くすのき荘ができるまで~それは偶然からはじまった~
vol. 3 2021-08-11 0
みなさん、こんにちは。暑い日々が続きますね。山本とともにプロジェクトに取り組んでいる山田です。山田荘を引き継ぎ、夫の山本とともに活動しています。
今回のアップデートでは、私たちがつくろうとしているカフェの、まさに現場となる「くすのき荘」について紹介したいと思います。
“おまけ”の空きスペースを改修
くすのき荘との出会いは、今から6年前、2015年の春頃でした。
当時、所有する木賃アパート山田荘の活用を考えていた私たち夫婦は、山田荘に住んでいました。私たちが部屋を空けないと新しい人が入れないため、山田荘とは別に“住まい”を探していました。
そんなとき、道を歩いていたら、すぐ近くの空き物件に「FOR RENT」の看板が!いてもたってもいられず、不動産屋さんに電話を入れました。
改修前のくすのき荘の様子
数年前までは、フォークリフトが動いていていわゆる町工場のようなところ。夜には2階からオレンジの光が漏れ出てほっとする感じ。それがとても印象的だったのを覚えています。
もともと運送会社として使われていた建物で、1Fは車の出入りも可能な事務所、2Fはオーナーや従業員の住まいでした。それが2012年頃から空き家になっていました。不動産情報として出されていたのは、1F部分を“車庫”として貸し出すというもの。つまり2Fの住居部分はおまけ。ここが気に入った私たちは、どうしても借りたかったので、不動産屋さんに無理を言って2Fのみお借りしました。ということで、勢いで借りてしまったわけですが、ここからが大変でした。自分たちの住まいを探していたのに、思いがけず90㎡の新拠点(未整備)を手に入れてしまったのです。コンセプトも何も決まっていないのに、さて、どうしようか。どんな流れで現在のくすのき荘にたどり着いたのか、大まかですが振り返ってみたいと思います。
走りながら、改修しながら、考えながら
2015年
・くすのき荘を借りる(1月)
・改修を始める(3月)
~改修、日々改修~
改修に取り掛かった「くすのき荘」の2F。投資できるお金もほとんどないので、出来るところは自前でセルフで手を入れていきました。仕事から帰ったら作業着に着替えてバールとトンカチを持ち、ひたすら壊してつくる日々。結局、完成まで1年半の歳月が掛かってしまいました。
このとき、20人弱の仲間たちに協力してもらい、床磨き、壁や床の塗装などなどを行いました。和室で畳敷きだったところを床張りにしたり、天井を取ったり。油だらけだったキッチンから茶色い雨が降り注ぐ中、磨きまくりました。
平行して、コミュニティスペースやアートスペースを運営している方たちを訪ねてはお話を伺い、コンセプトの立て方、場の作り方や仲間の集め方などなど。情報収集と勉強の日々でした。(小田原の旧三福さん、墨田のfloatさん、お世話になりました。ありがとうございました!)
2016年
・勝手に公園ラウンジ「くすのき荘」(3月)
改修している最中、とりあえずOPENするイベントを実施。来た人に勝手にくすのき荘でコーヒーを入れてみる。来た人がどんな過ごし方をするのかを見ていると、みんな思い思いの過ごし方をしている、そして公園を眺めていることが分かりました。「くすのき荘」と公園との関係を生かした方がよいと思い、公園に面した窓の多くはクリアなガラスにすることとしました。
・オノコラーフェス(12月)
「としまアートステーション構想」のイベント会場として協力。美術家30人が参加した展覧会『雑居展』では、一気に60名ほどが集う場面もあり、床が抜けるのではないかと思うくらいでした。
『雑居展』の様子。アートに関心のある層に「くすのき荘」の存在が知られるように。
・「くすのき荘」改修完了
何とか年末に改修が完了し、使える状態になりました。
~かみいけ木賃文化ネットワーク始動~
木賃アパートの生活文化になぞらえて「足りないものは、まちを使う」というテーマを決める。とりあえずコンセプト図や、「山田荘」と「くすのき荘」で活動するメンバーシップの仕組みを作りました。本当に仲間が集まるのか、魅力を見つけて来てくれるのだろうかと不安にかられる中、さらには「くすのき荘」の改修が終わらない中で説明会を繰り返し行いました。
結果、14名のメンバーが集まってくれました。何か自分たちで場所を作っていけるというワクワク感があったように思います。
2017年
・木賃メンバーの活動スタート。
・オープンくすのき荘(2月)
「かみいけ木賃文化ネットワーク」として「くすのき荘」オープニング。場所と木賃メンバーのお披露目を行いました。木賃メンバーの作品展示のほか、犬のうんこをマッピングする企画などなど。この時に愛馬のメリーちゃんが「くすのき荘」にやってきました。
~木賃メンバーの活動~
スタート当初のメンバーは、演劇ライター、カフェオーナー、アーティスト、舞台衣装家、音楽家など多くがいわゆる表現活動をする人たちでした。そのため、「くすのき荘」では主に演劇、パフォーマンス、展示などの活動が主でした。ホワイトキューブではない会場と向き合うと、さまざまなノイズが絡むものですが、それがいい!という人たちがいることは発見でした。
舞台衣装家メンバーの企画
2018年
・木賃メンバー22名
・「くすのき荘」拡張
メンバーも増えてきたことから、1Fの駐車場部分もお借りすることに。2Fのシェア空空間に加えて、1Fには新たに7つの活動ブースと共同作業場を設置し、じっくり作品づくりをしたり、ハードな作業も可能となりました。また、道路に面した1Fに進出したことで、活動や木賃メンバーが地域の人たちの目に触れるようになりました。地域のお祭りへの協力、参加もこの年から始まりました。
改修前の1Fの様子。隣の公園の草が侵入していました。
7つの個人ブースを設置。
2019年
・木賃メンバー24名+1匹。
・まちに開かれた企画の定着
木賃メンバーには、表現活動をする人のみならず、整体師、介護ベンチャーで働く人なども加わり、活動内容も外に向かうものが増えてきました。七輪を手に入れたのもこの頃でした。
2020年
・木賃メンバー26名+2匹
・コロナ禍のくすのき荘~拡張したリビングとして~
コロナ禍で木賃メンバーの活動は外向きには出来ませんでしたが、小さなワークショップが開催されたり、日常生活の中で、家でも職場でも学校でもない居場所、ちょっと休む場所、リビングとしての機能を持つことを実感しました。
2021年・木賃メンバー27名+2匹
・スペースの拡張(もう1棟を借りる)
「くすのき荘」に隣接する建物も借りることに。木賃メンバーで知恵を出し合い、ワークショップをしながら「くすのき荘」とセットで使い方を考えました。その結果、生まれてきたのがカフェを作る計画です。「くすのき荘」は、オープンしている日もあれば、そうでない日もある。楽しいメンバーがいるし、もっと外に開いても良いのでは?と。カフェのキッチンは「くすのき荘」に設置しますが、拡張したスペースは交流の場として使う予定です。
ワークショップでのアイディアメモ
と、ここまで、本当にざっくりとした「くすのき荘」の変遷を書かせていただきました。
基本的には「くすのき荘」は、木賃メンバーの活動の場であり、それによって場が拡張したり、地域との関係が作られていったり、できることが増えていっています。このまちをこうしたい!といった大それた目標があるわけではなく、この場の状況や木賃メンバーの活動の様子に応じて日々変化しているのです。カフェもきっと、ここに来る人たちによって形を変幻自在にしていくことでしょう。
次回は、日々のくすのき荘の様子を具体的にご紹介したいと思います!
どうぞお付き合いください。