海外での上映会!Q&A動画(日本語字幕付き)配信!
vol. 5 2023-10-21 0
\支援額100万円突破/
『ミューズは溺れない』Blu-ray化支援企画がスタートしてから22日目を迎えました。
現在75名もの方に御力添え頂き、達成率78%となりました。
ご支援とご声援に心より感謝申し上げます。
そして、改めまして、支援額の合計が100万円突破いたしましたことを御報告いたします。
本当に、ありがとうございます。
関係者とともに、感謝の気持ちと喜びを噛み締めております。
プロジェクトの実現へ向けて、より一層力を入れて参りたいと思います。
《海外での上映会の御報告》
現在、JFF+ INDEPENDENT CINEMA 2023の企画で『ミューズは溺れない』の世界配信(日本と一部地域を除く)が行われています。(※10月末まで)
関連企画として、10月17日(火)にスペインのバルセロナ大学で『ミューズは溺れない』の上映会が行われました。
現地では、在校生の方や地元の方など、幅広い年齢層の約70名ほどの方がご参加くださったそうです。
監督・淺雄もリモートの形で現地と繋ぎ、通訳の方を介して交流をさせていただきました。
上映後はしばらく拍手が鳴り止まなかったとのことで、さらにQ&Aの時間にはたくさんの方が手をあげてくださいました。
テーマをはじめ、本作が描いているものを深く受け止めてくださった現地の方々の熱のこもったご感想に触れ、国境や言語を超えて映画が届いていく喜びを感じました。
感無量のひとときでした。
【画像:バルセロナ大学の講堂。約70名ほどの参加者が、スクリーンに投影された『ミューズは溺れない』を見つめている。】
《Q&A動画(日本語字幕付き)を解禁!》
JFF+さんの企画で、海外の皆様からご質問を募集し、監督が回答する「Q&A動画」の収録を行いました。
すでに公開されているショート動画におさまりきらなかったご質問への回答の様子を、
新たにロングバージョン(日本語字幕付き)でお届けいたします。
なお、[9分50秒以降]はラストシーンに関するネタバレを含みますので、まだ本編をご覧になっていない方はお気をつけください。
【動画:『ミューズは溺れない』Q&A(日本語字幕付き)】
引き続き、『ミューズは溺れない』の広がりを見守っていただけたら幸いです。
一人でも多くの方に本作をお届けできるよう、皆様のご支援とご声援を糧に、頑張って参りたいと思います!
『ミューズは溺れない』監督 淺雄望
*******************************************
下記に、Q&A動画の文字起こしテキストも掲載いたします。
動画の御視聴が難しい方はこちらをご参照ください。
『ミューズは溺れない』Q&A文字起こし
淺雄:淺雄望です。ご質問ありがとうございます。お答えしていきたいと思います。よろしくお願いします。
●質問:映画の制作過程はどのようなものでしたか?
淺雄:この『ミューズは溺れない』のシナリオを書き始めたのが2012年でした。そこからなかなかシナリオが書き上がらなくて、初稿が上がったのが2018年の終わりぐらいで、6年7年ぐらいかかりました。
もともと私はシナリオを書きながら助監督の仕事をしていたので、その映画の撮影の現場で出会った信頼できるスタッフの方々にお一人お一人声をかけていって、「自主制作映画の形で映画を撮りたいんだ。監督をしたいんだ」という風に相談をして、メンバーが集まって、ついに2019年の夏に撮ろうということで決まりました。
そこから準備を進めていって、2019年の7月から8月にかけてキャスティングを行って、メインの3人をはじめとする素晴らしい役者さんたちに出会うことができました。そして、2019年の8月に満を持してクランクインしました。人物パートを12日間で無事に撮り終えました。
そして、2019年の10月に家の取り壊し工事のシーンを撮る予定だったんですけれども、自然災害などの影響を受けて、その工事そのものが延期になってしまいました。延期になっているうちに、新型コロナウイルスの感染拡大という状況を受けて、その工事そのものが無期限延期、無期限停止ということになりました。
最終的に解体工事の再開を待って、2021年の4月に解体工事のシーンを撮ることができ、クランクアップとなりました。なので、延べまるまる2年ぐらいこの映画の撮影にかかっています。
●質問:脚本の執筆プロセスはどのようなものでしたか?ご自身の実生活での体験が、映画に反映されていますか?
