振り返りシリーズ ミュージカルシーン2日目!
vol. 36 2020-09-30 0
本日も天候は曇り!なんとか行けそうだ。
昨日一日やっている分、撮影場所の特性や手順なども分かり、いくらか余裕が出てきた。しかし、逆にいうと、このシーンを撮影出来るのは残り3.4時間しかない。
そして、今日の方が昨日よりもさらにダンスのシンクロ率を求められるカットが続く。
マイクを通した流石さんの激しい檄が飛ぶ。流石さんのマイクの音量に負けじと音楽の音量も少しづつ上がり会場全体が異様な熱気に包まれていく。要求もどんどん高くなっていく。
「もう一息、本当、普通にいい感じだけど、もう1個行ってみよう!もう一つ上を目指そう!」
流石さんも山本監督もテンションマックスで、盛り上げていく。
その時プロデューサーの村岡に電話が入る。セット会場のスタジオの管理人からだ。
「さすがに時間も遅くなってきたし音量を下げて欲しい、近隣から苦情が出だしてます、あと、マイクの声が相当響いているからマイクを使用しないで欲しいときつく言われました」と
現場にそのことが伝えられる。時間が刻一刻と迫ってくる。
音量を少し下げ、トライしていく。音量を下げたせいか動きも多少小さくなってしまったように見える、何度もやり直す。マイクを使うのをやめた流石さんが生声でダンサーたちを鼓舞する。
その時またしても村岡Pに電話が
担当者「一軒だけすごくうるさいとこがあって、時間内に本当に終わるのか?まだやってるだろう、もし時間内に終わらなかったら、即警察に通報して撮影を止めるぞと言われてます、むしろ今すぐ警察呼んでもいいんだぞ、ぐらいの感じです」
村岡「確かに音量のこととかは申し訳ないけど、事前に撮影内容も時間も多少前後する可能性も含めて説明してあるし、うちもこのシーン撮りきらないわけにはいかないんで、もうあとそんなにかかりませんから粘ってください。なんなら僕が話しに行きます。警察呼ばれたら呼ばれたでそれも僕が対応します」
担当者「分かりました。その時はお願いします、今はまだ、なんとか粘りますので、なるべく大人しく、出来れば22時までに終えてください」
村岡「分かりました、ありがとうございます」
現場にそのことを伝えるも現場も(スタッフ・キャスト、ダンサーもみんな)必死にやっているのは分かっている。うまくいけ!っと祈るしかない。
残すところワンカットまできた。このカットさえうまく行けば終わりだ。
しかし、なんとも、OK!というふうにはならない、悪くはないんだけど・・・・・
そこで演出部から村岡Pに提案が「ラスト1回、音量を上げてトライさせて欲しい、ここまで妥協なくやってこれてます、最後のここで手を抜きたくないです」と。
どうしても、踊りのテンションが最高潮には行ききれないのだ。
「ここまで来たら引けないよ、だって『脳天パラダイス』だもんね、やろう!」と言ったこの時の村岡さんは、警察に連行されることを覚悟していただろう。
そして最後ワンチャンのラストカットが音量を上げて撮影される。
「これ、最後の一回ね、いくよ、みんな気合い入れて!」
「本番! よーい、ハイっ!」
迫真のダンスが展開される、スタッフも手に汗握る。祈るような想いで見つめるすべての関係者たち。
カット・・・
流石さんが先か、山本監督が先か、ほぼ二人同時に「OKー!やったー」の声、一同飛び上がる。
その時、流石さんが歓喜のあまり目の前に置いてあった、
(後になってみると使用しなくなった時点で、見えないとこに置いておけば良かったと後悔)
マイクを無意識に手に取り電源をONにして叫んだ。
「最高〜〜!あんたら最高だよ!よくやった〜〜」
村岡Pが口に人差し指を当て、シーッと言いながら、流石さんのとこに飛んでくる。
流石さんもその瞬間、はっと我に帰り、ごめん、ごめんと慌ててマイクを外す。
みんな爆笑している。
即担当者に電話を入れ、「今、終わりました!ありがとうございました」
ということで、ことなきを得て、というか、最高の撮影を無事に撮り切ることが出来ました!
キャスト・ダンサーたち踊っている人はもちろん、妥協をせずに作り上げた振り付けの流石さん、山本監督、そしてスタッフたち、すべての人たちの想いが詰まったシーンです。
その空気が少しでも伝わることを祈っています。