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INTERVIEW - 2016.02.20

カメラマンが映画を作る。 風営法と戦ったクラブ、NOONを描いた『SAVE THE CLUB NOON』ができるまで

​映画、『SAVE THE CLUB NOON』は、4日間にわたって行われたイベント「SAVE THE NOON」の模様を辿ったドキュメンタリー映画です。大阪を代表するクラブ「NOON」が風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律、いわゆる「風営法」の違反により摘発されたことをきっかけに、全国各地からDJやミュージシャンたちが集まり、イベントが開催されました。映画制作に踏み切ったのは、写真家の佐伯慎亮さん。衝動に駆られて制作に踏み切った当時の想いを伺いました。

映画、『SAVE THE CLUB NOON』は、4日間にわたって行われたイベント「SAVE THE NOON」の模様を辿ったドキュメンタリー映画です。大阪を代表するクラブ「NOON」が風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律、いわゆる「風営法」の違反により摘発されたことをきっかけに、全国各地からDJやミュージシャンたちが集まり、イベントが開催されました。映画制作に踏み切ったのは、写真家の佐伯慎亮さん。衝動に駆られて制作に踏み切った当時の想いを伺いました。

踊るだけで犯罪?いつの間にか当事者に

――普段、佐伯さんはカメラマンをされているとのことですが?

佐伯:大阪を拠点にカメラマンとして活動しています。この映画は偶然が重なって完成しました。きっかけは2012年の6月、NOONのオーナーの金光正年さんを撮影する機会があったんです。撮影が終わり雑談をしていると、金光さんが「来月、『SAVE THE NOON』というイベントがあるんだ。映像作品として記録したいんだけど、できる人いないかな?」とおっしゃったんです。

NOONが風営法で摘発されたのは2012年の4月。そのときから金光さんはずっと戦っていた。その話を聞いいて、なにか自分に手伝えないかと思いました。ただ、そのときは自分の知合いをたどって撮影ができる人を探し、自分もちょっとお手伝いしようかぐらいの軽い気持ちだったんです。同時期に別の仕事を抱えていたというのもありまして。ただ、撮りたいといってくれる人はなかなか見つからなかった。

―― そこでご自分で撮ろうと考えるようになったと。

佐伯:「こういう理由で撮影できる人を探している」と、多くの人に説明をしていくのですが、その過程で、『他人事じゃないな』と思いはじめてきたんです。当時、自分は風営法について、何も知りませんでした。いわゆるクラブやライブハウスのほとんどが、敷地の面積などが小さくて飲食店としてしか認められていないんです。そこで「客にダンスを踊らせる」と罪になってしまう。その事実が信じられませんでした。踊るだけで犯罪?おかしいじゃないか、と。

 NOONは、前身はDAWNというクラブだったんですが、自分はそのときからよく通っていて、バンドで出演したこともあったんです。警察がNOONに踏み込んできたのは21時43分。まったくもって健全な時間帯です。もし、この警察の摘発がNOONだけではなく、関西、全国のクラブ、ライブハウスに広がってしまったら、日本でクラブカルチャーは死に絶えてしまう…。

 そのことに気づいてから、音楽を好きな一般人の自分もこの事件の当事者の一人なんだと考えるようになったんです。現在の時点では、ライブハウスについては「観客がステージの一方だけを眺めているからダンスとは言えない」と警察側が見解を出しているけど、当時はまだなんとも言えない状況で、危機感だけが日増しに募る状況でした。自分のことなのに、忙しいという理由で関わらないのはおかしいって。

 自分はオシリペンペンズというバンドが大好きで、ライブが見られなくなるのが嫌だっていう理由で東京に出るのをやめたくらい好きなんです。そんなオシリペンペンズやほかのバンドたちの活躍の場がなくなるかもしれない。いまの自分があるのは、この場があるからだって。だから、きちんと恩返しをしなきゃって、思ったわけなんです。で、カメラを回すことになった。


劇中写真。プロジェクトページから

映画の公開、クラウドファンディングと次々の新しいチャレンジが・・・

―― ふだん扱う写真と、映像に違いはあったりするのですか?

