「再演・僕とパンツとトンプソン」開幕から千秋楽。
vol. 18 2018-08-31 0
「僕とパンツとトンプソン」を応援してくださった皆様、本当にありがとう御座いました!
皆様のおかげて、無事に千秋楽を迎えることが出来ました。
平成最後の夏を一息に駆け抜けた2日間。
見に来てくださった方、残念ながら来られなかった方。座席数の都合でお断りせざるを得なかった方、本当にごめんなさい。
実は、今回の公演。あまりの反響に、予定していた座席数をかなりオーバーしていたのです。
それでも、なるべくたくさんのお客様に見てもらいたい!という気持ちから、客席を増やせるだけ増やして、演出に影響が出てしまうギリギリの座席数で行いました。
満員御礼!!嬉しい誤算でした。
公演のためにお借りした劇場は、フリースペース。つまり、固定された座席がありません。決められたステージもありません。
演出家、舞台監督、照明、音響、美術、制作。みんなで打ち合わせを重ね、一から舞台を作り上げていきました。見に来てくださった方には伝わったかと思いますが、今回は、ステージを低くして、座席をひな壇に設置。お客様全員が、ステージを見られるように座席に段差を付けて配置しました。本来売るはずでは無かった追加席も、なるべく見えないことが無いようにと、開演の直前まで微調整が入ります。それでも、少し窮屈な思いをさせてしまったお客様…申し訳ございません。
「再演・僕とパンツとトンプソン」では、たくさんの新しい試みに取り組みました。
まずは、ここ。クラウドファンディング。支援という形を取りつつ、実際の目的は みんなで繋がって楽しむこと。舞台を作る側と観客とで分けるのでは無く、一緒に作ろう!トンプソンで遊んでもらおう!作る楽しさ、嬉しさ、達成感を、みんなで分かち合い、お祭りにしてしまう。楽しんでもらうための仕掛けの一つとして、クラウドファンディングをスタートさせました。
これをきっかけに、演劇における第四の壁を取り払った「バックステージツアー」。
劇場がフリースペースであるため、いわゆるバックステージはトンプソンにはありません。バックステージとは、舞台の裏側。それならば、普段は絶対に見せない 舞台の作り手である裏方の仕事を見せてしまおう。という企画が立ちました。
お客様に、舞台裏を見せないのにはたくさんの理由があります。その一つに、お客様を夢から現実に引き戻してしまうことが挙げられます。劇場の中は時間が切り取られた別空間です。そこにいるお客様は、劇場にいる間、現実から切り離され、物語の世界に入り込んでいます。しかし、実際に舞台を動かしている裏方や役者にとっては、劇場空間こそ現実で仕事場です。夢や空想を形にするために仕事をしている舞台人は絶対的に裏。表に出てはいけないのです。表に存在してはならないものとして、黒子も代表して挙げられます。
さて!こんなにも、見せてはいけないものを見せてしまったトンプソン。
舞台美術も、装置も、間近で見て戴きました。天井いっぱいに張り巡らされた線は、ドーム状にステージを包み込み、それを照らすために無数のLEDライトを設置。さらに、水の波紋を演出するために、水桶に割った鏡を入れて水面を揺らし、そこに光を当てて光と影を作る水鏡という手法をとりました。作り物ではない、本物の水面を舞台上に映していたのです。
本物にこだわったのは、光だけではありません。音も匂いも。
劇場内に響き渡る風鈴の音色や蚊取り線香の匂い。気付きましたでしょうか。全て本物です。スタッフが、演出に合わせてその場で鳴らした夏の音。思い出の中の匂いです。
本番の2日前から、演出家を中心に舞台監督・照明・音響・制作が集結。通し稽古から打ち合わせが入ります。限られた時間を目一杯使い、ギリギリまで調整を行います。演出家の意図を理解し、作品を最高のカタチでお客様の元へ送り出すため、台本を追いながら それぞれがプロの目線で意見を出し合います。
シーンを活かすため、暗転の回数を調整。嘘っぽい音は使いたくない。外でセミが鳴いているのなら、効果音として流さない。生音にこだわる。常にお客様の目線で、観ている人を疲れさせない、感情を左右する大切なところ。照明のこだわり。座席の配置。終演後、物語の中にあった劇場内と外の世界を繋ぐため、カーテンを一気に開けて外の空気を入れる演出。多くの舞台を手がけているスタッフです。一切手抜きなし。実は、当日急遽 変わったこともあります。考えているよりも先に身体が動きます。その場で表スタッフの配置を変更。終演後の段取りも演目が終わる直前に変えています。
もう一つ。忘れてはいけない試み。それは、全3公演とも、それぞれ違うシーンを入れたこと。1回目の公演は、呼吸する沼。2回目は、海。千秋楽は、夏祭り。最後の日、なんと奇跡的に劇場付近でもお祭りが行われていたのです!!当日そのことを知らされたトンプソンカンパニー。素晴らしい偶然にびっくりです。上演中、遠くからお祭りの音が聞こえた方もいますでしょうか。観劇後、そのお祭りに参加したお客様もいたようです。
たくさんの新しものを作り上げ、再演という枠を超えた「僕とパンツとトンプソン」
平成最後の夏を彩って、無事に千秋楽を迎えました。
思春期の繊細な少年と、短い命を懸命に踊る小さなダンサー。見てくださったお客様の数だけ物語があります。あの頃の自分と重ねて、忘れていた気持ちや想いは、見つかりましたでしょうか。子供のころ置いてきてしまった、迷子になったままの自分を、探してあげられましたでしょうか。
あなたにとって、トンプソンとは なんですか?
またいつか、巡り会えますように。