明るい光の方角
vol. 421 2021-11-12 0
映画『演者』クラウドファンディングを開始した日から連日続いてきた。
完成披露試写会を終えて今日の全員公開のアップデートで一旦、連日更新は終了する。
気付けば421号。421日連続更新になった。
今日までありがとうございました!
連日更新はなくなりますが動きがあればまたこちらで発表します。
そしてたまにnoteも更新していく予定です。
偶然なのだけれど。
本日11月12日は僕にとってとても大事にしている日です。
僕の頭の中のどこかでいつも聞こえている声があって。
その人がいなくなっちゃった日。
僕が今も芝居を続けていける大きな理由の一つ。
先生にも『演者』を観て欲しかった。
先生も映画は大好きでとても詳しかった。
初号試写、完成披露試写会と続けて。
関係者や応援してくださった方の中の一部の皆様にご鑑賞いただけた。
たくさんの力をいただいた。
けれどお褒めいただけることは当たり前のことなのだよなぁとも思う。
ごく一部、お世話になった方からもお褒めいただけたことはとても自信になったけれど。
それだって僕のことを知ってくださっている方なのだから。
これから僕のことも誰のことも知らない誰かがこの映画と出会うだろう。
その出会いを今から想像している。
お褒めいただくだけじゃないかもしれないけれど。
自分自身に調子に乗りなさんなと呟きながら。
それでもその声の一つ一つに確かな何かを掴んでいることも事実で。
「応援しているから」ではない、少しだけでも心が動いたのだという実感もあって。
そのことの大きさに自分が圧倒されたままだ。
可能な限り、世界中の一人でも多くの誰かにこの映画が出会ってくれたら。
僕の知り合いも越えて、この国さえ越えて、あらゆる分断を越えて。
国境も信仰も人種も思想も性別も軽々と飛び越えて出会って欲しい。
僕たちはこの国の中でさえあまりにも無名で無力だけれど。
世界の片隅のような稽古場で何十年も探し続けたものがあって。
そのひとひらだけでも、どこかの誰かの心に触れることが出来たら。
今までもたくさんの出会いがあったけれど、その出会いがもっと拡がったら。
そんな事ばかり考えている。
日本では今、新型コロナウイルスの感染状況が落ちついている。
世界的なパンデミックは大きな視点でも小さな視点でも様々な分断を生み出した。
映画館や劇場から足が遠くなった人たちだっている。
国と国の仲が悪くなったり、内戦やクーデターが起きたり、往来が減ったり。
一方で僕たちの生活も大なり小なり変化が続いている。
感染状況が落ち着いた頃に撮影して、感染状況が落ちついてから試写をして。
楽観的予測と希望的観測と悲観的な注意の中で自分で自分を規制しながら生きている。
目を転じれば海の向こうでは再び感染状況が悪化し始めている。
重症化と致死率が下がった結果、ウィズコロナという新しい生活を模索し始めている。
不要不急だと手始めとばかりに切り捨てられた古傷は今も疼き続けていて。
それでも世界と世界が遠くなっていく中で僕はまだ出会えるのだと信じている。
ウィズコロナの中でも分断とは逆のベクトルの方向に進めると信じている。
それはきっと僕にも忘れることが出来ない体験があるからだ。
絶対に忘れることがない映画がある。
絶対に忘れることがない音楽がある。
絶対に忘れることがない演劇がある。
そこから始まった人と人との繋がりがあって。
そこから生まれた新しい表現があって。
それが僕の人生を豊かにしている。
それは明らかにパンデミックの中で生まれた疎外感の反対側にあるものだから。
くさいことを書く。
僕は心と心の繋がりを信じている。
能の「高砂」みたいなものだ。
それは永遠のものだ。
きな臭い声が聞こえる。
全世界がよりシリアスに戦禍の可能性について動き始めている。
第三次世界大戦の可能性が再び持ち上がっている。
見て見ぬふりも出来なくはないけれど、隠しようがなくなってきた。
今、世界が進んでいる方向は破滅の方向なのだろうか。
僕はそんなわけがないと思う。
誰だって笑い、泣き、驚き、震えて、痺れたいはずだ。
誰とだって心と心が繋がるはずだ。
破滅したい人なんかいるはずがない。
これから映画『演者』は出会いを重ねる。
どこかで誰かと出会い続ける。
僕がはじめた夢の続きはこれからが本番だ。
その夢はまだまだ遥か彼方かもしれない。
それでも明るい光の方へ進むべきだ。
光の中で。
再び皆様と出会えますように。
小野寺隆一