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詩人・森川雅美による詩集「疫病譚」の出版をクラウドファンディングで実現!

現在と格闘する詩人・森川雅美によるコロナの詩『疫病譚』刊行プロジェクト

現在はどんな時代なのか? またどんな歴史が現在につながるのか?
コロナや核災害、世界戦争の可能性など、危機の時代をどのような言葉で表現できるのか。
今までにない表現を追求する。画像協力:壷井明

FUNDED

このプロジェクトは、目標金額230,000円を達成し、2023年5月10日23:59に終了しました。

コレクター
50
現在までに集まった金額
230,000
残り日数
0

FUNDED

このプロジェクトは、目標金額230,000円を達成し、2023年5月10日23:59に終了しました。

Presenter
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プロジェクトをブログやサイトで紹介

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神奈川県鎌倉市にある出版社です。 文芸作品を中心に出版しています。

このプロジェクトについて

現在はどんな時代なのか? またどんな歴史が現在につながるのか?
コロナや核災害、世界戦争の可能性など、危機の時代をどのような言葉で表現できるのか。
今までにない表現を追求する。画像協力:壷井明

現在と格闘する詩人・森川雅美による
コロナの詩『疫病譚』刊行プロジェクト

現在はどんな時代なのか? またどんな歴史が現在につながるのか?

コロナや核災害、世界戦争の可能性など、危機の時代をどのような言葉で表現できるのか。

今までにない表現を追求する。

何故、日本の疫病の歴史を自由詩にするのか。

現在は危機の時代

ここ十数年、特に3.11以降、日本も世界も大変な状況になっている。

大震災、原発事故、コロナ、伴う世界不況、さらにはロシアのウクライナ侵攻による世界戦争の危機、地球温暖化に伴う環境破壊も加わり、人類滅亡の危機が近づいているといっても過言ではない。

原発事故とコロナ

3.11の後、2万人を越える多くの死者を前にして、「原発事故」の自由詩を書こうともがき、一昨年一冊の詩集『日録』(はるかぜ書房)を刊行。

そして、今度はコロナである。世界で6,486,034人、日本でも39,253人の死者(2022年8月現在)が出ていて、確かに第2次世界大戦以降、世界全体に広くこれだけの死者が出たことはなかった。

また詩人として何ができるのか考え、日本の疫病の歴史を調べ始めた。

日本の歴史に大きな影響を与えた疫病

四度あったパンデミック

調べていくと、疫病が大きく歴史に影響を与えていたことが分かる。

大きなパンデミックは4回あったと思われる。

縄文時代末、飛鳥から天平時代、幕末明治、第一次大戦後の大正時代と、大きな転換期であり、時代の変化を加速させた。

また、多くの時代の中心の人物も命を落とし、その意味でも歴史に大きく影響を及ぼしたといえる。

縄文人は疫病で大半が滅びた?

縄文人が疫病に苦しんでいたことは、DNAの検査からわかってきた。

史料がなく確証はできないが、大量の縄文人の滅亡には戦争だけではない何らかの理由があると思わざるを得ない。

実際、弥生人の骨からは脊椎カリエスなどの疫病の痕跡が認められ、弥生人が持ち込んだ疫病が、抵抗力のない縄文人に蔓延したことは十分考えられる。

遣唐使が持ち込んだ天然痘

天然痘は古代エジプトからあり、古代ギリシャでパンデミックを起こす。マヤやアステカなど南アメリカ文明の滅亡も、抵抗力がなかったインディオへのパンデミックが原因。

日本の古代では「瘡(もがり)」と呼ばれ、仏教伝来の約20年後『日本書紀』552年が初出。敏達天皇や、厩戸皇子(聖徳太子)の父の用明天皇は天然痘で亡くなり、厩戸の死因も天然痘が定説だ。

天平時代になると最大のパンデミック起きる。

当時の人口の3~4割が亡くなったと推定され、権力を握っていた藤原四兄弟も全滅。

その後も、天然痘は「疱瘡」と呼ばれ、「種痘」が広がる江戸時代末期まで、何度もパンデミックを繰り返し、多くの死者を出している。

ペリー艦隊と共にコレラが蔓延する

ペストは中央アジアが、コレラはインドが発祥の地。

ローマ帝国を滅ぼした大きな要因といわれ、また中世のヨーロッパでは、人口の4~5割が亡くなる史上最悪のパンデミックが起きている。

コレラは19世紀初めが最初のパンデミックと歴史は浅いが、7回のパンデミックがあり全世界で多くの死者を出した。

日本にはアメリカの黒船艦隊の来航と共にコレラがパンデミックを起こす。コレラのために江戸で3万人以上が亡くなり、幕末の薩摩藩主・島津斉彬や浮世絵師・歌川広重も犠牲者だ。

