制作日記 2「Only "You, Only "Love"」CD2-5 完全版
vol. 14 2024-03-11 0
6/27 追記、写真追加・差し替え
cali≠gari 桜井青 (arrange. & g.) & 石井秀仁 (vo.)、上領亘 (dr.)、中西智子 (b.)による「Only "You", Only "Love"」のレコーディングレポート!
3月10日快晴の日曜の午後、都内某所にある岡野ハジメ氏のプライベートスタジオ (INFANTRON studio) に集まったのは、元GRASS VALLEY、現NeoBalladの上領亘さん(ドラム)、from DER ZIBETの中西智子さん(ベース, SION'S SQUAD, ウルフルケイスケバンド)、そしてcali≠gariのギタリスト・桜井青さんの3名。
この日のレコーディングは1987年にリリースされたDER ZIBETの3rdアルバム『DER ZIBET』のリード曲だった「Only "You", Only "Love"」のドラムとベース。桜井青さんはこの曲のアレンジとギターを担当、この日は欠席でしたがcali≠gariの石井秀仁さんにボーカルを担当していただきます。
桜井青さんとDER ZIBETとの出会いは「実は3枚目はリアルタイムじゃなくて、4枚目の『GARDEN』なんですよ。高校生の頃、茨城の地元の友&愛(貸レコード店の全国チェーン大手だった)が初めて入れてくれたのが『GARDEN』だったんです。「地下室のファンタジー」が好きでライブでカバーしたこともあります。でも、(トリビュートアルバムで参加するには)ニッチなんで(笑)。「Blue Blue」も考えたんですが、他の方がやられると聞いて、それなら「Only "You" ...」かなと。」
最近ちょくちょくcali≠gariのサポートも務めているドラムの上領亘さんはGRASS VALLEYでデビュー、その後SOFT BALLETのライブも支えた名ドラマー。「デルジベットとはNHKオーディションが一緒だったんですよね~」と懐かしがり「ISSAYくんと一緒にやりたかったなぁ」と少し後悔の念も。当時を思い起こすとDER ZIBETのメンバーもGRASS VALLEYを少しライバル的に見ていたような気がします。とくに上領さんのパフォーマンスはドラマー界はもちろんのこと、音楽ファンの間でもその美意識あふれる精緻なドラミングが何かと話題でしたし、女性人気も高かった! MAYUMIと比べられる事も度々ありました。
そして、ベースの中西智子さんは再結成後のアレルギー(宙也さんを中心とする伝説的なバンド)にTOKIEさんの後を継ぐ形で加入されたベーシストでもあり、DER ZIBETとの共演を経て近年はfrom DER ZIBETとしてライブ活動を支えていただいたお一人です。また、桜井青さんとはヘクトウで一緒に活動されていました。今回のレコーディングでは、打ち合わせの際にふとしたタイミングで「今でもISSAYさんがいなくなったなんて、信じられないんですよね…」と口にされていました。「from DER ZIBETで弾かせていただいたことで、たくさんの刺激と愛をいただきました。大切な宝物です。とても感謝しています。」とのコメントも頂戴しました。
さてこの日のレコーディングは、エンジニアのkoni-youngにとって初めてのスタジオでしたが、予想以上に準備作業に時間がかかり、レコーディングは1時間以上押してのスタートとなりました。
岡野スタジオのドラムセット(TAMAスタークラシック/メイプル)+ 上領さん持参のスネアとシンバル類でドラムの音決めが終わると、コニヤンの隠し球的なフェニックスオーディオのDIをかませたベースの音がバッチリとドラムの音に馴染む。
そして青さんが用意したトラックに合わせて、1階ドラムブースの上領さんと2階のエンジニア席の後ろで弾く中西さんの録音がスタート!
とにかく勢いのあるこの曲、「Only "You", Only "Love"」、ベースの中西さんは椅子に座りながらもライブで弾いているかの如く身体を揺らし、頭も振りながらの熱演でした。残念ながら上領さんの様子はモニター画面越しでしか確認出来なかったものの、そのキレのあるプレイからは並々ならぬ気迫が伝わってきました。
かくして、何テイクかを一緒に演ってあれよあれよとベースは終了。ドラムも程なく終了して、ほっと一息ついた頃には外は暗くなり始めていました。時間を忘れるとはまさにこの事です。
というわけで、こちらにご紹介したのはドラムブースで撮った岡野さん交えての集合写真。ちなみに、岡野さんはこの曲のオリジナルのプロデューサーでもあるんです。
岡野さんの自作イカベースを手に談笑中のベーシスト二人
この撮影のあと、上領さんは先に帰られましたが、残ったみんなでイトハル家特製のハンバーガーを岡野家の大きなテーブルで一緒に食べながら雑談。青さんのデザイナーとしての遍歴にはびっくり。僕も存じ上げるブックデザイナーの祖父江慎さんを熱く語られていて、本当にデザインが好きな方なんだとあらためて認識させられました。
「CDのデザインがやりたくてCD出しているようなものです」と、嘘かホントかわかりませんが、それくらいデザインやイメージ戦略を大切にしているcali≠gariというバンドの断片が知れてとても興味深くお話をうかがいました。
ここから続報
さて、その後時は進み、cali≠gariも並行してニュウアルバム「17」のレコーディングが進む中、時間を縫って桜井さんのギター、石井さんの歌を収録していただきましたが、それは思いの詰まった素晴らしい演奏と歌で、あえて王道のこの曲を選んでいただいた桜井さんのセンスに脱帽し、また石井さんの歌が本当にこの曲にマッチしていて、これは大正解だったと感じました。
そしてcali≠gariのいつものエンジニア白石さんにミックス作業に入って頂いたのは「17」が完パケた後の5月16日から。これが初仕事となるプロデューサー岡野さんと白石さんの間ではかなり多くの言葉が交わされ、時間が費やされ、多くのMIXデータがやり取りされて、最終形が完成したのが21日。足掛け6日のミックス作業となりましたが、岡野さんの音作りに対する「鬼の探究心」が素晴らしい形で伝播していく様を見ているようでした。
この、他のどの曲とも違う、強いて言えば「突き抜ける青空のように強く輝く孤独ソング」をアルバムのどこに配置したらいいか大いに悩みましたが、デルジベットのかつてのライブ構成の中での終盤のたたみかけるような怒涛の展開を思い出してCD2の5曲目に配置させていただきました。
曲の誕生からずっと歌詞・曲ともにDER ZIBETの代表曲のひとつとして語られてきたこの「Only "You", Only "Love"」に、新たなスポットライトを当てて頂いたこのプロジェクトの皆さんに改めて感謝を申し上げたいと思います。
皆さん本当にありがとうございました!
DZTP: イトハル