MURAOKAさんにロングインタビュー!!
vol. 12 2021-09-14 0
まちとひととをつなぐ芸術プロジェクト Circleよりお知らせです。
公開パフォーマンス&収録まであとわずか!!
今回はMotiongallery をご覧の皆さまに向け、MURAOKAさんとロングインタビューを実施しました。
他ではなかなか聞くことのできないMURAOKAさんの思い、是非ご覧ください。
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(聞き手:制作チーム)
…1週間前、制作チームに粗通しの動画を共有いただきました。幻想的な雰囲気もあり、かつ生身の肉体の躍動感が感じられ、素晴らしいパフォーマンスでした。1週間経ち、何か変わった点はあるでしょうか。
MURAOKA:作品の流れはそれほど変わってはいませんが、どちらかというと、通した中での全体的な体力バランスをみています。アクロバットをやる上では絶対に必要なことです。
粗通しで得た体感から、体力的な最大限を発揮できるよう、技を選んでいます。あとは全体として似たような振付・構成になっていないか確認しています。また、振り付けを考えながらアングルも考えたり。
本番前なので、体の調子をみながら寝る時間や食事なども神経質に気をつけたりしています。
…作品づくりについて伺います。公演地の小鹿野町で鹿に出会い、手を伸ばしたらその鹿が離れていった、ということにインスピレーションを受けたと以前伺いました。MURAOKAさんのやり方として、いつもストーリー・コンセプトを固めてから構成を考えるのでしょうか。
MURAOKA: まず、作品づくりについては、内容が一切伝わらない人に対しても面白くないといけません。お子さんについても、100%内容が伝わり切るわけではないと思います。人によって感じ方も違います。なので、視覚的に面白いかどうか、という要素が絶対的に必要だと考えています。
他のショーやパフォーマンスで時間枠を与えられた時には、自分に選曲の権利があるのであれば、まず曲を決めます。曲を決めたときに絵が浮かんでこないとだめで、公演の中でも重要なシーンの絵が、好きな映画をみてシーンが蘇るように・・・印象的なカットが思い浮かぶようでないとだめだと思っています。
それを元に世界観が固まったら、多少その世界観が崩れてもいいのでパフォーマンスを構成していき、最後に調整する、というやり方をとっています。
…共感覚*のようなものを元に作っていらっしゃるんですね。芸術的な感覚を持つ方は共感覚を持っていると聞きますし、動画を作る時にMURAOKAさんは「音にはめる」ということを意識していらっしゃると伺ったことがありました。
ちなみに、衣装についてはいかがでしょう。いつもご自身でデザイン・作成されている印象がありますが。
MURAOKA: 少し変えますが、本番もチラシと同じ衣装になります。
...衣装に関してはどのように発想されるのでしょう?
MURAOKA: 今回に関しては「間違いないものを」という考えで作りました。うるさくなく、衣装が一人で説明しないという感じ。できるだけシンプルに・・・なのですが、自分の場合好みでひらひらした部分をつけるのはこだわりですね。
…そのこだわりはなぜでしょう?
MURAOKA: そこのシルエットが自分の目に浮かんでいるというか、回転したときに「ひらみ」があり、アクロバット映えするんです。「手足が長く見える」と一緒で、アクロバットの動線が見えやすくなる。軌道の残像が残ってわかりやすい。
逆にそういうのをつけないときもあって、肉体そのものを見せたい時です。演目によりますが・・・。
…今回は肉体ではなく、動きの軌道を見せることがメイン、ということですね。
MURAOKA: そうですね。あとは世界観に合わせているのもあります。ひらひらをつけたり、袖を破いたりしてできるだけ非日常感をだしているのはあります。
…Tシャツをベースにした衣装なので、チラシを見た段階でも、また通しの動画を見た時にも「普通の服を着た普通の若者」の話とも取れましたし、衣装のシルエットやパフォーマンスによって、森と同化している印象も受けました。
MURAOKA: 森と同化している感じは出したかったです。肩の筋肉を出したいと思って袖は少し破こうと思ったんですが。パフォーマンスの中身で言えば、舞台に立っている人間はMURAOKAであり、そうでもないと考えています。劇中劇のような感じです。
…演出でいうと、ティーザー写真や動画でも、鹿のパペットと額を当てたり見つめたりしている様子が印象的です。額を当てる、というのはどのようなニュアンスなのか、伺えますでしょうか。
MURAOKA: いろんな動物が鼻と鼻をあわせて挨拶しますよね。それに近い感じです。カモシカの、動物のやり方に寄り添っているんです。関係性で言えば友達、「同じ」というレベル。カモシカの目線に立つということです。人間のほうが強いから、人間のやりかたではなくカモシカに歩み寄る。
…同等なんだけどちょっと弱い相手、というような?