ペストは19世紀終わりに上陸したが、北里柴三郎などの衛生対策のため、パンデミックには至らなかった

世界で第一次世界大戦の2.5~6倍が亡くなったスペイン風邪

スペイン風邪は1918年からパンデミックが始まり、およそ2年の間に、世界の人口の3分の1の約5億人が罹患し、全世界で5,000万から1億人が亡くなった。これは1,800万人ほど死者不明者を出した第一次世界大戦の2.5~6倍に当たりる。

近代の交通の発達のためタイムラグがなく、前世界でほぼ同時にパンデミックが起きたのも、今までにないことだった。

日本でもほぼ他の地域と同時にパンデミックとなり、当時の人口の4割ほどの2,380万人ほどが罹患し、約28万人が死亡。皇族の竹田宮恒久王親王をはじめ、小説家や演出家として知られる島村抱月、鹿鳴館の華といわれた大山捨松、東京駅を設計した辰野金吾などが、亡くなっている。

当時はワクチンも予防薬もなくかったが、感染の自然免疫の獲得によりやがて収束していく。

そしてコロナ

全世界で撲滅した天然痘をはじめ、日本ではほとんどの疫病が撲滅したか害のないものになった。

それでも、エイズやエボラ出血熱など多くの命を奪う新しい感染症は生まれる。とはいえ、世界でも日本でもパンデミックは起きなかった。

そして、コロナである。

何を書こうとしたのか

歴史から消えた声を求めて

このような歴史を調べていて思うのは、大きな歴史には書かれないいかに膨大な時間があるかということだ。それは歴史の大文字の声に消された、無数の小さな声、あるいは小さな声の存在といっても良い。

もちろん現在の歴史学は、日記などの私的な史料や公文書などの記録のそれなどから、さらには文書ではないものそのものから、大文字でない歴史の発掘がされている。とはいえ歴史は科学であり限界がある。

しかし、詩歌や小説などの創作においては、実証のできない消された声、声を発する存在そのものを召喚できる。

私は史料の一番奥にある最も小さな消された声を、想像力を全開にして聞き取り言葉にすることから書き始めた。それは時に暗礁に乗り上げ時に迷路に迷い込み、遅々とした困難な歩みだった。

SNSにタイムリーに発表

もう一つ重要だったのは、なるべくコロナの状況に合わせて歴史の声を重ねていくことだった。

そのため、発表の場をFacebookとTwitterのSNSに決め、一部その後に紙媒体やウエブサイトに発表したものあるが、多くは他の媒体には発表しなかった。

緊急事態宣言からほぼ一か月後の2020年5月から、緊急事態宣言が最終的に解除された2021年10月まで、最後の長い2編を除いて、書きあがるとすぐに発表し続けた。

詩人に何ができるのか?

やがて過去と現在の声が交差し、もしあるとするならコロナなどウイルスの意識そのものまで浮かんでくる。それらの声をそのまま言葉にできるのは、定型にも物語にも縛られない自由詩ならではといえるだろう。

自由詩は何でも入る広い器であり、時に零れ落ちそうになりながらも声はその器に満ち満ちていく。

そして、まさにそれこそが消された歴史の声なのだ。

ぜひ1冊手に取ってください。

よろしくお願い申し上げます。

プロジェクトスケジュール

2023年5月10日 入稿
2023年5月31日 印刷製本完了、同日よりリターン配布開始
2023年6月30日 詩集市販(全国大手書店チェーン店にて)

資金使途

組版、カバーデザイン、印刷製本、流通費用として使用させていただきます。

市井の詩人が自らの詩を世に問い、資金を集め詩集を出すことが本プロジェクトの目的です。日本という国を思い、歴史の声に耳を傾ける人がいることを証明し、詩の出版文化のあり方に新たな道筋を示すことにつながります。

想定されるリスクとチャレンジ

詩集の商業出版は年々困難となってきております。広く、読者に呼びかけて、出版にこぎつける本方式でのご協力を切にお願いするものであります。

すでに原稿制作を終えており、資金の調達が済めば、速やかに印刷製本工程へと移ることが可能となっております。また、目標金額未達の場合は、残金は自費をもって本プロジェクトを実施して、リターンのご提供をすることを誓います。

