地元で音楽でしがみつき得たつながりと喜び/参加アーティスト紹介[2]アベマンセイ
vol. 5 2020-12-13 0
いわきの美しい海岸線をモーターパラグライダーで飛行し撮影したDVD『かもめの視線』の音楽を担当するいわき出身いわき在住のギタリスト、アベマンセイさん。これまでに出されたDVD4作すべてにおいて、映像に寄り添った素晴らしい書き下ろしのオリジナル曲を聴くことができます。その演奏を一言で表現するなら「ハートフル」。どんなに激しいストロークを奏でる時も、そこには聴く人への愛が満ちているように感じます。
生れて初めて手にしたギターはアコースティック。ギターにエレキやアコギの違いがあることも知らなかったと笑いますが、B'zやビーイング系のアーティストに憧れ、そのサウンドをなんとかアコギで再現しようと奮闘したことが、結果としてギターの腕を磨くことにつながりました。小遣いを貯めて買ったエレキを手にバンドを組み音楽に没頭した高校時代を経て、国内一線級のミュージシャンが講師を務める東京の音楽学校メーザー・ハウスに新聞奨学生として入学。全国から集まったミュージシャンの卵たちに混じってさらに腕に磨きをかけます。
卒業後はソウルやファンクを聞かせる六本木の店のハウスバンドでギターを弾きプロの道を歩み始めたマンセイさん。しかし、上京以来奨学生として新聞配達をしながら音楽と向き合ってきた体と心は限界に達し、体調を崩してしまいます。東京で音楽を続けたい想いを抱えながらも2004年に帰郷。その後の3~4年、ほとんど人前でギターを弾くことのない「空白の時間」を過ごしました。
しかし、その時間はマンセイさんにとって、東京とは違う新たな場所で音楽の糸を手繰り寄せるために必要な時間だったのかもしれません。自宅で、バイト先の休憩室で、とにかく彼はギターばかり弾いていたと言います。2008年、インターネットで偶然見つけたいわき市・Bar Queenでのオープンライブ(演奏したい人がプロアマ問わず参加できるライブのこと)に参加したことがきっかけで再び人前でギターを弾くきっかけと出会いを得て、以後いわきの音楽シーンで活躍。『かもめの視線』への楽曲提供を経て、今ではいわきにとどまらず県内各地でアーティストのサポート活動やソロ活動を展開しています。2019年にはソロ名義で配信リリースしたインストゥルメンタル曲「Donut Hole Rhapsody」が全世界で20万ストリーミングのヒット。いわき産の音楽が世界に響きました。
「なんとか音楽にしがみついて生きてきました。」
自らの音楽人生をそう語るマンセイさん。もしあの時あのまま東京にいたら今頃どんなギタリストになっていたか。しかし、たとえ成功していたとしても、地元にいるからこそ生まれるつながりと、そのつながりから感じる喜びや幸せはきっと得られなかった。そんなふうに感じながら、彼は音楽とギターが持つ可能性に今日もしがみつき、新しい音楽の創造に挑んでいます。
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