クランクイン前日のご挨拶(by 入江悠)
vol. 19 2020-09-28 0
入江悠です。
明日、『シュシュシュの娘』が遂に撮影初日を迎えます。
いくつかの出来事が重なって思い立ち、6月に本企画を立ち上げてから今日まであっという間でした。この期間中、多くの方に支えられご支援いただき、今日までくることができました。少し長くなりますが、クランクイン前の気持ちを記しておきたいと思います。
クラウドファンディングをご支援くださった方の中には、わたしがこの映画で来年回りたいと思っているミニシアターや上映活動をされている方もいらっしゃいました。元々、コロナ禍で大変な苦境に陥ったミニシアターを支援するため、2021年以降に種を蒔きたいと思って始めたこのプロジェクト。ですが、いつの間にか私たちがむしろ多大な応援いただくようになりました。何か気恥ずかしくもあり、また何かこみあげてくる熱いものもあります。ひとりではない。そんな気持ちを毎日抱かせていただきました。
あるミニシアターの副支配人の方に、緊急事態宣言による自粛要請中にインタビューをさせていただきました。その方は「休業している間に、わたしたちの存在が忘れられてしまいそうで怖い」と仰っていました。その気持ちが、今、わたしにもよくわかります。映画製作・映画配給もその後、苦境に陥って、いまだ先が見えないスタッフがたくさんいます。『シュシュシュの娘』のオーディションに応募してくれた2500名以上の俳優の中には、「何も表現活動をできない状態がつらい」「いつ演技ができるのかわからないのがしんどい」という声をあげる方が大勢いました。また、私の友人である俳優は自ら命を絶ってしまい、いまだにわたしは彼/彼女とのお別れをいうことができていません。ふと我にかえると、彼/彼女が孤独に震えていただろう夜のことを、まるで我がことのように感じたりもします。自分自身も精神的に追い込まれていることを自覚することが多々ありました。
しかし、このプロジェクトを応援くださった皆様のおかげで、今日まで一歩一歩くることができました。明日からはコロナ禍での自主制作という、わたしにとっても初めて(で、おそらく最後であろう)撮影が始まります。周りには、この企画に賛同してくれて集まってくれたキャスト・スタッフがいます。まずは無事に、クランクアップを迎えることを目指します。
最後にひとつだけお願いです。この文章を書いている真っ最中、ある地方の映画上映団体の方がクラウドファンディング支援くださり、「上映待ってます。それまではうちもやってるはず」とコメントを寄せてくれました。はず、という語尾に背筋が伸びる思いがしました。まだまだコロナ禍での上映活動の大変さは続いています。座席制限が解除になった劇場もありますが、客足が戻ってきていない地方のミニシアターもまだ多くあります。できればご友人・知人の方にぜひお声がけいただき、ミニシアターや非劇場上映の応援をお願いいたします。
今、日本全国にあるミニシアターの灯がひとつも消えることなく、来たる2021年。苦しい中を踏ん張っていただいた御礼の気持ちもこめて、日本各地で『シュシュシュの娘』の上映活動をしていきたいと思っています。各地のミニシアターでこの企画を待っていただいた皆様と笑顔でお会いできることを今の最大の楽しみにしています。
大変な時期は続きますが、日々の制作経過をつぶさにレポートしていきますので、何かの糧にしていただけたら幸いです。「自主映画っぽく四苦八苦してるな」と笑っていただいても結構です。暗くなりがちな日々に、わずかでも希望の灯をともせたらと願っています。
それでは、またクランクアップ後にお会いしましょう。(わたしは撮影中、忙しくて記事アップできないと思いますが、優秀にして熱心なアシスタント・プロデューサーの大條さんが記事を更新してくれます。お楽しみに!)
入江悠