淺雄:このシナリオを書き始めた段階で、私の中で大事にしたいなと思うテーマがありました。
それは「セクシュアリティーは揺らぎ続けていてもいい」ということです。その言葉は、もともと私が高校生のときに先生から言っていただいた言葉でした。もともと幼少期から私は周りの大人の人たちに女の子らしくしなさいとか、女の子は早く結婚して子供を産むのが幸せなんだよ、ということを言われていて、なんだかその言葉にものすごく違和感というか、苦しいなという思いを抱えていました。
その、周りの人達に期待される「女の子らしさ」みたいなものに自分が応えられないっていうことがものすごく悲しくて、自己嫌悪感がどんどん募っていきました。
そして、高校生になって、いざ自分の将来を決めなくちゃいけないっていう段階になったときに、いよいよ苦しくなって高校の先生に「女として生きるって何だかものすごく苦しいです、私は」という話をしました。
その時に先生が「じゃあ、女の子が苦しいんだったらやめちゃえば。男になってみたら?それで、男になってみて、やっぱり違うなと思ったら女の子に戻ってもいいんだよ。どっちでもない時があってもいいんだよ。揺らぎ続けていてもいいんだよ」っていうことを言ってくださいました。その時の「揺らぐ」っていう言葉が、私にとっては初めての言葉で、なんだかものすごく自分の心を解放されたような、何かの枠組みからすくい取ってもらったような気持ちになりました。
同時に、何よりも男らしく女らしくっていう言葉にがんじがらめになっていたのは自分自身だったんだなっていうことに、その時気づいて。もう少し自由に揺らいで生きていてもいいんだなという風に思うことができました。
この映画も10代の高校生たちのアイデンティティーにまつわるお話なんですけれども、
自分が同じ10代のときに先生に言ってもらって、自分の心を救ってもらって、とても苦しいことから解放してもらったので、この映画を通してその先生の言葉だったり、その言葉にまつわる概念だったりを伝えられたらなと思って、このシナリオを書き進めていきました。
なので、結構…私の実生活で言ってもらった言葉とか、自分が出会った人達から受けた影響だったりが、色濃く反映されているのかなと思います。
特に主人公の朔子だったり、そのライバルになる西原だったりもの作りをしている人たちが出てくる映画なんですけれども、このシナリオを書きながら、私はずっと「映画を撮りたい、映画を撮りたい」と思ってたんですね。だけど、なかなか…撮りたいと思っても撮れるものじゃなくて。
周りの人からは「映画監督に向いてないよ」みたいなことも言われていたので、ものすごく悔しい思いだったり、劣等感みたいなものを抱えていました。
その、もの作りをどうしてもしたい、でもできない、自信がない…だけど、やっぱり作りたい、みたいな。自分自身が抱えている欲望だったり、感情みたいなものをものすごく映画のシナリオの中に投影しているんじゃないかなと思っています。
●質問:この映画にクィアな人物を登場させたアイデアについて教えていただけますか?
淺雄:この『ミューズは溺れない』の中には、様々なセクシュアリティーを持つキャラクターが登場しています。
登場させたいと思った理由は、ものすごく自然な流れでした。私自身が「セクシュアリティーっていうのはグラデーションに満ちているもので、グラデーションの中をさまよっていてもいいんじゃないかな」っていう風な考えを持っています。
性的指向や性自認は、ある特定のマイノリティーだけの問題ではなくて、誰しもに関わる問題だと私は思っていて。なので異性愛者だけが描かれるとか、恋愛をしている人達だけが描かれるっていうことには何かものすごく抵抗があって。そうではなくて、もう少し様々なバックグラウンドを持って、様々な価値観を持っている人たちが各々に話し合ってお互いを認め合う…そういうシーンを描きたいなと思いました。
なので、ものすごく自然な流れで、色々なセクシュアリティーを持っている登場人物たちが出てくるという話になりました。
●質問:この映画を作ろうとしたきっかけや動機は何ですか?
淺雄:『ミューズは溺れない』は高校生たちのアイデンティティーだったり、将来に対する不安っていうものを描いているんですけど、その悩みそのものを映画を通して肯定したいなという思いがありました。私も10代の時に、実際に「映画監督になりたいな」と思ってたりとか、同時期に自分のセクシュアリティーにものすごく悩みを抱えていて、ものすごく不安定な状態が苦しいなという時期があったんですけど…振り返ってみると、そうやって悩んでいた時間ってものすごく大事な時間だったんだな、と今は思えます。
映画を通して、こういうことで悩んでいる人たちはいるし、こういうことで悩んでいる時間は絶対無駄じゃないよ、ということを言いたいなと思って、この映画を作りました。
●質問:この映画に出てくる絵画や海といった要素の重要性について教えていただけますか?
