【連載コラム】ダルク撮影記①(監督:中沢一郎)
vol. 6 2026-04-22 0
ドキュメンタリー映画『ボーン・アゲイン 薬物依存症と生きる(仮)』監督の中沢一郎が、2004年から始めた映画撮影について振り返る連載コラム「ダルク撮影記」をスタートします。
【連載コラム】ダルク撮影記①(監督:中沢一郎)
撮影がはじまりダルクに通うようになり、近藤さんを始めスタッフの人達や入寮者とも顔なじみになり徐々に受け入れられていきました。“薬物依存症”に特効薬はありません。ダルクの回復プログラムは12ステップと呼ばれるものが行われ、その核となるのが、1日3回のミーティングです。自分の過去や、今の正直な気持ちを話して仲間と分かち合います。そして、このミーティングを日々行い、過去の出来事や今の思いを正直に話すことで、抱えている問題が少しずつ見えてくるといいます。それがダルクのミーティングの特徴であり、続けていくことが徐々に回復につながるといいます。
僕はこのミーティングでダルクの人たちが、自分自身と向き合う姿に感動し、本当に少しだけれども、この人たちの人生の一部分でも伝えられたらと思い撮影を続けました。
ダルクの人たちにはバースディが2つあります。実際に自分が生まれた誕生日。そしてもうひとつは、薬物を使う事をやめた日です。薬物を使わない人生をスタートし、生まれ変わった日をバースディと呼び、仲間同士で祝い合います。彼らは、薬物によって失った人生をやりなおしているのです。
僕は、やりなおしの人生、彼らの生きなおしを撮り続けることに決めました。
撮影を始めて気づいたのは、「スリップしてしまいました」という告白が意外に多いことでした。
スリップとは回復途上に薬物を使ってしまうことです。薬物をやめるためにダルクにいるのに、そこで薬物を使ってしまうが依存症です。しかしスリップを告白しても、誰も責めたり咎めたりはしません。もちろん全員がスリップしたのではなく、一部の人が耐えられなくなり、隠れて薬物を再使用してしまうのです。
近藤さんいわく「何十年も薬物を使い続けてきた人がいきなりピタッと止めるのは難しいことなんだ。それより使ってしまったことを正直に話すこと。世間では“昨日覚せい剤使った”なんて言えないだろ。それで嘘をつき孤立していってしまう。ダルクは薬物依存症の人が正直でいられる居場所を俺自身が欲しくてつくったんだ。だからここでは何でも話せるし、孤独もない」
人生のやりなおしも、みんながみんな簡単に回復していくわけではないようです。
僕がカメラを持ってダルクに行くと、彼らの方から「昨日覚せい剤使ってしまった」などと話してくれるようにもなりました。僕自身もフリーランスでなんの保証もない立場の人間です。社会での孤独感もいつも持っていました。でもダルクに行けば、いつも近藤さん達は笑顔で受け入れてくれました。(②につづく)
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2026年 6月30日(金)23:59ゴール
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