【活動報告】岡山と高松での出版イベント
vol. 62 2022-06-16 0
5月17日(火)に岡山、18日(水)に高松で出版イベントを行いました。それぞれ、事前にウェブメディアでもご紹介いただきました。
松村圭一郎さんと考える「地域における人々の営みー祭りとしてのアートプロジェクト」
まずは、文化人類学者で岡山大学准教授の松村圭一郎さんをお招きしたイベント。
書籍の紹介を行なった後に、松村さんからは「アートについては素人」という断りがありながらも、以下のような感想をいただきました。
「いろんな問題、課題に向き合い、それぞれの場所をよくしようと捻り出されたものが世の中を少しずつ変えていく。そんな期待を持たせる例がたくさんあった。現実を引き受けた「応答」としての表現/活動があり、それを紋切り型ではない自分の表現としてつきつめるプロセス。その”探求”がアートなのだと感じた。それが別の世界の捉え方、見え方を示す。瀬戸芸であれば、作品を通して島の景色が変わって見えてくる。そうやって(作品として)投げ出されたものが、また(見る者の)新たな応答を引き出すという構造が面白い。」
橋本からは「アーティストは(現実を)よく見ている、向き合っている。しかしそれは、人の誰もが本来持っている力でもある。」と応答。書籍で取り上げているクリエイティブサポートレッツは、アーティストありきではなく、施設の利用者や職員の存在それぞれにその力を感じることができると例示しました。そしてレッツは「日常を豊かにすると共に、問題提起もしているという点がアーティスト的。松村さんが『うしろめたさの人類学』で言及している”不均質になっている世の中にどう公平さをもたらすことができるのか”といったような問いかけにも共鳴する、アクティビスト的な行為だとも言える。」とコメントしました。
アートプロジェクトの評価や価値についても話題が展開。「来場者数や継続性だけでは測れない価値がある(松村さん)」「まちも変わっていく中で、プロジェクトのあり方も変わっていく必要があり、それが”お祭り”の構造にも似ている(橋本)」「大きくなりすぎると、やりたいことができなくなってくる例もある(松村さん)」「別府や奉還町(岡山)など、ほどよい隙間があるくらいのまちの方が寛容でやりやすい(松村さん、橋本)」。
後半では来場者も交え、瀬戸内国際芸術祭をきっかけに坂出で継続しているアートユニット・ヨタや、直島で展開されている《瀬戸内「 」資料館》の活動、フォーマット化された芸術祭やアートプロジェクトの次の展開はあるのか、芸術祭のような新しいお祭りと従来からあるお祭りの類似性(カジュアルなお祭りに多い)と違い(神事/儀礼に寄ると離れる)についてなどを話しました。
日時:2022年5月17日(火)19:30〜21:00
会場:奉還町4丁目ラウンジ・カド(岡山市北区奉還町4-7-22)
ゲスト:松村圭一郎(文化人類学者/岡山大学准教授)
ホスト:橋本誠
詳細:
https://elbooks-okayama.peatix.com/
岡山経済新聞での紹介記事:
https://okayama.keizai.biz/headline/1385/
橋本誠×藤井佳之トーク「いま見ておきたい、瀬戸内界隈と10年の動き」
続いて、高松で完全予約制の古書店「なタ書」を営み瀬戸内界隈の事情にも詳しい藤井佳之さんをお招きしたイベント。
開演前から、瀬戸内国際芸術祭2022(春会期)の様子などを写真でスライドショーするなどしながら、2人が思い思いに話し、合いの手を入れ合うフリースタイルで進めました。
冒頭では、書籍と並行して制作したZine「よりみち芸術祭 in 瀬戸内」の舞台が話題に。直島諸島に含まれる向島(何と島民の方がご参加されていました!)、高松の仏生山、芸術祭秋会期の会場でもある伊吹島など。芸術祭の周辺でも面白い作品があったこと、作品だけでなく、個性的なお店も増えてきていることなどを振り返りつつ、藤井さんが芸術祭春会期でなぜ「港コーヒー」をやっていたのか?という謎も明らかになりました。
藤井さんは、芸術祭が始まる前に高松の商店街で「丸亀町アートプロジェクト」の立ち上げなどにも携わられた経験があるそうです。新潟で「大地の芸術祭」(2000〜)、横浜で「横浜トリエンナーレ」(2001〜)がはじまっていたこと、直島で「スタンダード」展(2001)、「直島スタンダード2」(2006)が開催されていた動きから瀬戸内にも芸術祭がやってくるだろうと思っていたとのこと。なタ書で、アートドキュメンタリー作品の上映を行ったこともあるそうです。書籍にも、昔から活動を知る方が所々に登場することから、ご自身の10年と重ねながら読んでいただいたとのことです。
作品やプロジェクトの継続性も話題になりました。橋本からは、大きな芸術祭や作品がある中で、隙間やバリエーションが増えて小さくても面白いものや継続的なものが生まれているのがいい。今回で言うと、直島で下道基行さんが館長という設定で展開している《瀬戸内「 」資料館》は、島や瀬戸内の地域資源の掘り起こしとアーカイブをしつつ、島の子供とも活動をしている点。坂出では、2019年の芸術祭参加後、ヨタが地域の漁師や海運関係者の協力を得ながら家船をつくる活動を継続している動きなどが面白いと話題提供。
藤井さんからは、回を重ねる中で、残らなかったけれども印象深かった作品やプロジェクトとして川俣正《向島プロジェクト》、藤浩志《藤島八十郎をつくる》、「小豆島 醤の郷+坂手港プロジェクト」などが挙げられました。鈴木康広《ファスナーの船》はその後、東京・墨田のプロジェクトで活躍しているよねという話にもつながりました。
最後は参加者からの質問に答えながら、芸術祭を支えるボランティアやスタッフ活動の現場エピソードや課題、芸術祭に対する島民の方々の賛否についてなどが話題にあがりました。
日時:2022年5月18日(水)19:30〜21:00
会場:本屋ルヌガンガ(香川県高松市亀井町11-13)
出演:橋本誠、藤井佳之(なタ書 店主)
高松経済新聞での紹介記事:
https://takamatsu.keizai.biz/headline/215/
会場であった奉還町4丁目ラウンジ・カド、本屋ルヌガンガさんでは引き続き書籍のお取り扱いをいただいています!
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