寄り添うということ ─ 藤野沙優メッセージ
vol. 8 2020-07-18 0
7/20・31に、オペラカッフェマッキアート58が開催のストリーミングコンサート。
出演者のインタビューを3回連続でお届けしてまいりました。記事作成を担当しているのは、7/20出演の藤野沙優です。
第1回は、ソプラノ・別府美沙子さん、第2回は、ソプラノ・加藤早紀さん、第3回は、ソプラノ・横内尚子さんのインタビューをお届けしました。
第4回は、ソプラノ・藤野沙優
第4回は、わたし、ソプラノ・藤野沙優のメッセージをお届けいたします。とはいえ、自分で自分に対面インタビューはできないので、いくつかの質問に書きながら答えていくという形式をとっていきたいと思います。
藤野沙優(ふじの さゆ)
東京都出身。東京藝術大学卒業、同大学大学院修士課程修了。昭和音楽大学大学院博士後期課程修了。学部卒業時に、アカンサス音楽賞、同声会賞受賞。第46回日伊声楽コンコルソ入選。二期会オペラ研修所修了時に優秀賞受賞。2018年にソプラノ・ドラマティコに転向。特に、トゥーランドット、ブリュンヒルデは高い評価を受ける。現在はワーグナーを中心にレパートリーを構築中。NHK「若冲を発掘したアメリカ人」主題歌を担当。また、ライターとしても活動の幅を広げる。二期会会員。
Scrap & Buildの期間
──このコロナ禍の期間は、どのような期間でしたか?
「Scrap & Buildというのが、適切な表現かもしれません。これまで歌を教える仕事を中心に生計を立てていたのですが、それが全く出来なくなりました。いくつかの合唱団やお教室は、自身の判断で今年度いっぱいは休会にすることを決断しました。また、この時期に離れていくご縁もありました。それぞれに道は離れてしまいましたが、これまでの感謝の気持ちは変わりません。
一方、これまで続けていたライティングの仕事を本格化させ始めました。ライターとしてのポートフォリオサイトを作ったり、募集に応募して採用していただいたり…。そんな中で、昨年末に引っ越した駒込の街の皆様とのご縁も深まっていきました。
そして駒込の皆様との出会いがきっかけとなり、子供の頃からの目標であった『小説家として仕事をしていきたい』という気持ちに、改めて出会い直すことが出来ました。今は公募に提出する作品を複数執筆しながら、駒込を舞台にした小説を毎週土曜日に更新したり、クラシックの名曲を題材にした短編小説の発表を続けるなどして、仕事として小説を書いていく体力を鍛えているところです」
上記の小説のサイトのリンクです。駒込を舞台にした『駒込珈琲物語』は、地元の方々に愛される作品に育ちつつあります。登場人物が作中で食べたメニューを、実際にお店に足を運んで食べてくださる方々もおいでくださいます。ありがとうございます…!
寄り添い、落とし込み、アウトプットする
──以前から「〈書くこと〉と〈歌うこと〉は、私にとって同じことです」と言っていますね。どういう感覚でそれぞれの表現に臨んでいるのですか?
「子供の頃から〈書くこと〉の方がずっと身近でした。大学進学の時に〈歌うこと〉を選んだのは、それがひとりでは完結できない行為だと理解していたから。様々な方々の導きを得なければ、自分という楽器は完成しないと思ってのことでした。
〈書くこと〉も〈歌うこと〉も、同じ〈表現〉の畑から生まれてきたもの。別種の果物というだけで、土壌は同じなのです。そして、その表現はいずれも、『他者の視点を共有する』という過程を経て、生まれてきます。楽譜を読みこみ、歌うこともそうですし、何かを取材して、調べて書くことも同じです。
他の方のまなざしで眺めた世界に寄り添って、それを自分の内側に落とし込んで、発酵させて、再度この世界にアウトプットしていく、という点では、まったく同じことなのです」
感謝と共に
──マッキアートの皆さんとの出会いが人生の大きな転機だったと思います。今回のストリーミングコンサートへの思いを聞かせてください。
「私もまた、回り道をして、ここまで歩みを続けてきました。何度思い返しても、マッキアートのみんなとの出会いが、自分の人生にとって大きな転換点だったと感じています。もしも、みんなとの時間がなければ、私の人生はこれほど豊かなものではなかったでしょう。
今回のコロナ禍の中、やもすると厭世的になりがちで、音楽をするのがつらくなっていた私を励ましてくれたのも、マッキアートの仲間たちでした。みんなの励ましや、ネット上での日々の言葉のやりとりなど、そうした積み重ねがあって、なんとか踏みとどまってこられたのだと思います。本当に感謝しています。
今回のストリーミングコンサートでは、聴いてくださる方の心も、演奏する私達の心も穏やかになれそうな曲を選びました。あれこれ自分なりに比較検討した結果、歌唱時の飛沫も少なめの曲を選んでいます。別府さんとの二重唱も、松井さんとのアンサンブルも今からとても楽しみです。
また、7/31は加藤さん、横内さんが畠山さんのピアノで演奏されます。こちらのプログラムも、それぞれの個性が表れたものになっています。それぞれの音楽の世界、その彩りのグラデーションをお楽しみいただけたら嬉しいな、と思います。
今は予断を許さない状況ですが、どうかご自宅で寛ぎながら、音楽を楽しんでいただければ嬉しい限りです。くれぐれも、お健やかにお過ごしください」
オペラカッフェマッキアート58のストリーミングコンサート
オペラカッフェマッキアート58では、今年度の新たな試みとして、無観客のライブ配信による、ストリーミングコンサートを7/20(月)・7/31(金)の夜に開催いたします。
開催に合わせて、Facebookのイベントページも完成いたしました。
7/20(月) vol.1 別府美沙子×藤野沙優デュオ (ピアノ:松井理恵)
7/31(金) vol.2 加藤早紀×横内尚子デュオ (ピアノ:畠山正成)
ありがたいことに、多くの皆様のご芳志をいただき、設定金額を達成いたしました。一同、心より感謝申し上げます。本当に、ありがとうございます。
現在は、他のメンバーでの新たなコンサート実現に向けて、新たな目標を設定いたしました。こちらも、どうぞご支援いただければ幸いです。
一同、精進を重ねて本番に臨みます。どうぞよろしくお願いいたします。