淺雄:この映画のテーマの一つとして、「セクシュアリティーはグラデーションでできている、揺らぎ続けてもいいものなんだ」っていうことを言いたいというのが、元々あったので、それをどう表現するのがいいのかな?と考えた時に、「絵」が私の中ではとてもしっくりきました。
絵を描くというのは、線を重ねていく行為でもありますし、色を重ねていく行為でもありますし…何かその、絵を描くという行為が10代の揺らいでいるアイデンティティーを形作っていくこととリンクするんじゃないかな?という風に思って「絵」を登場させました。
そして、もう一つの重要な要素として「海」が登場するんですが…冒頭のシーンで主人公が溺れるっていうところから海との関わりが始まる映画なんですけど、私は10代の時にものすごく自分のアイデンティティーがよくわからなくて悩んでいて、溺れもがいているような感覚で息苦しさを抱えていました。
なので、思春期の10代の子たちの気持ちを表現する時に、「海で溺れてもがいている」っていう、「手をいっぱい動かして何か掴もうとしている」っていうのが、私の中ではものすごくリンクする表現だなと思ったので、「海」を出しました。
そして、「海」が都度都度出てくるんですけれども、海っていうのは、形があるようでないというか。こう…常に波が動き続けているっていう。それもやっぱり「線」を重ねていくという行為に似ているというか。この映画のテーマとしている「セクシュアリティは揺らぎ続けていてもいい」っていうことと、「グラデーションでいい」っていうことと、やっぱりリンクするものとして、海のビジュアルがいいなと思って。
<※以下ネタバレを含みます>
●質問:なぜ最後に手作りの船が航海しているところを見せなかったのですか?
淺雄:実を言うと、元々のシナリオでは、朔子と西原が浜辺に手作りの船を持って行って、それを海に船出させる…っていうところまで書いてました。
でも、実際に撮ろうという段階になって、「あ、やっぱり撮るのは止めよう」と思いました。
なぜかというと、そこを具体的に描かなくても、むしろ描かない方が、見ている方々の中で想像を膨らまして、「この後二人はどうなるんだろう?船はどうなるんだろう?」っていう風に終わった方が、映画としてとてもいいんじゃないかなと思ったからです。
それに、実際に撮るとなると、あの手作りの船が、実際には60キロぐらいありまして、ものすごく重たいんです。本当にこう海に押し出していったら、ブクブクブク…とすぐに沈んでしまうと思うので、その現実みたいなものを撮ってしまうと、ラストとしてちょっと違うのかな?と思って撮るのはやめました。
「この後どうなるんだろう」っていう風に皆様の想像の中であの船が船出していくっていう…
イメージの中で船出していくっていう方が素敵だなと思ったから、そのシーンは描きませんでした。
●質問:2人の少女が部屋で一緒に海を眺めているシーンがありますが、これはどういう意味合いを持つのでしょうか?
淺雄:朔子の家で二人で船を作っていて、気が付くと海にいる。海の浜辺の中で船を作ってる、っていうシーンなんですけども、そこはものすごく言葉で言うのが難しい。言葉で言うのが難しいから映像に委ねた、っていうところがあるので、なかなかこう言い難いところはあるんですけれども。
私の演出意図、このシーンを作った意図としては、何かこう二人の脳内で湧き上がっていくイメージ…もの作りへの高揚感みたいなものを二人が共有した。イメージの世界で二人がものすごく楽しい時間を過ごしてる。その楽しい時間っていうのは誰にも邪魔されるものではなくて、現実の荒波にも邪魔されるものではない…というような思いを抱いて、ああいうシーンを作りました。
何かもの作りをしていると、ついついひとりぼっちになりがちなんですけど…私なんかはそうなんですけど。だけど、映画を撮りたいなと思ったきっかけにもものすごく似てるんですけど、誰かと同じ目的地を目指して、そこに向かって何かを作っていく…目的を共有するというか、イメージを共有するというか。
「こうすることで、より良くなるよね」みたいなことを共有しながら、同じ方向に進めているなっていう瞬間が、私はものすごく幸せだなと思うので。
きっと朔子と西原は、船の完成形はまだ見えていないかもしれないけど、「こういう風に部品を付けて、こういう風に遊んでみたら面白くなるよね」っていうところで一致して、気持ちが一つになって、同じ方向に向いている。その時間そのものが、ものすごく幸せで、その感覚そのものが、ものすごく大切で、誰にも邪魔されないっていう…何かそういうことを描きたいなと思って、海に行きました。
●質問:将来制作する映画について更なるアイデアはありますか?
淺雄:(鳩を肩に乗せて)…あります。何か鳩が出てくる映画を撮れたらなと思っています。
テーマとして、ずっと私の中で大事にしているのが、セクシュアリティーの問題だったりするので、そこはきっとこれからも大切に描いていくんじゃないかなと思っています。
楽しみにお待ちいただけたら嬉しいです。
是非、ご一緒に作品作りをしてくださる方がいらっしゃいましたら、お会いできるのを楽しみにしています。ありがとうございます。
*******************************************