映画「演者」製作プロジェクト┃
映画「セブンガールズ」製作から３年、もう一度下北沢から世界へ

映画「セブンガールズ」の国内配信が決定した。
昨年末ぐらいから準備をしていたのだけれど決定して良かった。
海外映画祭に挑戦したことですでに字幕があったことも良かった。
映画祭に出した後にまだ編集をしたから字幕データの修正が必要だった。
配信会社は全世界を股にかけているから字幕データがない映画は依頼も出来ない。
そういう意味では今、映画は軽々と国境を越えていく。

配信や放送が決定すると上映機会が少なくなる。
これで映画館でかかることはほとんどなくなるのかなと思うと少しだけ寂しくもある。
けれどそれを越えて、今まで観ることの出来なかった人にも届くんだよなって思う。
住んでいる場所や、家庭の事情、様々な理由で観たくても観れなかった人がいる。
そんな皆様が映画を観る機会が増えるのだから、それが一番だ。
テレビ画面やモニターでは、何度も何度も僕は繰り返し観てきた。
でも初見の皆様の感想はどうなるのかまったくわからない。
映画館とは違う配信で映画を楽しむ新しい誰かにも届くことが何よりも嬉しい。
そしてモニターで観ると、何か感想とかも違うのかもしれないなとも考える。

今の若い人はテレビを持っていない人も多いという。
PCやスマフォ、タブレットで配信さえ観れたらいいのだそうだ。
ちょっと自分の世代では信じられないようなことが起きている。
そんな中でYoutubeとか色々楽しんでいるうちに映画だけになった人もいるらしい。
旧作や名画まで、信じられないほどの映画マニアが存在する。
僕らの時代は近所のレンタルビデオ屋にあるものだけが家で楽しめたのだけれどあの頃、片っ端から観ていった僕には何となくそんな層がいるのを理解できる。
配信の映画であればとりあえずなんでも観てみるという方もいる。
そんな人にも届くといいなぁと思う。

これはやっぱり奇跡だよなと思う。
劇団が映画を製作する。
それも小劇場のやり方で。
自分たちでセットを組み、小道具も衣装も用意して、映画を製作する。
劇団のファンの皆様に支えられて、低予算でも稽古場で稽古を重ねた作品を映画にする。
それが実際に映画館で公開されて、延長されて、色々な映画館に拡がっていって。
そして今度は配信までされるのだから。
ちょっと前までなら考えられなかったことのはずだ。
また一つ奇跡が起きた。
起きるはずのなかった展開が起きた。
あの日あの時、映画を創るということに向かったことが奇跡を生み出した。
エンドロールに並ぶ応援してくださった皆様の名前まで全国で流れるのだから。

そういう意味では僕はきっと欲がずっとずっと深いのだろうと思う。
僕はそこから更に大きな波が生まれるような奇跡を生み出すべきだと思っているからだ。
出演者の誰かにオファーが来るとかさ。
全国に一気に燃え広がっていくだとかさ。
海外で信じられないような評価をもらうだとかさ。
とにかく、未来に繋がるような何かが起きて。
いつか、セブンガールズがはじまりだったと言われるような。
そんなことをどうしても想像してしまう。

当たり前のことじゃない。
夢って言ってしまえばチープかもしれないけれど。
胸に夢を一つ持たないと生まれなかったことだ。
それさえあれば、学びながらでも進める。
一歩ずつだとしても進める。

大事なことは具体性だ。
より具体的に。
夢を夢としてみるだけなら誰にだって出来るのだから。
自分自身へのチャージが出来なきゃ行動にもならない。
行動しなくちゃ、前に進んでいかない。
行動するならより具体的に、何が出来て何をやるのか。
なんとなくじゃなくて明確に道を歩かなくちゃいけない。

何が起きるかなんかわからないよ。
これは本当に。
実際、誰にもこんな疫病禍が来るなんてわからなかったしさ。
良いことも、悪いことも、何が起きるかなんてわからない。
でも、何も起きないことを願ってるわけじゃない。
ちょっとでも良い方向に進むことを願っているだけだ。
悪いことなんか起きて欲しくないのと同じぐらい、何も起きないことが厭だ。
黙ってロートルになってたまるかよ。
せめて、うるせえロートルになってやるさ。

配信は映画館のように少ない日程に限られているわけじゃない。
映画館なら初日に向けて大きく宣伝しなくちゃいけない。
配信は初日に少しでも盛り上げないと的なことよりも継続的に噂が広まるような。
それは今までにはなかった流れなんだよな。
いずれにせよ、まだ日程も変わる可能性があって、URLも公開後だ。
近い時期が来たら、何かするべきかもしれないなぁと考えているけれど。
映画館のような舞台挨拶とは違った形で、何ができるのだろう。
やはり公開後に少しずつ、何かが出るとかが良いのだと思う。
楽しみに待ってくださっている方もいる。

このまま打ち上げ花火にはならんように。
大きな流れの一部なのだ。きっと。
過去を思い出すことは美しさばかりを求めて。
実は過去には夢がないのだということが見えなくなってしまう。
未来をみるからこそ、過去は光り輝くのだ。
僕が演劇と出会ってからの30年間を光にしなくちゃいけない。
初めて舞台に立ったあの日も。
千秋楽前に泣きじゃくったあの日も。
龍馬さんを演じて舞台の天井が霞んで見えたあの日も。
セブンガールズも。
全てを光にしなくちゃいけない。

今日も進む。
不安ばかりだけれど。
それを一つ一つ覆しながら。
奇跡は進み続けることが本質。

本読み稽古も近い。

小野寺隆一