阿部慎一郎(レティクル座)&鵜濱咲紀(ZANNEN座)両劇団主宰インタビュー!
vol. 14 2023-05-17 0
レティクルZANNEN座『バンク・バン・レッスン』
阿部慎一郎(レティクル座)&鵜濱咲紀(ZANNEN座)両劇団主宰インタビュー!
──まず、今回の合同公演を行うことに至った経緯について、少し説明していただけますか?昨年の5月に萬劇場の企画で一緒になったのですね。
鵜濱:はい、そうです。昨年の5月にリモートで会議をして、それから親交が始まったと思います。うちの劇団員のみきは、コミュ力の鬼でして、ZANNEN座の外交官なんです。みきの声掛けで、萬劇場の参加も今回の合同公演も決まりました。
──萬劇場で行われた短編集について詳しく教えてください。
鵜濱:その短編集では、各ステージ3つの団体が30分ずつの作品を出し合う形式でした。特にZANNEN座はレティクル座さんの作風に惹かれました。楽屋のモニターで公演中にも関わらず、劇団員の石原友佳は自分の出番ギリギリなのに、レティクル座が始まるとモニターの前に駆け寄って見ていました。
私たちは本当に一緒にやりたいという気持ちが強くて、みきを筆頭にうちのYouTubeに出演してもらえないかとレティクル座さんにガンガンアプローチをかけ行きました。気づいたら何かね、一緒にやっているみたいな感じですね。(笑)
──ぶっ飛んでる発想力と創造力を持った小道具の使い方について教えてください。劇団内でも手作りの小道具を使っているそうですね
鵜濱:私たちは100円ショップのものを使って小道具を手作りすることが好きなんです。ある時、桜の道を転げ落ちるシーンを演出したかったんですが、生身の人間が舞台上で坂道を転げ落ちることは難しかったんです。そこで、布に桜の花びらをたくさんつけて、棒をつけたぬいぐるみを転がすという表現方法を思いついたのです。これは劇団内でも評判が良かったんですよ。
──なるほど、その発想力とアイデアの形を具体的に作り上げる方法がツボにはまったのですね。
阿部:鵜濱さんの作品は、ちょっとシュールな要素もありながら、ハートフルな部分もあって、僕はそれを両立するのは難しいと僕は思ってます。どちらがメインのお芝居なのか、バランスを取るのは難しいですが、ZANNEN座さんはそれを上手くやっていて、面白かったです。
──おっしゃる通り、笑いと感動を両立させるのは難しいですよね。両方を取り入れることで、観客を温かい気持ちにさせたり笑わせたりしたいということですね。振り切った先にも感動があるということについてもお話いただけますか?
鵜濱: レティクル座さんの作品は、笑いに振り切っているところが好きです。笑いを振り切った後でも、最後には何か感じるものがあります。笑ったおかげで体の体温が上がっている感じが良くて、時々、笑いながら泣きそうになることもあります。笑いを振り切っているのに、それ以上の感動があるのは本当にすごいと思います。
──振り切った笑いと感動を両立させるのは難しいと思いますか?
鵜濱 笑い
とほっこりの両立を狙っていくと寒くなっちゃうのですよね。「両方取りに来たな」って感じでいやらしく見えちゃうんですけど、レティクル座さんはそんなことなく。
実際お芝居でもあったんですよ。サウナの温度が熱すぎて、メーターが飛び越えて、温度計が割れるっていう芝居が。しかもその温度計を役者が生身で演じていて。まさに振り切った笑いを感じました。
レティクル座「バトルサウナ―城崎」より
──作品についてお話しいただけますか?
