メンバー紹介3人目!こさかまさよ(コサカマ)です!
vol. 6 2020-10-30 0
「地域からもらった力を、この場所で次の誰かに手渡したい。」
こんにちは。はじめまして。ぶんじ寮プロジェクトメンバー3人目のこさかまさよです。
「こさかさんって、何してる人なんですか?」とよく聞かれるのですが、いつも答えに困ってしまっています。何してるのかな。 3年前まで渋谷区の親子支援センターや児童館のスタッフとして働いていましたが、人生の節目の年を目前に控え、子どもたちとの時間や自分の暮らす地域での活動を増やしてみようと思い、退職。その後は市役所や大学、雑貨店でのアルバイトを転々としながら、お話し会や、地域や学校でのワークショップの企画などをやっています。 市内をチャリで髪振り乱して激走している姿、よく目撃されています。笑笑
子どもとの暮らしの中で、地域や学校での「こうだったらいいのになあ」「こんなことやったら楽しそう」なことを思いついてしまうと、口に出さずにはいられなくなる性分。 「これはこの方に聞いてもらおう」と思ってご相談に行くと、いつのまにか実現しているという!幸せの循環の中に身を置いているとでも言えそうです。 (とはいえ、学校に関しては、ほぼ撃沈。ごく稀に実現。なので、その傷を他の活動の成功体験で癒しているとも言える。) (また、家族からは「いい加減にしてほしい。家のこともたまにはやってくれ。」との苦情あり。)
そんな私が、後にぶんじ寮となる物件を最初に見たのは、SNSででした。 「わあ!近くにこんなところがあるのか!1人ではとても無理だけど、みんなで借りたら、泊まれる公民館みたいに使えそう!」と妄想し、友人にシェアをしたのは、この春のこと。 その後季節は移ろい夏になり、なんとその妄想が現実になりそうだとの噂、そして程なくして「ミーティングに参加してみない?」とのお誘いが。 もちろん、二つ返事で「行く!行きますー!」と返信。今日に至ります。
この街って、本当に、すごい。
縁もゆかりもなかったこの街に私が引っ越してきたのは、縁側と柿の木のある庭と、天井までの作りつけの本棚のある一軒の古い木造アパートと出会ったからでした。誰ひとり知人のいなかった街で始まった初めての子育ては、30代後半まで自由気ままな実家住まいの会社員をしていた私にとって、全く別の世界に飛び込んだような毎日。 言葉の通じない小さな人を日中ひとりで預かる重い責任と、眠ること、食べることさえ自分の自由にならない日々。気づけば冷たくなった味噌汁をすすりながら「今朝夫と少し喋った以外、誰とも話さなかったな…」と思いながら、うとうとと寝落ちし、赤ちゃんの泣き声で目が覚め…。 臨月に70キロあった体重は、産後半年で43キロになり、出かけた先でばったり知人を見かけたので話しかけたところ、すぐには私だと気づいてもらえないほどやつれていました。 頭ではわかったような気でいたものの、慣れない家事と子育てに翻弄され、自分が自分でなくなっていくようで。 出産したら愛情深く子育てのできる母に、誰もが、私だって、自然となれるはず!と思っていたのに、そうはなれない自分。 親になったら当たり前のこと、かもしれませんが、赤ちゃんを可愛いなと思いはするものの、それまで好きだった本を読むことも、映画を見に行くことも、立ち飲み屋に行くことも、ひとり旅に出ることもできなくなり、「子どもを産むって、できないことだらけになるんだな…」と感じたことをよく覚えています。
そんなときにたまたま見つけたのが、近所の方がご自宅で開いているお話の部屋「はらっぱ文庫」でした。
玄関が二つあるそのお宅の前には可愛らしい看板が出ており、「本の好きな方、どなたでもどうぞ。」と書いてありました。 抱っこ紐の中の娘としばらくその前を行ったり来たり。思い切ってドキドキしながらようやくドアを開けてみると、「こんにちは。初めていらっしゃる方ね。ようこそ。どうぞお入りください」と温かく迎え入れてくれました。あの日のSさんの笑顔に心がほどけるようだったことを思い出します。
それから毎週金曜日のお話し会に通うようになり、少しづつ知り合いも増え、子どもを連れて外に出かけるようになりました。 考え方を変えてみれば、独身の頃の自分には行けなかったところに行けるようになっていたのです! それまで見えていなかったものも、少しずつ眼鏡をかけたように見えるようになってきました。 「幼い子のいる親のための教室」という託児付きの公民館の講座や、小さい頃から本物を見せてくれるギャラリーや、赤ちゃんと一緒に気兼ねなく聴ける小さなコンサート、おむつ台のある素敵なカフェ…。 この街にある子育て中の人を温かく迎えてくれる場所にたくさん出会えるようになっていきました。
