柳美里からお礼のメッセージ
vol. 14 2019-06-30 0
1447人がフルハウスの協働者に加ってくださり、
1881万5000円を集めることが出来ました。
わたしは、前のめりな未来志向が好きではないので、
いつもは、「達成」や「目標」や「成功」という言葉は、注意深く避けています。
でも、このクラウドファンディングを「成功」させるために、(ヘイトスピーチで具合が悪くなり)長らく中断していたツイッターに復帰し、1週間にわたってツイートをし続けました。
みなさんにわかりやすく伝えるために、クラウドファンディング用語である「目標」金額や「達成」という言葉をかなり多用しました。
でも、最後の一日で、残り24時間で、あと630万円集めなければならない、という絶体絶命と言っても決して言い過ぎではない状況に立たされた時のわたしの時間意識は、今という時間を未来のために費やす、というものではなく、ただ、今出来ることは今やるしかないのだ、というものだったのです。
不思議と切羽詰まってはいなかった。
わたしは、このようにツイートしました。
「未来にも過去にも身を退けない。
いまやるべきことは、いま、やる」
「今」という真っ白な感情に照らされている感じでした。
わたしの頭の中にあったのは、2011年3月11日以降、肌身離さず持ち歩き、繰り返し読んでいるレヴィナスの『全体性と無限』の中の美しい言葉でした。
「人間は、他者のために生き、他者から出発して、自己の外部で存在することができるものとして定義されなければならない」
わたしは、ツイッターのフォロワーのみなさんに、「1ツイートでいいので、わたしとの出会い、わたしの作品との出会い、本屋フルハウスのこと、フルハウスの柳美里選書のことを呟いていただけないでしょうか?」とお願いしました。
わたしの言葉に応えて、次々と、100人以上の方がツイートしてくださいました。
別々な場所でそれぞれの人生を生きているお一人お一人の「今」が、わたしの「今」に流れ込み、大きな一つのうねりとなったあの瞬間、わたしたちは、「目標」や「達成」を追い抜いたのだと思います。
わたしは、歩を止めていません。
「他者のために生き、他者から出発して」
その行き先は、行ってみなければわかりません。
このクラウドファンディングで、
わたしの伴走をしてくださったみなさん、
ありがとうございます。
FullHouseには、満員御礼という意味があります。
協働者であり、伴走者であるみなさん、フルハウスに来てください。
フルハウスを、フルハウスにしてください。
福島県南相馬市小高区東町で、お待ちしております。
2019年6月30日
柳美里
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