怖いことより大事なこと
vol. 10 2018-12-20 0
本格的な冬に突入し、寒さと戦う日々が続いております。
皆様、いかがお過ごしでしょうか。
今回のアップデートのタイトルに「おや?」と思った方も多いかもしれません。
ホラー作品なのに、怖さより大事なことってあるの? というお話です。
制作者のホラー観に触れることで、少しでも皆様に興味を持っていただき、この作品に期待していただければいいなと思っています。
ビッグネーム揃いのドリームチームも魅力的ですが、作品そのものがつまらなくては台無しですものね。
「隣人-Neighbor-」をプレイしていただいた皆様にはもうおわかりかもしれませんが、乙SUNらんどが制作するホラーはいわゆる「ドーンバーン系」(どんな表現ですかね)ではありません。つまり何かというと、驚かすことはあまりせず、不可解な現象そのものよりはその根底にあるものに焦点を当てて描いています。
人間は、正体がわからないものに恐怖を感じます。「隣人-Neighbor-」をプレイすることで湧き上がる恐怖は進めるうちに徐々に別の感情へと変わっていったのではないでしょうか。
原作者である私こと文音は「恐怖という感情」に常日頃興味を持っています。「怖い」のは、わからないから怖い。
では、「怖がらせる」方は?
ここでは、いわゆる心霊的なものに限定してフィーチャーしますが、化けて出る側はどうして化けて出るのだろう、と考える人は存外多いのです。
存在を知ってほしい? 恨みを晴らしたい? 伝えたいことがある?
きっと、理由は様々でそこには確かに感情が根差しているのです。死んでいるのに感情とはこれいかに、と言ってしまうとそもそも「幽霊はいるのか問題」に発展してしまいますのでここでは割愛させていただきますが、心霊現象が常なるものではない以上両者の世界には大きな隔たりが生じます。ここでいう両者とは死者と生者、という意味ですね。隔たりとは「無理解」と等しいのです。ここが恐怖の鍵だと私は考えています。
「隣人-Neighbor-」ではストーリーを進めていくと佳枝と大吾がこの隔たりを徐々になくしていくことに成功します。皆無とはいきませんが、少なくとも恐ろしかったあの現象がただそれだけのものではないということに気付くことができるのです。
「フクロウさん」では、たくさんの人が死にます。その死の根幹にあるのも、とある人物の感情です。ですが、そこにはあるはっきりとした引き金が存在します。
はじめからわかりやすいストーリーを心がけた「隣人-Neighbor-」と違い、「フクロウさん」は「こんなのわかんねーよ!」というような出来事がたくさん出てくると思います。それは意外性を狙ったというよりは、人は表面に見えることだけでは何も理解できないということを表しているのです。つまり、ここにも「わからない恐怖」が存在するわけです。
どんな物語を書く上でも、人間の感情と無関係ではいられません。喜怒哀楽だけではない様々な感情が入り混じって様々なシーンを産む。その一つが、ホラーにすぎないと私は思っています。もちろん、恐怖演出は大事です。文章を書く上でも考えて書かせていただいてます。
ですが、上っ面の演出だけこだわっていてもずしんと腹に響くような、重たい鉛のような恐怖は得られないと思っているのです。
人間は感情の生き物です。
「怖い」にたどり着くまでの感情のプロセスを、ぜひユーザーの皆様にも楽しんでいただきたいと私は考えています。