はるかぜ書房について

本プロジェクトの募集、出版を行うのは、はるかぜ書房です。はるかぜ書房(代表:鈴木雄一)は、神奈川県鎌倉市にある人文・社会系書籍を中心に出版する出版社です。

会社ウェブサイトのURL及び会社情報は、以下の通りです。

http://www.harukazeshobo.com

本店所在地:鎌倉市笛田6丁目15番19号

商号;はるかぜ書房株式会社

代表取締役:鈴木雄一

リターンの各項目の説明

本プロジェクトを応援してくださる方々のために以下の様なリターンを用意致しました。

『疫病譚』1冊

『疫病譚』3冊

『疫病譚』10冊  本プロジェクトにより制作される書籍 詩集『疫病譚』になります。

・自筆詩のポストカード 1枚 著者の森川雅美により自筆詩をポストカードに記載してお送りします。

・前詩集『日録』1冊 森川雅美の前作詩集『日録』です。「福島」の後の日本の日々、日常を歌い上げた作品となっています。

・オリジナル自筆詩 ×1 これは、支援者のためにリクエストに応じてオリジナルに書き下ろす自筆の現代詩となります。

・ 「出版記念会にご招待 1名」の開催日時場所は、令和5年6月30日、都内飲食店を期しておりますが、詳細は今後確定してまいります。

詩集より

静かに雨が降りつもっている
静かに人の声が降りつもっている
遠くから響く地鳴りにも
似た声にいくつもの顔が中空に浮かび
人のいない街並みを過ぎいく
延延とした影たちの列が呼吸する
場所からうっすら剥がれていく記憶
の断片が流されていくから
伸ばした手に届く範囲の光を掬い
傷ついた足首の奥にまで綴る
それは深深と根を張る実りえない
種子になり手の中の温もりを
欠落し心音にも浸透する雫
であるなら見失う時の狭間に落ちる
風の吹く方角に振り向きつつ
消えた読経が死者たちの背を束ね
静かに雨が降りつもっている
静かに人の声が降りつもっている
無数に飛び交いつづける魂の
欠片が行く場所もなく漂えるなら
ゆっくりといたる処に見えない苦い
水嵩はなおも増しつづける
吹きすさぶ音階はいくつもの残像
が繰りかえすさざ波なのだと
切り刻むてのひらの粒子が
浮かびあがりいく度もくり返し弱る
ぶら下がるため消えていくやや遅れる
耳の裏側の叫びは伝わり
遥かな彼方から訪れる大きな
空気の波はさらに古い時代に戻る
ために弾けていく小さな無数の顔たち
が風の間に間にまで届き
静かに雨が降りつもっている
静かに人の声が降りつもっている
現れては消え消えては現れる
かすかな囁きたちに押されながら
祈りの在処に刻まれる化膿
つづける癒えない傷口はさらに滞る
落下する暗部にまで語られる
眼底の淀みに反射する悪意を孕み
長く伸びいく触手が残酷な
震動とともに限りない魂を連れ去る
つよい光線にやがてお前の首
がいつまでも刈り取れていくまで
散るのはより深い意識の奥に
敷かれる縊れた足たちを見つめる
ばらばらな脊椎として流れ出すまだ
汚れない細まる地の果ての