佐伯:180度違います。ただ、自分は昔『あがた森魚ややデラックス』というドキュメンタリー映画でカメラマンをやったことがあったんです。その経験があったので、なんとかやれるような気がしていた。そんなとき、友人で映画監督の宮本杜朗君が予定を無理やり調整して、なんとか協力できる!と声をかけてくれた。絶妙のタイミングです!

 そこで、『SAVE THE NOON』のイベンターさんやNOONスタッフの陽平さんの協力も得て、手分けしてライブを撮影して、出演者の方々へインタビューを行いました。インタビュアーは頼んでいた人が当日来なくて、自分でやったんですよ、インタビューなんて生まれてはじめてだったんですが、ふだんの取材でライターさんが聞いてることを思い出しながら見よう見まねで聞いて、撮影しました。

 しかし、その後が大変でした。監督はおまかせする人ができたものの、プロデューサーなどの役割は自分がやることになった。勢いにまかせて映像を収めたわけですが、編集は宮本監督の担当として、公開はどうやるの?そもそも映画作るまでにお金ってどれくらいかかるの?という話になってくる。きちんと計算してみたら、とにかくびっくりするくらいお金がかかります。とくにコストが嵩むのは著作権使用料と出版権使用料。しかも、しっかり音楽を見せたいので、長い尺を映画で使うことになる。これだけで数百万円のレベルでした。もしかしたら別な方法があったのかもしれません。でも、自分はクリエイターだし、出演している人もクリエイターだから、この部分に関しては正式な手順でお支払いをしたかった。だから、かなり困りました。本来は撮影してから考えることではないのですが。

―― そこでクラウドファンディングを活用することになった。

佐伯:キックスターター(米)の存在を宮本監督が知っていて、クラウドファンディングをやってみようという話になりました。映像関係ならMotionGalleryがいいという話だったので、迷わず一択です。ただ、ページに載せる文章には本当に苦労しました。どうやったら伝わるかな?って、普段文章なんて書かないので、いろいろなページを見ながら試行錯誤を繰り返しました。並行して、画面に映ったミュージシャンひとりひとりに出演許可の依頼をしなくてはいけなくて、これもまた大変な作業。知り合いの紹介で連絡先を教えていただくところからのスタートでした。結局、クラウドファンディングをやろうと決めてから、始めるまでに3ヶ月くらいかかってしまった。


インタビュー頂いたこの日は、ヒカリエ8/にて、佐伯慎亮写真集『挨拶』の出版社である赤々舎さんのイベントも行われて居ました!

いいね!だけでは越えられない壁

―― 始められて順調に資金は集まりましたか?

佐伯:それが最初は全然ダメでした。胃がキリキリする毎日でした。facebookで「いいね」は集まるんですよ、シェアもされるんです。すぐに5000くらい「いいね」が入った。けれども、これが実際の参加者に結びつかないなんですよね。いいねをしてくれた人が、500円ずつ特典を購入してくれたら、250万円になるのになあ…。と思ったりしました。

 企業にも協賛を頼んだりしたのですが、法律に立ち向かう内容が難しい、ということで断られました。関わっていただいたミュージシャンの方にも「お金を集めているんで、協力してください」って、やっぱり言いにくい。 関わっている人達は多いけど、本気で「お金をください」って言えるのは、僕と監督だけなんだって気付いたときは愕然としましたね…。でもやるしかない。

 最初は地道に知り合いや家族、親戚にアピール、次に関西の雑誌の人にアプローチをかける。とにかく当たれるところは全部当たりました。戦略などはなく、がむしゃらでした。当時は、クラウドファンディングって言葉は、現在よりもさらに認知されていなかったので、「そもそも」の説明するところからだったのも大変でした。

1つのキッカケが大きなうねりを生み出した

―― そのつらい状況はどのように打破できたのでしょう?

