【期間限定エッセイ】 やまだのまんま
vol. 3 2014-05-13 0
アルバム制作キャンペーン期間中、山田の素顔を知ってもらうための、本人書き下ろしエッセイを不定期に公開。是非、こちらも読んでいただき、山田の音楽への思いやルーツを感じていただけましたら幸いです。
言葉で伝えるよりも、唄う方が早い。
私にとって、音楽とは、唄とは、そういうツール。
今の私の容姿からは想像し難いとは思うのだけれど、幼い頃の私は、もやしっ子を絵に描いたようなヒョロヒョロ男子で。声も高くて、ナヨナヨしていて、周りの生徒の“標的”になる材料は全て揃っていたように思う。子供特有の、素直さと表裏一体な残酷さの餌食になり、私はあと1歩で登校拒否をしそうな少年時代を送っていた。
物心がつく頃に誰かに虐げられる経験をするというのは、どうやら人の心を曲げてしまうらしく。中学校に入ったばかりの私は、子供ながらに自己否定の念を抱いていた。私には何も無い、特技なんて1つも無い、そう思っていた。しかし、そんな私を変えたのがカラオケとの出会いだった。
元々音楽が好きだった。音楽を音楽と認識出来るようになってからは、ずっと。家族全員が音楽好きで、楽器の音が家に溢れていて、音楽を好きになることに1ミリの障壁も無かった。中学校に入り、それまでと変わらず内気でヒョロヒョロしていた私が、初めて人前で唄うという、いわば大冒険を初体験したのがカラオケだった。自信も無いまま、耳に馴染んでいたJ-POPのヒット曲を入れ、友人たちの前で唄ってみる。すると…
「山田くんって、歌上手いんだね!」
嬉しかった。生きていることを初めて認知された透明人間の気持ちというか、自分が居ることに初めて気付いてもらえたような感動があった。中学生である私はとても単純で、「歌上手いんだね」という言葉が、「歌手になれるね」という意味にさえ聞こえてしまった。その瞬間、殻が破れた。
中学生の脳内で築き上げられる、歌手としての華々しいデビュー物語。今考えると、本当に単純で過信だらけだったなと。これを書いている31歳になった今も、夢の半ばでもがいているとは考えもしなかった(苦笑)でも、その夢だけが、私をここまで生き長らえさせ、ここまで歩かせてきたように思う。その点では、中学生で夢を1つに絞って歩き出した私を褒めてあげたいと思う。
高校生になり、私の夢はさらに加速。内気だった頃の反動で、自己表現への欲求が溢れ出した。オーディションに応募し、駅前での路上ライブを始め、驚くほどに外向的になった。私は、とにかく私を見て欲しかった。山田尚史という人間が、ここに生きていて、歌という特技を以て表現している、それを沢山の人に見て欲しかった。私の唄の原点は、生存表明だった。
(続く)