ち上げ記念に上映した『ニュー・シネマ・パラダイス』。私が勤めていた古巣ヘラルド映画のグループ会社、ヘラルド・エースの大ヒット作だ。公開当時、幾度となく観たこの映画。長い時を経てガシマシネマで改めて鑑賞して驚いた。これまでとはまったく異なる感動が私を包み込んだのだ。心に染み渡る、ちょっと切なくて優しい特別な余韻。映画のストーリーに自分の経てきた年月の記憶が自然に重なった。それはまるで、この古い木造住宅の持つ歴史が映画と共に観るものの心に語りかけ、共鳴しているかのようだった。こんな映画館、世界のどこを探してもここにしかないだろう。
いつだったか、東京に住む私の友人が、ガシマシネマで映画を観るために佐渡までやって来た。実際、ここは遠くから足を運ぶ価値がある。ガシマシネマでの映画体験は、二時間ほどの時空を超えた旅そのものなのだ。
ガシマシネマ! よくぞ、屋根まで直しました。
皆様! どうぞガシマシネマで、旅×シネマの時空旅行体験を。
追伸:弥生さんへ。最初に会った時に「この子は、きっとヤルな」と思った理由をお伝えしていませんでしたね。それは弥生さんが“本気のカタマリ”だったからです。本気に勝るものはない。これからも、“本気のカタマリ”で邁進して下さいね。
尾畑酒造 五代目蔵元 尾畑留美子
https://www.obata-shuzo.com/home/
※上の写真では前列右から二番目が、尾畑留美子さん。
「学校蔵の特別授業2017」のエクスカーション訪問時。開店間もない頃、早速、出口治明さん(実業家、APU学長)、藻谷浩介さん(日本総合研究所調査部主席研究員)方をガシマシネマにご案内くださいました。(写真は店主/堀田の撮影。大物ぞろいのご来店に、緊張で手が震えました。ひどい撮影で申し訳ございません!!)