ヤマケイ社員による「山小屋の思い出」を紹介します!
vol. 5 2020-05-25 0
小社社員は日ごろより、さまざまなかたちで山小屋でお世話になっています。
そんな社員による、山小屋での思い出話をこれから少しずつ紹介していきたいと思っています。どうぞお付き合いください。
第一回目は、入社7年目、山と溪谷編集部の伊藤洋平がお届けします!
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やさしさが心にしみる、北アルプスの穴場
こんにちは。月刊誌『山と溪谷』編集部の伊藤です。
これまでに取材でもプライベートでもたくさんの山小屋さんにお世話になってきました。
入社以来7年、山と溪谷編集部ブログで公私混同した情報をひっそりと発信してきた僕ですが、今回は船窪小屋をテーマに「山小屋の思い出」を紹介させていただきます。
高瀬湖(高瀬ダム)を挟んで槍ヶ岳を望む。このアングルが見られるのは七倉岳の登山道ならでは?
それは入社2年目の夏。
6人の同期のうち男3人で、北アルプスの七倉岳の登山計画を立てました。1人がその夏で退職することになり、「最後にどこかに一緒に登ろう」というのが建前でしたが、個人的に「針ノ木岳~蓮華岳~船窪岳~烏帽子岳」の縦走登山を狙っており、その下見にちょうどいいなと利用、ではなく提案した山行でした。
七倉岳周辺は、後立山連峰の最南部とか、北アルプスの中央部などと呼ばれることもあり、何連峰と呼べばいいのか、やや曖昧。登山の起点は「裏銀座」と同じく七倉山荘ですが、裏銀座に比べると登山者の少ないマイナーコース。とはいえ、七倉岳山頂直下に立つ船窪小屋は、いまだにランプと囲炉裏を使った昔ながらの山小屋として知られ、船窪小屋を目当てに訪れる登山者でシーズンはにぎわいます。
船窪小屋まで「登り6時間」という長丁場も男3人なら問題ないだろうと思っていたものの、容赦ない日差しと樹林帯の蒸し暑さもあって1人がバテてしまい、コースタイム以上の時間をかけてゆっくり登ったのでした。急登続きの道中に疲弊していましたが、そのぶん森林限界を超えて稜線に上がり、船窪小屋が見えたときの感動はひとしお。
小屋に近づくにつれ、「カン、カン、カン」という金属を叩く音が聞こえ、小屋の前に到着すると「お疲れ様でした!」とスタッフの方が温かいお茶を持って出迎えてくれました。
そして先ほどの音は、小屋の入口に吊った鐘を僕らに向けて鳴らしていたものだとようやく気づいたのでした。温かな歓迎はとてもうれしかったものの、じつは僕らは小屋泊ではなくテント泊の予定。
「ごめんなさい、テント泊なのでお茶は受け取れないです」と辞退しようとすると、「いいえ、ここでは登山者全員にお茶を出しているので、ぜひ召し上がってください」とやさしい言葉をかけてくれました。あのときのお茶は本当においしかった。
船窪小屋のシンボルでもある鐘。登山者が近づくと歓迎の音が鳴り響く
その後、指定地にテントを設営し、気ままに時間をすごしました。翌日は早起きして日の出のタイミングで七倉岳の山頂に登り、風景を堪能。太陽が昇りきったころ、そろそろ下山しようと歩き始めると「おーい!」という声。船窪小屋のほうに目を向けると、スタッフの方々がこちらに向かって笑顔で手を振ってくれていました。手を振り返し、小屋に戻ると「ずいぶん長いこと山頂にいたね、いい景色は見られた?」と声をかけられ、またまたびっくり。真っ暗なうちから山頂にいた僕らに気づき、ずっと見守ってくれていたそうです。
小屋泊でもテント泊でも分け隔てなく、終始、親切に接してくれた船窪小屋のみなさん。おかげで送迎登山と下見の目的を果たしただけでなく、記憶に残るとても楽しい登山になりました。ただ、やっぱりテント泊だと若干の後ろめたさが……。
後日、この話を友人にしたところ、友人は小屋泊で七倉岳に登り、「とてもすてきな経験ができたよ」と小屋での写真をたくさん送ってくれました。
なぜ、あれから時間をあけてしまったのか。登りたいときに登れないというのはもどかしいもの。この騒動が落ち着いたら、今度こそ小屋泊でおじゃまします。
七倉岳の山頂付近から見た船窪小屋。スタッフの方々が手を振ってくれた
山と溪谷編集部 伊藤洋平
2014年より山と溪谷編集部に配属。美しい景色は見られるけど技術的難度は低い、そんな雪山が好き。思いつきでさまざまな山域に足を運ぶが、近年は信越の山に惹かれている。
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4000人以上の方々からご支援いただきました!
公開から1週間が経ちました。本日5月25日16時現在で4100人以上のご支援が集まっております!ご支援いただいたみなさん、情報を拡散してくださったみなさん、本当にありがとうございます!お気持ち、しっかり届いております!
みなさまのお名前や応援メッセージなどは「山小屋エイド基金」公式サイトの「コレクター」というページ(こちら→https://motion-gallery.net/projects/yamagoya-aid/collectors)に随時更新されています。ぜひご覧になってください。
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