MURAOKA: 友達だし、・・・.あのパペットに対しては信頼している、という気持ちです。野生の動物と額を合わせることは無理だと思うんですよ。でも、野生の動物とあんな風に触れ合えたら素敵だよね、と。平和な描写です。今回テーマとして描いているのは動物と人間との共存。
例えば私の家に猫や犬がいて、私がちょっかいをだしたら動物も引っかいたりしますよね。でも動物は赤ちゃんにはそうしないんです。弱い相手だ、と動物もわかっているんですね。
人間は欲が強いから、動物からすれば怖い存在、よくわからないもの。怪獣みたいなものだと思うんです。動物が優しいなら、人間も歩み寄っていかないとだな、と。
…パフォーマンスの構成についても伺います。お手玉、棒術、倒立、アクロバット、ダンスと色々な要素が混ざっていますね。沢山のものを取り入れているのはなぜでしょう?
MURAOKA: エンターテイメントとして、お客様に飽きずに楽しんでもらえるように、ということがまず一つ。ジャグリングはずっとやりたかったことで、今回も取り入れています。あと、倒立は美しいから好き。まず、倒立を肩を入れないでやる、というのは成立しないんです。身体が美しくないとできないし、とても難しい。人間としての身体のバランスが凄く整っていないとダメなんです。爪先や体がきれいで、ボディラインを見せる技。
ぱっと見てすごいですし、普通の人にはできない。自分の好みですね。見ていて好きです。
1点を目指してバランスを取るという、ダンスのピルエット(回転)に 近い要素もあるんですが、そもそも倒立は筋肉の量が違う。人間にとっては悪い姿勢をとっている。背骨もS字ではなくまっすぐでないと成り立たない。身体には悪いことをしているが、究極の場所を目指しているのが好きです。
…しいたけハウスの施工が終わりましたが、パフォーマンスに向けて整えていることは。
MURAOKA: 東京と大きく違うのが練習環境がないことです。今回はそれがわかっていたので、基礎運動能力を下げないようにしていました。筋力もそうですが、もっと総合的に、単純運動でない、ジャンプして転がり、走るとか...基本的な自分の運動神経が落ちないように、反応が鈍らないようにしています。
…技を磨くのもなかなか難しそうな環境ですが、どうカバーしているのでしょうか。
MURAOKA: イメージトレーニングです。絵を思い浮かべる、次はやっているときの感覚を思い出す。着地の位置、着手の位置を決めていきます。そして、いざステージに立った時の目線、この3つがとても大事です。
これが崩れることでスランプが起こります。見えてない時間が長いほど、恐怖心がおこって崩れるんです。いろんなパターンを準備しておくことによって「あ、どうしよう」とならないよう想定しておくようにしています。
…話題を変えまして、いつもは何を食べてらっしゃるんでしょう?
MURAOKA: 本当は気をつけないといけないんですが、食に関してはほんとに興味がないので・・・
朝は卵かけご飯や、コーヒーとか。施工で仲間や友人が来てくれたときが一番豪華で、カレー、チャーハン、キムチなどを食べています。あと、最近は間食をくるみにしたりしています。ステージ施工は練習に比べたらなんでもなくて、練習の時は頻繁にケアしないといけないレベルなんですが、施工はそうでもなかったですね。
...今回の事業で感じていることは。
MURAOKA: 自分は理解をされない時に孤独感を感じる、ということですね。自分の説明が下手なのもあるんですが、相手に求めてしまう。今回に関しても、やりたいことを言って伝わらない。
自分の頭の中のことだから伝わらないのはもちろんなんですけど・・・でも、ステージができたらみんなからわっと連絡がきて。自分としては「骨組みを見せたじゃないか!」と思ってるんですけど(笑)
...表現力というか、模型とか図面をかく力があった方がいいのかもしれませんね。CAD**を覚えましょう!(笑)貴重なお話をいただき、本当にありがとうございました!公演も映像も楽しみです!!
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*共感覚...ある一つの刺激(聴覚、視覚など)がそれ本来の感覚だけでなく、別の感覚をも同時に生じさせる現象。音を聞いて色を感じる、文字から匂いを感じる、など。
**CAD….コンピューターを用いて機械や部品の図面や立体図を設計するツール。自動車からアパレルまで幅広い業界で使われている。