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ドキュメンタリー映画 『ロンガの海』 公開をクラウドファンディングで実現!

3世代にわたる戦争の傷を見つめる
ドキュメンタリー映画 『ロンガの海』 公開支援プロジェクト

『ロンガの海』は、取材から26年の歳月をかけて完成しました。本作は、2026年秋、[東京]ポレポレ東中野での公開が決まり、全国各地での上映、海外の映画祭への出品を目指しています。公開のためのご支援をお願い申しあげます。

コレクター
205
現在までに集まった金額
3,051,000
残り日数
5
目標金額 3,000,000 円
このプロジェクトでは、目標達成に関わらず、
2026年9月15日23:59までに集まった金額がファンディングされます。

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PRESENTER
小西 晴子

『ロンガの海』の監督です。本作は、取材から26年の歳月をかけて完成しました。全国各地での上映、海外の映画祭への出品を目指しています。どうぞご支援をお願い申しあげます。 【小西晴子プロフィール】 2005年、戦下のイラク市民を描く「Little Birds」(綿井健陽監督)を企画。ロカルノ国際映画祭人権賞を受賞。10年後「Peace on the Tigris」(綿井監督)を製作し、FIPAのYoung jury awardを受賞。2015年東日本大震災からの再生を描く「赤浜ロックンロール」を監督。2025年、「祖父への旅」(NHK BS/NHK World)で、ギャラクシー賞奨励賞を受賞。

「ロンガの海」までの26年:その⑫英雄か弾圧者か

vol. 23 2026-09-09 0

ドキュメンタリー映画「ロンガの海」にご支援を賜り、あらためて御礼申しあげます。9月15日のクラウドファンディングの終了まであと6日です。カウントダウンを盛り上げるため、「ロンガの海までの26年」のコラムの配信を、本日は公開でお届けさせて頂きます。引き続き、「ロンガの海」を広めるため、仲間になって頂けますと幸甚です。ご支援者さまには、①~最新のコラムをPDFにしてお届けさせて頂きます。

 

1947年、オランダの総攻撃
日本軍の撤退後、1947年7月、オランダはインドネシアへの総攻撃を行った。航空機、戦車、装甲車など近代的な重装備と約12万人の兵を投入。対するインドネシアは、ゲリラ戦を展開。石油施設、鉄道、橋、工場、ゴム園、都市の建物を自ら爆破、放火し、オランダ軍にインフラや経済資源を渡さないための焦土作戦で必死の反撃を行った。
しかし、圧倒的に戦力に勝るオランダ軍は、首都ジョグジャカルタの北部を占領し、スマトラでは、メダンやパレンバンなどの要衝を占領。インドネシアは、国の壊滅寸前まで追い詰められていた。


パンカラン・ブランダンの「焦土作戦」
8月、オランダ軍がメダンの西20キロにある、パンカラン・ブランダンの石油精製所奪還に向かっていた。 パンカラン・ブランダンは、インドネシア初の石油精製所で、ロイヤル・ダッチ・シェル発祥の地でもある。1892年の操業開始後、シンガポールやマレー半島、日本、中国、オーストラリアへ輸出を行い、オランダ領インドネシアの発展を支えた。オランダの侵攻に対して、インドネシア軍がとったのは焦土作戦であった。石油は、戦車やあらゆる種類の軍用車両の燃料となるため、敵の強力な拠点になるより焼き払ったほうがいいとの方針だった。

有名なジャーナリストのムハマド・トク・ワン・ハリアは、パンカラン・ブランダンの焦土作戦を目撃している。「オランダ軍がベランダンの油田を奪還しようとした時にも、黒岩は大きな貢献をした。多数の爆弾がケーブルで連結され、1947年8月13日の夜、オランダ軍が奪還を試みようとした瞬間、決められた時刻に爆発した。黒岩と、焦土作戦の任務に就いていた将校たちが、まさにその時に作戦を実行した。その漆黒の夜、激しい爆発音が響き渡り、炎と煙の塊が夜空を照らし出した。この焦土作戦によって、オランダ軍はパンカラン・ブランダン油田の占領に失敗した」。『BELANDA GAGAL REBUT』

燃えるパンカラン・ブランダン(1947

 

マリオは、ヘンドリとハディジャを連れて、パンカラン・ブランダン石油精製所跡地を訪ねた。この施設は、語り継がれるべき偉大な国の歴史遺産として保存されており、製油所の折れ曲がった塔が、76年前の爆発のすさまじさを物語っている。
爆破前日の1947年8月12日、インドネシア軍は軍用列車やトラックを総動員し、半径3キロメートル以内の全住民を事前に強制避難させた。そのため、被害を最小限に抑えることができた。しかし、製油所、貯蔵タンク、公共施設、住宅地が完全に灰燼に帰し、街は3日3晩燃え続けた。

塔の前に建てられた石碑には、「たとえあなたの命が失われようとも、国に貢献したことを忘れない」と書かれていた。敵の侵入を防ぐための作戦中、爆発に巻き込まれ、多くの戦士が、自分を犠牲にしたと、母のエマからヘンドリは聞いていた。しかし、小学生の頃、「お前の日本人の父親のせいで町が破壊された」といじめられ、ここに来て泣いたという。

 

石碑の前で父のことを語るヘンドリ

 

毎年8月13日は、独立を勝ち取った戦いの一つとして、「焦土作戦記念日」が開催され、地域はお祭り一色になる。幼稚園児の行進や、高校生、はては妊婦の行進もあって、住民には楽しいお祭りだ。2023年、黒岩一家、ヘンドリ、ハディジャ、マリオは、モハメド・アリの子孫として、「第76回焦土作戦記念日」式典に招待された。

 