私は歩いているあたりは暗くなり夜なのだろう人家と街灯が夜の中に灯り私には行かなければならないところがあり普段なら多くの人が往来しているはずだが例の疫病騒ぎで人はまばらにもかかわらず確かに私は長く会っていない両親に会わなければならずむかし何度も訪れた懐かしい店に急ぎ足で向かいその店の灯は近づくとひときわ明るく店に入ると両親は一番奥の席に座り両親の間には小憎らしい表情のたぶん幼き私であろう男の子がいて両親に甘え両親はそれぞれ刺身と焼き魚定食を子供は子供用の奇妙にどぎつい色彩のお子様定食を食べ私は両親に他人行儀のあいさつをすると両親も他人行儀のあいさつを返し私は料理を注文しようとするのだが私の嫌いな食材が含まれていたり昨日食べた料理だったり注文したい品はなくさて困っていると両親に甘える男の子の様子と私はほとんど眼中にない両親の態度がだんだん不快になるのとともにどうしても行かなければない用事を思い出し両親に用事がある件とまた戻ることを告げ店を出て私は歩いているあたりはほんとうに暗くなり夜なのだろうが人家もビルも街灯すらもほとんど消えてあの疫病の騒ぎのせいだろうとはいえ月明りしか辺りを照らすものはなくあまりにも暗く周りの様子を伺うことができないがむせ返るような体臭と苦しいくらいに押される感触があり確かに行かなければならない場所があるのだがどうしても思い出せずそれでも行く場所は駅だと思うがどこの駅だったのかわからず目が慣れてくると例の疫病騒ぎにもかかわらず周りはたぶん駅に向かう多くの人たちで犇めきあい駅の方角の空は汚れた血の色か激しい火炎に焼かれているかのような禍々しい赤に染まり車道には高速度の自動車がひっきりなしに行き来し人たちは狭い歩道を押し合いへし合いしながら塊となり一方向に進み私もいつの間にか人たちの列に呑み込まれこんなに人に揉まれたなら感染してしまうじゃないかと不快を感じながらさらに人は増えていき確かに疫病に加えて戦乱か天災が起こっているのだと確証として思い逃げなければならないが行く先も決して安全ではないとも理解しさらに人は人を押しつぶすように増えていき少しずつ意識は薄れていきまったき暗黒が訪れ私は歩いているあたりは暗くなり夜なのだろう例の疫病騒ぎのせいかあるいは戦争か天災で多くの人が死んでしまったのかすれ違う人はほとんどなく人家の灯もなく街灯が虚しくぼんやりと灯っているだけでしかし私は両親に戻ると伝えた以上むかし何度も訪れた懐かしい店に戻らなければならずどこを歩いたのかは思い出せないがひどく長く歩いたようで両の足がひどく疲れ重く踵は鈍く痛みさて休むべきか進むべきかと迷っているうちに見慣れた街角が見えてきてむかし何度も訪れた懐かしい店はもうすぐだと思い街角を曲がるがむかし何度も訪れた懐かしい店は見当たらず街灯すら消え闇はより深くなりあたりは生臭さと肌に不快にまとわりつく湿り気に満ち歩いているのか地に全身を擦りつけ這っているのかもわからずそれでも前に進みつづけ光はないまったきう闇となりどこからか響くちりちりとした不愉快な音以外は聞こえずすでに人間ではなくとかげか何か爬虫類になっているのかもしれなくそれでも手の舌の触手の先に何か懐かしい感触があり全身で感じたいのだがそれ以上進むことができずあのういるすになり人の血管を侵食しているのではと思いが突然浮かぶと無性に悲しくなり悲しげに微笑む明らかに私の大きな顔が見ていて口から許してください許してくださいという言葉が何度も溢れ出し私は歩いている闇は深い

森川雅美(もりかわまさみ)プロフィール

詩人、歴史ライター。

詩集に『くるぶしのふかい湖』(思潮社)『山越』(同)『日録』(はるかぜ書房)他。

中央公論ムックなど歴史関係のライティングも多数。

「詩歌梁山泊(webマガジン「詩客」)」代表、「脱原発社会をめざす文学者の会」幹事、「日本歴史時代作家協会」理事、俳句結社「藍生」会員、同「楽園」同人。

即興朗読などのパフォーマンスも行う。

推薦文

森川雅美くんの作品を讃える 三田誠広(作家)

重い足どりで言葉が隊列を組んで進んでいく。その弛たゆむことのない圧倒的な持続が、息詰まるような緊張感を読むものの臓腑に突きつける。その息苦しさに読者はどこまで耐えられるのか。その持続的な緊張が、詩というものに接する愉悦につながることは、誰の目にも明らかだろう。この森川雅美という詩人が紡ぎ出した言葉の集積は、疫病や災害に苛まれ続けたわが国の歴史に呼応し、語られることの少ない人々の痛憤を掘り起こし、封印された鬱屈を炙り出す試みであるが、それはまた詩というものの可能性を極限まで追求した果敢な試みであるというべきだろう。ぼくにとって森川くんは旧い知人であり、彼の歴史に対する造詣の深さや、詩人としての繊細な感性は熟知しているつもりであったが、この『疫病譚』という作品によって彼がその資質の可能性を一歩先にまで進めたことは間違いない。快作であり、恐るべき作品の出現と言うしかない。

森川雅美『疫病譚』讃 野村喜和夫(詩人)

