佐藤克則監督よりメッセージをいただきました!
vol. 31 2018-10-01 0
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みなさん、こんにちわ。
映画海賊(※)の監督 佐藤です。
※映画海賊については、田辺役三浦さんのメッセージをご覧ください。(https://motion-gallery.net/projects/dharuriser_rise/updates/20983)
撮影のエピソードを書いてほしいとプロデューサー和知から言われたのですが、
他の皆さんが、撮影の裏話を書いてるので、僕は、その準備段階のことを書きます。
映画の準備というと脚本があります。
ダルライザーの脚本執筆がかなり難航したのは、
映画のパンフレットにも書きましたので、そちらをご覧ください。
和知くんと激しい闘いを繰り広げた脚本が完成したあと、撮影までの間、僕はコンテを書いてました。
コンテというのは、実際に撮影でどのように撮るかを指示するものでして、
字で書く字コンテもあれば、絵で書く絵コンテ、いまだと、映像やCGで作るビデオコンテ、プリビズなんてものもあります。
僕の場合は、絵コンテを書きました。
マンガのコマ割りのように、1カットずつ絵にしていきます。
ダルライザーはいま短縮版を作っておりますが、全長版は144分です。
約2時間30分ある、長尺の内容をひとつずつ絵にしていくのです。
2時間30分ある映画を絵コンテにすると、こうなります
ページ数でいうと、284ページです。
1ページにつき5つの絵が書けるので、単純計算すると、1420コマ書いてますね。
自分で書いといてなんですが、ほんと正気の沙汰とは思えない作業でした。
実写だと、普通、こんなに全部をびっちり絵コンテにするのは珍しいと思います。
なんでかというと、低予算映画の場合、絵コンテ通りに撮影が進むことなんてないからです。
色んな理由があって、コンテ通りに進む撮影ができない、それなら書く必要なんてないじゃない。
というのが普通なのですが、それでも書きました。
というか、自分で監督する作品の場合、どういう作品であっても僕は絵コンテを書くようにしてます。
今回、長編が初めてだったので、書くかどうかを迷ったんですが、書いてよかったと思ってます。
まず、僕が絵コンテを書く場合、現場の設計図としてのコンテというよりも、演出ノートに近い役割だと思ってます。
そのシーンでどういう芝居をするか、カメラワークはどうか、美術はどうか、衣装はどうか、
演出に関わるところを実際に絵にして、可視化できるようにする。
あと、脚本で書かれてない、行間の時間も見える形にするというのが大きいです。
脚本だと書かれていない、芝居の感情や表情を思い浮かべながら絵にしていく。
そういった、脚本だけでは曖昧だった部分を絵にしてみて、
自分がどういった演出をするか、というのをシミュレーションしていくわけです。
そして、全てのシーンを書き上げて、
撮影に入る前、スタッフの皆に、コンテの役割について伝えた文章がこちら、
『僕の絵コンテは、これが完成系じゃありません。
あくまでスタートライン、というかお客さんに見せる最低限のクオリティラインなのです。
この絵コンテ通りに撮れば、(たとえ俺が現場にいなくても、だれかがこの通りに撮りさえすれば)、
最低限、映画の形になりうるであろう、というラインです。
僕は、この映画をこの絵コンテ通りに撮るのが目的ではないです(もちろんベースは絵コンテに沿って進むだろうけど)
この絵コンテよりも、もっと素晴らしいものを撮りたいのです。
この絵コンテは、現場であれこれと迷って考える必要がないように、最低限の準備部分を提示したにすぎません。
じゃあ、監督は現場で何をするかというと、
僕は、映画が映画たり得る瞬間、というのを掴む作業が必要だと思っています。
実写の良いところは、計算通りにいかない『何か』が訪れることです。
計算できない光や風だったり、計算できない役者さんの芝居、計算できないようなスタッフのアイデア。
そんな素晴らしい『何か』を現場で掴むため、そして、それを映像に落とし込むために、現場では自由で身軽な視野を持っていたいのです。そのために、普段、現場でやるような苦労をしないよう、先んじてコンテ上で格闘してたんです。
なので、これからスタッフの皆さんのより良いアイデアを期待してます。
『準備に準備を重ねて、起こりえない奇跡を待つ』
という心構えでいけたらと思っております』
という感じです。
007を撮ってるサム・メンデスという監督もとあるインタビューでコンテについて、
「死ぬ程寒いロケ場所だったり、眠いときだったり、頭が働かないときがある。そんなときは、頭が冷静だった時に書いたコンテに頼るよ」
みたいなことを語っていました(なにぶん記憶が古いので全然違うような事を言ってたかもしれませんが…)。
確かに、このダルライザーはきつい現場が多かったので、そんな時はコンテに頼ってました。
なので、このコンテがなかったら、この撮影は乗り切れなかったかもしれません。
ただもう、ほんとこのコンテが重くてですね。
持ち運びが不便で不便で。
田辺役の三浦さんが台本をiPad miniで見ていて、
あーいいなー、って毎回思ってました。
今度からはコンテをデジタル化します。
と言う訳で、撮影の準備のエピソードでした。
応援よろしくお願いいたします。
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監督:佐藤克則
日活芸術学院卒業。学院卒業後フリーとして映像制作を開始。2006年、文化庁による長編映画監督の育成への取り組みを目的とした、『若手映画作家育成プロジェクト』の選出監督8名に選ばれ、短篇『trash words』を監督する。同作品はSKIP国際Dシネマ映画祭2007の短編部門にノミネート。
2008年ソニー株式会社デジタルライブコンテンツ製作・配給サービス“Livespire(ライブスパイア)”に参加、岸谷五朗演出の舞台『FROGS』を撮影した「FROGS on Screen」を監督。2008年6月より全国ロードショー。2009年演劇集団キャラメルボックスの舞台を撮影した『嵐になるまでまって』『君の心臓の鼓動が聞こえる場所』の監督を担当。
現在城西国際大学映像メディア学部メディア情報学科助教授。本作が長編初監督。