お祭りを楽しむヘンドリ黒岩家族

英雄モハメド・アリはインドネシア人
国歌インドネシア・ラヤ斉唱の後、州知事の祝辞で式典が始まった。「英雄たちに黙祷を捧げましょう」との州知事の号令で全員が黙祷を捧げる。そして、「焦土作戦の歌」を合唱し、各界からの祝辞が続く。
「パンカラン・ブランダンは歴史の街であり、国の英雄の発祥の地です」という司会の言葉に続いて、英雄の名前が読みあげられる。この作戦を実行した英雄としてモハメド・アリの名前も読み上げられた。マリオは、モハメド・アリが日本人の黒岩通であることを紹介してほしいと主催者に依頼していた。しかし、インドネシア人のモハメド・アリが、日本人の黒岩通であることの紹介はなかった。

式典では、独立戦争の演劇があった。日の丸の鉢巻きを巻いた日本兵が、インドネシア人を殴る蹴るの横暴を働き、インドネシアの独立戦士がその日本兵を倒すという内容だった。日本人が独立戦争に参加したと言えないのは、過酷な侵略者という日本軍のイメージが、地元に根付いているためではと思われた。

日本軍の住民への横暴が演じられている劇

 

アチェからメダンに大砲を持ちこんで参戦した黒岩通
なぜアチェにいた黒岩が、メダンで戦ったのか。その理由を、独立軍の少佐ヌクム・サナニーが、書き残していた。

「黒岩は、日本軍時代、情報将校としてまた特殊部隊の指揮官として活躍した。インドネシアに残ることを決めた後、黒岩は名前をクチ・アリに変えた。アチェ語でクチは村長を意味する。クチ・アリ側には、樋口とシミズもいた。二人とも新しい名前ルスリー樋口とムハンマド・シミズという名前をもっていた。
黒岩は、メダンの戦線から援軍の要請の目的でやって来た私を快く迎え入れた。まるで兄が弟の訪問を受けるように。私はすぐに、大砲部隊の武器と装備、熟練した人材の援助を要請した。クチ・アリは、十分な装備を準備し、ルスリー樋口とムハンマド清水を特別連隊の大砲隊員として伴い、プシンド部隊を率いて参戦することを約束してくれた。1946年12月1日、私たちは双眼鏡や通信機器を含む大砲部隊の装備一式と、弾を積んだトラックで、メダンに向けて出発した」。『Pasukan Meriam(砲兵部隊)』(ヌクム・サナニー著)

アチェから持ち込まれた大砲

 

アチェで武器の製造、大砲が作られていたこともわかった。「パンカラン ブランダンの焦土作戦の後、武器工場の建設が急速にアチェ全土で進められた。1948年に入ると、ロンガの兵器工場は数種類の武器の生産を開始し、日本軍が残したすべての大砲の修理にも成功した。そこには、防空砲、山岳砲、対戦車砲の使用と制御の訓練をする元日本兵がいた」。『Pasukan Meriam(砲兵部隊)』

謎につつまれた黒岩の姿が、パズルがひとつ解けていくように歴史の中から立ち上がってくる。私は、興奮を覚えていた。


ルスリー樋口の手記にある黒岩「親オランダ派を弾圧」
私は、ルスリー樋口の手がかりを探した。「ロンガの日本人」というタイトルに書かれた手書きの手記が、福祉友の会の月報に残されていた。

「アチェ軍政部に特別警察なる組織があり、機動警察的な任務を、治安と情報の収集を目的としていた。残置スパイの摘発、限られた局地的治安異常には実力行動をとる警察の役をしていた。この隊長に黒岩通氏がいた。彼は、占領下の諜報と、闇の横行や、隠匿物資による流通の阻害に注意し、親オランダ分子とその第5列とみられる人物に対して、強硬手段を用いて弾圧していた。隊員の軍規も義勇軍に勝るものであった」(樋口修氏手記 No.99月報)

「黒岩氏は、台湾の出身で、中国南支那の南寧作戦に現役で従軍し、原隊復帰後、台湾の南方作戦研究所に勤務しており、そこでシンガポール作戦の馬奈木敬信の知遇を得た。その関係と思われるが、シンガポール陥落後、アチェ州軍政要員として、コタ・ラジャに送り込まれ、特別警察隊長となった。彼の特別警察は有名になり、土地の人々は『特別』と言っただけでも通じた。MP(憲兵)と同じか、それ以上に恐れられた。
隊員の選抜に工夫がなされ厳選された。一芸に秀でたもの、飛び抜けた技量のものが優先された。例えば、ボクシングの選手、サーカスの曲芸のできる男、また、特に、服役中のスリや泥棒で、特にその技能のあるものを引き取り、警察官の中から射撃の上手者を特に訓練して超一流の射撃者に仕上げた。隊員の服装も、特命ある場合以外は平服着用で、制服は儀式のある場合しか着せなかった。命令は絶対で、命令を守るために命を捨てることは当たり前で、命令を守れぬものは死刑になっても仕方ないと云った規則を守り、規律を徹底させた。その代わり、給与と食事は、公務員の中でも最高に高いものが与えられ、隊員の自負心も高く、軍部より高い評価が与えられていた。 ウルバランやオランダ側からすれば、最もいやな奴であった。それで、終戦後は戦犯のトップに挙げられ、自身もそれは十分覚悟していた」。(樋口修氏手記 No.100月報)

私は、この手記に目を奪われた。パンカラン・ブランダンでインドネシアの独立のために前線で戦う黒岩通と、親オランダ分子を弾圧する黒岩通。黒岩通は、治安と情報の収集を目的とした別班(公安)だったのだろうか?

 

「ロンガの海」までの26年:その⑬に続く

 

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