阿部: 例えば、ビニールボールに棒を突き刺して浮かすとか、そういうアイデアが出てきますね。(笑)
レティクル座「バトルサウナ―城崎」より。
※右の物がビニールボールに棒を突き刺した物。通称「手汗玉」
作中ではこれを使って戦う。
鵜濱 お客さんが納得してくれれば、舞台を宇宙空間にすることも原始時代に一瞬で行くこともできます。演出や舞台セット、役者の演技、音響照明など、私たち演出は何を選んで成立させていくかを考えます。ただし、成立させきれなかった場合はただ寒いだけです。成功しているときはかっこいいと思います。阿部さんの演出は面白いチョイスがあって、さらに成立していてほんと凄いですよ。
阿部 最近書いた未発表の作品だと効果音などもちゃんとト書きに起こしてきめ細かく決めて書いています。どちらが面白いかは作品によるところがあるかなぁ。
──コロナ禍による影響についてお聞きします。演劇に関わる立場として、コロナはまだ収まったのか、と感じていますか?また、劇団の活動にどのような影響がありましたか?
鵜濱 コロナの影響はかなり長引いた印象があります。1年間はオンラインでの活動に限定していたり、YouTubeやラジオドラマを強化したりしました。うちは劇団員が5人在籍しており、そのうち2人は北海道と福島に住んでいるため、遠距離での活動も行っていました。リモートでの活動もありましたし、コロナ禍での舞台の実施は2年目や3年目から少しずつ再開していきました。クリエイターとして、コロナにどのように対処していくかを考える期間でした。
阿部:レティクル座は今年で12年目を迎えましたが、コロナ禍で劇団に関わってくれるメンバーや作品は変化しました。個人的には「無隣館」に通い、豊岡で合宿や演劇の学びを経験しました。また、今は劇団鹿殺しの演出部に所属していて準劇団員として、テクニカルや傾向などを見て幅広く勉強する機会も得られました。コロナ禍以前に比べて確実に僕の演劇の価値観は変わったと感じます。
──最初に『バンク・バンレッスン』の台本を見た感想というのはお互いにどんな感じでしたか?
鵜濱:実際に稽古して思ったのですけど、「ただの茶番劇じゃないぞ」と思いました。さすが高橋先生だなぁ、ちゃんと台詞のニュアンスや、やり取りとか関係性とかをちゃんと出さないと、本当に面白くない作品になってしまうんだなぁっていうので…恐れ入りました!
阿部:最初は銀行強盗の訓練のお話なんですけど、途中から役者の独白で付け足し付け足しの設定が出てきてインプロっぽくなっているんですよね。コメディから抽象的な作風に変化していって最初と最後で作品の印象も変わると思います。最初、僕はその展開が急でついていけなかったんですけど、「このバランスをどう取るか」っていうのにやりがいがあるなと思いました。
鵜濱:そうそう、破綻もしているし、作品の中で言ってることが異なるし、ちょっと不条理に近いというか。
阿部 そう。難しいですよね。具現化っていうか、きちんとこの台本を表現していくのが。笑いのポイント的なものを作ってそこは面白さも担保しつつ、ちゃんと上演作品として整理していきたいと思うかな。
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レティクルZANNEN座合同公演
「バンク・バン・レッスン」
脚本 高橋いさを 演出/鵜濱咲紀 阿部慎一郎
キャスト
【ZANNEN座】
鵜濱咲紀/石原友佳/みき
(以上ZANNEN座)
冨田恭子(ネクストタレントプロモーション)
とみおかきつね
三井伸介(BIG MOUTH CHICKEN/劇団虚幻癖)
山口峰範
鷲見亮
【レティクル座】
鈴木拓也
(以上レティクル座)
荒波タテオ(popchicfactory)
佐藤昼寝(昼寝企画)
鈴木玲
中陳剛佑
中村つぐみ
ボス村松(劇団鋼鉄村松)
まちだまちこ(メロトゲニ)
スケジュール
2023/5/25(木)〜2023/5/28(日)
25日(木) ※15:00~(Z)/19:00~(Z)
26日(金) ※15:00~(R)/19:00~(R)
27日(土) 14:00~(R)/19:00~(Z)
28日(日) 13:00~(Z)/18:00~(R)
Z→ZANNEN座 R→レティクル座
受付・開場は開演30分前
※公開ゲネプロはリハーサルになります。
劇場
小劇場楽園
〒155-0031
東京都世田谷区北沢2-10-18 藤和下北沢ハイタウンB棟地下1F