乾物料理は包丁いらず!ずぼらな人にもぴったり
バーがオープンする少し前にリトルトーキョーに到着すると、サカイさんと田平さんが、お客さんをお迎えする準備をしているところでした。人参、ネギ、大根、ズッキーニ。ざるの上に用意されたカラフルな野菜は、どれもいじらしくて、なんだか可愛い。スーパーで“売り物”としてよく見かける乾物ですが、実は自宅でも簡単に作れるものなのです。
「天気のいい日なら、朝に野菜を切って干しておけば、夕方にはできちゃうんですよ。しかも調理は簡単。他の食材とそのまま一緒に煮込んじゃえばいいんです。調理の際には包丁もいらないし、使いきれない野菜を常温保存できる。忙しい社会人や料理が苦手な人にもぴったりの保存法なんです」
乾物=定番の干し椎茸やかんぴょうだと思っていたら、全く違いました。確かに、一緒に煮込むだけならお料理も簡単かも。忙しい毎日を送る社会人にもぴったりの食材ですが、そもそも、お二人はなぜ乾物に注目したのでしょうか。
「もともと食育に関する活動をしていたのですが、ある日南米食材店でジャガイモの乾物を発見して。ジャガイモは日本でもたくさん食べられている食材なのに、乾物としては売られていないことが不思議でした。乾物について調べてみると、保存に冷蔵庫がいらないからエコだし、軽いから輸送の燃料もかからずCO2の削減にもなるし、余った食材を活用できるから食べ物を無駄にしない。なんだか社会に良さそうだと感じたことから、乾物に関心が移りました。そんな時に震災が起きて。スーパーから生鮮食品がことごとく消える一方で、乾物はきちんと在庫があったことに衝撃を受けました。でも普段から使っていないと、使い方がわからない。これは使い方を含めて発信していく必要があるなと思いました」
*サカイさんと田平さんの活動を深く知ることができるインタビューはこちらから:『乾物はこれからの地球を支える「未来食」。サステイナブルな社会に向けてみんなの力を結集したい。』
https://motion-gallery.net/blog/freedon-univ-kanbutsu
ヨーグルトでおつまみ!?新しくて美味しい、乾物の使い方
お米にパスタにお茶。種類は豊富な日本なのに、料理のバリエーションが少ないためか、“地味”“面倒臭い”というイメージがついてしまっている乾物。和食のイメージが強いけれど、実はパスタに使ってもいいし、味噌や醤油に限らず好きな調味料を使って調理して良いのだそう。
「食生活が多様になったのだから、乾物の調理法だって変えて良いんです。例えば、ワインや鶏がらスープで戻したって良い。そうすることで風味が増して、美味しくなるんですよ。料理自体がそれ(ワインや鶏がらスープ)に合うものであれば、ほぼ失敗することはないと思います」
この日お二人がイベントのために用意していたのはなんと、ヨーグルトで作る乾物おつまみ3種。市販のヨーグルトを入れてそのまま冷蔵庫で8時間、付属のスパイスをかければ完成です。実際に口にしてみると、切り干し大根も黒大豆もふっくらしていて、素材の味が引き立っています。ワインにも日本酒にも合います。
「ヨーグルトがソースみたいになるんですよね。他にも、ヨーグルトで戻した高野豆腐に生ハムを巻いてオリーブオイルで焼くと美味しいですし、グリーンカレーに入れても美味しい。自由な発想で新しい料理を見つけるのは楽しいですよ」
社会を変えるためには、たくさんの人の言葉が必要
今回クラウドファンディングで出版する本は、お二人が担当されている自由大学の人気講義「乾物のある生活」の受講生と一緒に作っているのだそう。なぜ今あえて、このような形で本を作るのでしょうか。
「以前、乾物ヨーグルトに関する本を発表した時には、メディアにもたくさん取り上げられたのですが、結局社会は変わらなかったんです。それがとてもショックで。私たちの言葉だけではなく、共感してくれる方々の言葉で発信していくことが必要だと思いました。そこで自由大学の卒業生と一緒に、本を作ることにしたんです。
パーティ料理から一人暮らしの方にオススメしたいレシピを揃える他、乾物に特化した飲食店のオーナーさんや、お子さんを抱える主婦の方、忙しく働くサラリーマンの方へのインタビューも収録しています。乾物と出会って、生活がどう変わったのか、身近な一例として感じてもらえたら嬉しいです」
明日からの食生活が豊かになる、こちらのプロジェクトは9月29日の23:59まで。社会に優しい乾物に興味がある方も、新しい料理に出会いたい方も、ぜひページを覗いてみてください。