佐伯:東京で「これからの音楽へ」というトークイベントを企画したのががきっかけで少しづつ注目が集まるようになっていったと思います。ここで、映画出演者の渡辺俊美さん(TOKYO No.1 SOUL SET)や金光さん、金光さんと一緒に裁判を戦った齋藤貴弘弁護士といっしょに登壇して、クラウドファンディングについてトークしました。このイベントの司会をお願いしていたのがジェームズ・ハドフィールドさんという編集者の方で、『Time Out Tokyo』にこのイベントの記事を書いてくれたんです。すると、その記事を見たという『Wedge』の編集長からWedgeのネット版の記事で取材の依頼をいただいたんです!当時『Wedge』の表紙写真を僕が担当していたこともあり、何か力になりたいと言って頂きました。これは大きかったですね。大阪で起きた事件だったので、なかなか全国へ発信することができず、歯がゆい思いをしていたのですが、一気に拡げることができた。

 それと時期を同じくして、自分が仕事をしている関西の雑誌『Meets』がインタビューのコーナーを1ページ割いてくれました。後から聞いたら「広告として載せるなら30万円以上する場所だよ」とのことだったのですが、とてもありがたかったです。そして、 同誌にコラムの連載をしている勝谷誠彦さんが記事を読んでくれて、ご自分のメールマガジンで取り組みを紹介してくれたんです。そこから、一気に40代、50代の方も参加してくれました。また、いとうせいこうさんがtwitterで何度となく取り組みを紹介してくれました。その結果、取材の依頼が一気に来るようになり、最終的には参加者が489名、そして400万円強ものお金を集めることができたんです。

―― 回り始めると勢いがつくんですね。

佐伯:本当です。あと4日間で終わる!というときにようやく目標金額の300万円に到達しました。さらに、残りの4日で100万円増えた。また、NOON弁護団の方々も個人的に出してくれたりして、本当にありがたかったですね。この映画って社会的な題材だったということもあり、コケてしまったら、それだけで自分たちだけでなくNOONの人たちにもご迷惑がかかってしまう。だから、予想以上にプレッシャーもありました。クラウドファンディングが終わった次の日から2日、39度くらい熱で寝込みました。

その後、全国25の劇場で公開され、のべにして2,000人以上の人が見てくれました。社会的な側面から見られがちな映画なのですが、音楽が本当にすばらしくよいので、爆音で上映できたらハッピーだなと思っています。そして公開の翌年、2015年1月21日に大阪高裁は地裁の無罪判決を支持し、検察の控訴を棄却する判決、つまりNOONの金光さんは無罪になりました。本当に良かったです。
(その後検察は最高裁に控訴。2016年2月現在、まだ最高裁からの返答は無い。15万筆以上を集めたLet's DANCE署名などの働きにより1948年に制定された風営法は改正が決定、新風営法は2016年6月より施行される。)


10時04分、無罪の旗を掲げるNOON弁護団の石垣弁護士。UPDATE Vol.44『4/25 NOON裁判 無罪判決レポート』から。

その渦のなかに積極的に巻き込まれていく覚悟

―― クラウドファンディングをやって、なにかご自身に変わったことはありましたか?

佐伯:自分のお小遣いは衝動的に使うことが多いのですが、みなさんから提供いただいたお金だから、とにかく使い方が丁寧になります。収支報告も早めに終え、映画館での売上から出演アーティストへのギャラも払えた。多くの人立ちに支えられていると、きちんとしなくてはならないと思います。

あと、すべてのクラウドファンディングをやっている人を、応援せざるをえない、しなくちゃいけない、せずにはいられない、そんな気持ちになりました。あんな辛いことをやってるというだけで、頑張れって言いたくなる。先日も、MotionGalleryで映画の制作資金を集めている人のページを見て、その書き込みを見て思わず特典を購入してしまいました。自分もそんなにお金に余裕があるわけじゃないんですが、同じような気持ちなんだと思うと、つい応援してしまうんです。

―― これからクラウドファンディングを始めようとしている人にメッセージをどうぞ。

佐伯:やっぱり覚悟も必要です、ということでしょうか。自分の場合は社会的な題材だったということもあり、プレッシャーも大きかったんですが、それだからこそ応援してくれる方も多く、拡がっていく勢いにすごいものがありました。その渦のなかに積極的に巻き込まれていく覚悟が必要です。自分のコントロールできない範疇のことも、受け入れられるくらいでいたほうがいいですね


遂に迎えたアップリンクでの初日の模様!UPDATE Vol.34 アップリンクでのトークショーから


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この記事を書いた人

MotionGallery編集部

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