ヤマケイ社員による「山小屋の思い出vol.6」を紹介します!
vol. 21 2020-06-22 0
小社社員はさまざまなかたちで山小屋でお世話になっています。そんな社員による、山小屋での思い出話をご紹介します。
第6回目は、社歴38年、広告部の林 弘文がお届けします!どうぞお付き合いください。
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三代で守り継ぐ、北アルプスの小屋と道
皆さん、こんにちは。1982年入社の林です。
社歴38年ですから、もはや長老の部類ですね。編集20年、広告12年、営業4年、管理2年と、いろいろな仕事をしてきましたが、おかげさまで公私にわたって山登りを続け、山小屋にお世話になったことは数知れず。それこそ1冊の本が書けそうです。
なかでも思い出深いのは、北アルプスの双六小屋です。
岐阜出身の私は、小学生時代を飛騨地方の上宝村(現在は高山市)で過ごしました。ヤマケイに入社して間もないころ、取材で双六小屋を訪ね、ご主人の小池 潜(ひそむ)さんにお話を伺ったところ、上宝村の動静にお詳しいのでびっくり。それもそのはず、小池さんはまさにその上宝村ご出身で、村内にはご親戚や友人がたくさんいらっしゃったのですね。潜さんは山岳写真家としても活躍中で、山と溪谷社から何冊も写真集を上梓されていました。東京に出てこられた際には、若手社員をまとめて食事に誘ってくださったり、と会社ごとすっかりお世話になりっぱなしです。
双六池の畔にたたずむ双六小屋。奥にそびえるのは鷲羽岳
そのご縁は、息子さんの岳彦(たけひこ)さんの代になっても続いています。2014年から小屋を継いだ岳彦さんは、小屋を改装したり接客や食事に工夫を凝らしたりと努力を重ね、その甲斐あって双六小屋は、山と溪谷2016年1月号で「泊まってよかった山小屋」第2位として紹介されました。
ある年の秋、友人たちと双六岳登山に出掛けた時のこと。メンバーにちょうどその日結婚記念日を迎える夫婦がいたのですが、夕食後に岳彦さんほか、居合わせた常連の皆さん全員にお祝いしていただきました。感激した二人はすっかり小屋のファンになり、その後も毎年、泊まりに行っているそうです。
心のこもった手作りケーキに感激しつつ入刀するS夫妻。右端が岳彦さん
またある年、小屋から下山中に、ちょうど道普請に出る岳彦さんたちといっしょになりました。長靴姿に重い金棒やツルハシを担いだ二人は、浮石をどかしたり足場になる岩を固定したりと手際よく作業しながら、軽装の私たちと変わらないペースで進みます。そのうえ「これはミヤマホツツジ、こっちのはネバリノギラン…」と、次々と高山植物の解説も飛び出し、私も同行メンバーもすっかり舌を巻いてしまいました。
じつはこの道普請、岳彦さんがこだわっている作業のひとつ。山麓の左俣林道から鏡平を経て双六小屋へと続く小池新道は、小屋の開設者である祖父・義清(よしきよ)氏が切り拓いたもの。弓折岳と抜戸岳を結ぶ稜線の東側にトラバース気味に徐々に高度を上げながら続く小池新道は、危険個所や急勾配が少なく、登山初心者でも安心。しかも稜線に出れば百花繚乱と、人気のルートです。それだけにメンテンスには気を使っているといいます。
小池新道途中の休憩ポイント・秩父沢。しっかりした橋がかけられている
この小池新道に限らず、登山道の多くが山小屋スタッフの人力で維持されているのが実情です。高山植物や風景のすばらしさを愛で歩きながら、そんな皆さんの苦労にも思いを馳せたいですね。
広告部 林 弘文
38年の社歴のなかで、編集、広告、営業、管理とほとんどの部署を経験、今は山小屋運営にもかかわっている。縦走登山を中心に、キャンプ、スキー、フライフィッシング、自転車、カメラ、オーディオなど多趣味だが、どれもなかなかレベルアップしないのが悩み。
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山小屋の思い出、また紹介していきます。
引き続き、よろしくお願いいたします。
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