そんな暮らしにようやく慣れてきた頃、仕事に復帰。 文庫のお話し会にはもう通うことができなくなりました。 通勤の混んだ電車も「一人になれる時間」と感じられ、以前ほど苦ではなくなっていましたが、保育園と職場と自宅をあたふたと往復する毎日が始まりました。 通勤電車の中でふと「こちらから行けなくなってしまったのなら、文庫の方たちに保育園に来てもらえないだろうか?」と思いつきました。図々しい思いつきも年の功からか恥ずかしさもなく、文庫の方たちと保育園にご相談したところ、すぐにどちらからもご快諾いただき、保育園での月に一度のお話会が実現することになりました。
そのお話会には私も読み手としてご一緒させていただくことになりましたが、自分の子どもの前以外で読み聞かせをしたことはなく、声は上ずり、ページのめくりも上手くいかず、子どもたちへの声かけも堅苦しく、自分の読み手としての拙さに落ち込むことばかり。そんな私を見た文庫の方が「同じお話しでもね、どこで、誰と一緒に、誰から聴くかによって届き方が違うのよ。連れて行かれた知らない場所でどんなに上手な読み手が読むよりも、いつもの保育園の部屋で、いつも一緒のお友達と、いつもの近所のお母さんが読んでくれる方が子どもの心には届くの。だから、心配しなくても大丈夫よ。こさかさんの気持ちは、ちゃんと子どもたちに届いているから。」とおっしゃってくださったのです。 「そうか!遠くのプロよりも、下手くそでも近くのおばちゃんにしかできないこと、近くのおばちゃんだからこそできることがあるんだな」と教えてもらったのでした。 それからは素敵だと思う都心での親子イベントに参加するより、自分の暮らすこの街で、顔見知りの子たちと一緒にできるようなワークショップやお話し会を自ら企画し、友人に相談しながらやってみるようになりました。
その後、仕事を離れたタイミングで、友人に誘われ、それまで全く知らなかったPTAの活動を会長という肩書きを背負って務めることになります。 小学校の近くにあった冒険遊び場の会のプレイステーションという長年子どもたちや親子に愛されてきた場がこの地域からなくなってしまうかもしれないという報を聞き、PTAとして何かできることがあるのではないかと思ったことも会長を引き受けるきっかけのひとつでしたが、結局保護者の意見を集約して市役所に届けることはできませんでした。
その頃だったでしょうか、今回のぶんじ寮プロジェクトのメンバーでもある、プレステで活動する親子サークルにいた横澤さんから、「市のプレイリーダー講習会で聞いたプレイリーダーのゆうじさんとクルミドコーヒーの影山さんとのお話がとても面白かったので、その続きが聞きたいと思っているんです」と聞きました。 「なんて面白いお二人の組み合わせ!私もそのお話し聞いてみたいです〜」となり、「あ!こどもてつがくのファシリテーターされている幡野さんも絡んでいただいたら、さらに面白そうですよ〜」と思い、お三方に企画をご相談し実現したのが、公民館での「遊ぶってなんだ?!」という参加型のお話会でした。
そのときのイベントポスター
全く違う経歴を持ったお三方の話は、それぞれ違った角度からの見え方として広がりつつも、核になる大切にしたいことは共通していて。影山さんから出た名言「遊びとは、解放。」「大人こそもっと遊んで、解放されるべきだよね」という発言に参加者の方の共感や鼎談の感想も重なり、とても心に残る時間になりました。それから1年半後にぶんじ寮のプロジェクトのメンバーとして、また集まることになるとは、その時は夢にも思わず。 ちなみにこのときに参加費はひとり100ぶんじ。ぶんじを持っていない方のために、当日会場にぶんじガチャを運んでいただき、参加者の方に一言感想を書いてもらったぶんじを登壇者のお三方にお渡ししたのでした。謝礼のぶんじでのお渡しに「それ、面白いね!」と快く乗ってくださったこと、今でも感謝しております。
そして、プレステはこの春、市内の別の場所へと移転。跡地は更地となり、まもなくたくさんの住宅が建てられることになるそうです。
今回のぶんじ寮プロジェクトには、これまでこの街で出会い導いてくださった方たち、そしてこれから直接的に間接的にでも出会うであろう全ての方に対して、私が今できる全部を詰め込んだ、ささやかな「恩返し」と「恩送り」のような気持ちで取り組んでいます。
折れそうな気持ちでいた私がはらっぱ文庫に救われたように、街の片隅にあるこの場所が誰かの生きる力に繋がり、そこでの出会いの中で癒され生まれて来た力が、次の誰かのための何かに変わっていきますように。
ここ「ぶんじ寮」がそんな場所に育っていきますように。 そして、そうした暮らしっていいなという思いが広がって、この国のあちこちに思いの詰まった場所が増えていったら、いつのまにか悲しいことが減って穏やかに心安らかにいられる日が多くなるのではないかと思うのです。
心塞がるようなニュースが多いこの国で、この街の市民から生まれた試みが小さな光となって、人々を照らしていけますように。
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