真に驚くべき詩集である。森川雅美は以前から独特の書法、無窮動的音楽を思わせる書体を開発し、災厄あるいはカタストロフィーという主題をそこに織り込んできたが、この『疫病譚』ではさらにそれを徹底化し精緻化して、終わりなきカタストロフィーともいうべき言語の絵巻を現出せしめている。

  *

2020年、新型コロナ・ウイルスによるパンデミックに私たちは襲われた。『疫病譚』もそれをベースにしている。しかし、たんにパンデミックの現実的な様相を描き出すのではなく、まず、それを「疫病の日本史」ともいうべき歴史に接続する。私たちは縄文という有史以前から疫病との戦いを、いや共生を強いられてきた。コロナ・パンデミックもその一環、その現代的なあらわれとして位置づけられる。あるいは、コロナ禍を生きる私たちは、こうした「疫病の日本史」の諸局面に絶えず参照される。歴史に通暁する森川氏ならではの想像力の展開であろう。そこでの主体は、もちろん森川氏という、いまを生きる個我的主体を含むが、同時に、歴史的現在において呼び起こされた、あえていうなら民衆という主体になりおおせてもいる。

  *

そういう主体がコロナを語る。すると真に驚くべきことが起こるのである。ひとことで言うなら、フーコーからアガンベンへと語り継がれてきたところの、生政治的な身体があらわれるのだ。疫病にさらされた身体は、すでにしてふつうの統覚的な身体ではない。バラバラにされた、部分また部分の連なりとしての、おぞましい、グロテスクな、しかし死んでしまったわけではない、排除されつつ包摂され、包摂されつつ排除されている身体である。その様相が『疫病譚』の1から23まで、いちいち例は挙げないが、執拗なまでに繰り返される。

  *

「疫病の日本史」とは、こうして、奈良(天然痘?)から江戸末期(コレラ?)を経てコロナ・パンデミックまで、連綿と続く生政治的な身体の歴史なのだ。そして、その歴史をここまで克明に書き込んだ作品は、現代詩の世界におそらく類例がないのではないかと思われる。つまり、独創である。

  *

出口はないのだろうか。ない。わずかに、出口なき出口を設定することができるだけだ。というのも、そうした身体において、手袋が返るように、ウイルスはいわば内在化されうるからである。ウイルスとともにあることが、嫌悪や恐怖を超え、ときに喜びと見紛うばかりの忘我状態として幻視される一瞬があるのだ。このステージこそは、『疫病譚』という無窮動的な言語の絵巻の真の独創である。いや、このステージとともに、何かしら不思議な声が、祈りの、あるいは鎮魂の声が、どこからともなく響いてくることが、出口なき出口のまぎれもない徴となっているかのような、その機微こそが真の独創であるのかもしれない。

推薦します

詩人、作家、歌人、俳人、評論家、研究者など多くの創作者が森川雅美を推薦しています。

詩人 藤井貞和、田野倉康一、添田馨

作家 森詠、村上政彦、藤原緋沙子、志賀泉、上山明博

歌人 加藤治郎、江田浩司

俳人 堀田季何、北大路翼、叶裕

評論家 神山睦美、菊池仁

研究者 兵頭裕巳、山本ひろ子

ミュージシャン 笹久保伸

画家 壷井明、つだなおこ

リターンを選ぶ

  • 残り66枚

    2000

    2,000円コース 

    • 『疫病譚』1冊
    • 自筆詩のポストカード1枚
    • 2023年06月 にお届け予定です。
    • 34人が応援しています。
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    6000

    6,000円コース 

    • 『疫病譚』3冊
    • 自筆詩のポストカード1枚
    • 前詩集『日録』(1冊)もしくはサイン入り色紙(1枚)/どちらをご希望かお伝えください
    • 2023年06月 にお届け予定です。
    • 6人が応援しています。
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    10000

    10,000円コース 

    • 『疫病譚』10冊
    • 前詩集『日録』(1冊)もしくはサイン入り色紙(1枚)/どちらをご希望かお伝えください
    • 自筆詩のポストカード1枚
    • 2023年06月 にお届け予定です。
    • 9人が応援しています。
  • 残り9枚

    20000

    20,000円コース

    • 『疫病譚』10冊
    • 前詩集『日録』1冊
    • 出版記念会にご招待1名(無償、換金不可)
    • オリジナル自筆詩 ×1
    • 自筆詩のポストカード1枚
    • 2023年06月 にお届け予定です。
    • 1人が応援しています。