2024年の暮れに
vol. 47 2024-12-15 0
2024年もあと半月となりました。皆様にとってはどんな一年だったでしょうか?
私にとっては大切な、心から尊敬する友との別れと、15年を共に過ごした保護犬の看取りを経験した年でした。必死に生き抜こうとするいのちそのものが持つ強さ。あたたかさ。愛しさ。その体験が、母のいのちを実家で看取る決心をさせた年でもありました。
一方で嬉しかったのは、猫の額ほどの庭にキジバトの夫婦が巣をつくったこと。雨の夜も風の強い日も交替で卵を温めること2週間。無事に雛が孵ったときの嬉しさといったら。2羽の雛は親たちが運んでくるごはんを食べて、巣からはみ出すほどに成長し、無事巣立っていきました(その後も時々戻ってくるのは、いわゆる帰巣本能なのでしょうか)。親鳥も雛も必死で生きるその姿は、そのめぐりの尊さと共に、樹がいかに他のいのちを守り育てるかをも実感させてくれるものでした。
お伝えしている国立二小の桜たちは、仮移植中にいのちをつなぐことができなかった数本を残して全て里親さんが見つかり、都内をはじめ、秩父、伊豆、桜川(茨城)、館山、日光、佐久穂町(長野)に本移植することができました。このことについては改めてご報告させて頂きますね。
一番大きなソメイヨシノは長野県佐久穂町の大日向小学校に里親さんになってもらい、本移植された
二小には2本の本移植しか叶わなかったが、そのうちの一本「サンニュー」はかつての正門を入ってすぐ、三つに分かれた幹がひときわ印象的に二小を彩った桜
日本国内に目を転じれば、今年最も大変な思いをされたのは能登半島の方々でしょう。元日、家族が久しぶりに顔を合わせ、新年を祝う中で起こった大地震。そこからなんとか立ち直ろうとされた矢先に見舞われた9月の豪雨。その困難、痛みがいまも続いていることを思うと胸が押し潰されそうです。
矢野さんたちが1月から通い続けている輪島の被災地。山道の崩れた斜面が水脈を通したことで5月には安定してきていた
地理学の堀信行先生曰く「災害の災という字の語源は『字統』(白川静)によるとこうあります。上の部分は『川に横棒』、つまり『川を堰き止める』こと。その下に火を加えて、水害と火の害(火山噴火含む)を一緒にしたのが『災』。日本列島は歴史的に水や火が頻繁に出る島。けれど、それを『災害』と呼ぶようになったのはごく最近のこと。人工的に堰き止めることが災害につながっている」(12月8日第2回環境シンポジウム「災害と『脈』をめぐって~大気と大地と『いのち』をかけつなぐ」@立命館大学より)
1月半ばに能登入りし、その後毎月奥能登で支援活動を続けてきた矢野さんはじめ杜の学校、大地の再生ネットワークの皆さんが改めて確信されたのは「脈」の大切さ。「小さな脈の詰まりが大きな災害につながる」ことだそうです。発想を転換すれば、小さな脈を日常的にケアすることで「災」を「害」にしなくて済むということ。能登で起こったことは日本のどこでも起きる。だからこそ、一人ひとりの気づきが重要。現代土木の問題点などを指摘したシンポジウムについて、詳しくは杜の財団のWebサイトをご覧ください。
さて、2022年4月に封切りして2年と半年。映画館は別として、サイトに掲載したものだけで2022年は42箇所、23年は187箇所、24年は60箇所で自主上映会を開催していただきました(掲載を望まれない主催者さんもいらっしゃるので)。主催者さんの中には、映画館や自主上映会でご覧になって「地域で観たい」と開催してくださる方もいらっしゃいますが、自分が観たいから、という理由で開催してくださった方も。参加者さんの人数にかかわらず、多くの方から「開催してよかった」というご報告をいただくのは何より嬉しいことです。リターンの自主上映権をお持ちで、まだお使いになっていらっしゃらない方は、ご自身のよきタイミングで是非お使いください。そして、上映にとどまらず、想いをシェアする時間をつくっていただくことで、地域で、流域で、ともに風土を再生する仲間をつくっていただけるといいなぁと思います。
ところで、この間ずっといただいてきたのが「DVDやBlu-rayはないのですか?」というお問い合わせ。当初から、できれば映画館という空間で観ていただきたい、主催者さんの想いが結晶した自主上映会場でその場に集った方々とつながっていただきたい……という思いが強くありました。ただ、それが叶わない方、何度も繰り返し観たいと仰る方から、DVD化のリクエストも再三いただいてきました。そのお声にお応えして、来春には英語字幕版と併せた形でDVDの販売を開始します。詳細はまた次のアップデートでお知らせしますのでお待ちいただければ幸いです。
2025年がいのちに優しい社会への一歩となりますように。どうぞ、あたたかくして年の瀬をお過ごしください。
2024年12月15日 リンカランフィルムズ 前田せつ子
紅葉したヤマボウシの巣に今も時々戻ってくるちょっと前まで雛だったキジバト兄妹(?)
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