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INTERVIEW - 2016.11.19

伊豆大島の豊かさを伝えたい!高野徹監督作「二十代の夏」に込めた“人のつながりの豊かさ”と、映画完成後に生まれた “新たなつながり”とは?

学生時代から短編映画や広報映像を監督している高野徹さん。2010年に監督した『濡れるのは恋人たちだけではない』はSKIPシティ国際Dシネマ映画祭や北京獨立電影展など、国内外の映画祭に出品され高い評価を得ました。高野さんが映画監督になったきっかけは、高校の文化祭での出し物として学園ラブコメディー映画を自ら企画・脚本・監督したことでした。そこにはみんなで物を作る楽しさや友人との対立、それを経て見ることができたお客さんの喜ぶ顔という“映画を作る原体験”が詰まっていました。

学生時代から短編映画や広報映像を監督している高野徹さん。2010年に監督した『濡れるのは恋人たちだけではない』はSKIPシティ国際Dシネマ映画祭や北京獨立電影展など、国内外の映画祭に出品され高い評価を得ました。高野さんが映画監督になったきっかけは、高校の文化祭での出し物として学園ラブコメディー映画を自ら企画・脚本・監督したことでした。そこにはみんなで物を作る楽しさや友人との対立、それを経て見ることができたお客さんの喜ぶ顔という“映画を作る原体験”が詰まっていました。

それ以降、映像作品を作り続けることになる高野徹さんは、2015年にクラウドファンディングで制作費を募って作った最新作として、「二十代の夏」を完成させました。2度のタイトル変更を経て完成した本作には一体どんな思いがあったのでしょうか?また、映画が完成したあとにも生まれた人とのつながりの豊かさについても話を伺いました。

劇場公開を諦めた熱意の再編集!

ーー「二十代の夏」完成おめでとうございます!もともとクラウドファンディングを行っていた時の作品名は「島の女たち(仮)」でしたよね?

高野:そうなんです。そして実は2016年3月に上映したタイミングでは「恋はフェリーに乗って」というタイトルでした。しかし上映後に色々と思うところがあって再編集し、最終的に上映時間は70分から42分へ、タイトルも「二十代の夏」となりました。

ーー最初のバージョンの70分という数字は、劇場公開を意識していた上での数字だと思いますが、40分まで短くしてしまうと劇場公開を諦めるのと同義になる為、最初にその話を聞いたときはかなり勇気というか思い切りのある再編集をするのだなと驚きました。その背景には何が有ったのですか?

高野:一度は70分の作品として完成させたのですが、上映会で見た時に“作品をもっと良く出来る余地がある”と感じてしまったので、とことん編集し直すことにしました。もちろん劇場公開への未練はありましたが、一旦作品の内容を良くする以外のことは頭の中から取り払いました。

ーーそれは凄い決断ですね。でも表現者として作品への自信を第一に置く姿は格好良いですね。再編集作業は一人でされたんですか?

高野:そうです。半年程かかりましたが、作品の魅力を追求することに向き合いました。

編集作業は一人でしたが、助監督としてお世話になった濱口竜介監督からの的確なアドバイスと“あと少しでもっと楽しめる映画になるから頑張って!”という言葉にも勇気付けられましたね。結果、42分の「二十代の夏」で納得いく作品へ作り直すことができました。

大学院生時代に受けた衝撃

ーー高野監督は現在28歳で大学生の頃から映画を制作されてますが、クラウドファンディングの存在は知っていましたか?

高野:はい、大学院生の頃にMotionGalleryを知って衝撃を受けました。それは柴田啓佑監督の「ヤギ、おまえのせいだ」というプロジェクトだったのですが、映画を制作することに人からお金を貰えるんだ!ということにものすごくびっくりしました。その時僕も短編映画を撮っていたのですが、資金はたくさんアルバイトをしたり奨学金を切り崩して工面していたので。

ーー確かに、画期的な仕組みですよね。その当時は利用されなかったのですか?

高野:クラウドファンディングのことは友人間でも話題になりました。しかし、「人からお金を支援されると撮りたいものが撮れなくなるんじゃないか?」「そもそも自分で稼いで撮るべきなんじゃないか?」という話もしていて、実はあまり前向きな印象じゃなかったんです。でも、濱口監督の「ハッピーアワー」に助監督として参加したとき、クラウドファンディングで応援されることが映画を撮るパワーになるんだ!という衝撃を目の当たりにして、ガラリと印象が変わりました。

ーーそれは嬉しい衝撃ですね!では今回は「二十代の夏」を撮ると決めた時から活用されるつもりだったんですか?

高野:そのつもりだったんですが…いざ始めるまですごく悩みました。僕自身が映画監督としてあまり実績がないですし、本当に応援して貰えるんだろうか?という不安がありました。でも周りのスタッフや友人から「失敗してもいいから挑戦してみたら?」と背中を押されたことで挑戦できました。結果的にたくさんの方に応援頂けて、納得のいく映画を撮りきることができました。

ーークラウドファンディングを活用して良かったことはありますか?

高野:お金の支援以外で一番良かったことは、人との出会いですね。実はプロジェクトページを見た役者の方から出演希望を複数頂き、映画の舞台となる伊豆大島出身の方に出演頂くことになりました。この出会いはクラウドファンディングを活用したからこそ得られたものだと思います。あとはプロジェクトページを自分で書いたことで、映画の制作意図を深堀りできてよかったですね。お陰で、なぜ今この映画を撮るのか?を聞かれたときにきちんと自分の言葉で伝えることができました。

ーー目標金額は200万円と高額でしたが、達成できた要因にはどんなことが考えられますか?

高野:まず、プロジェクトの公開に併せてパイロット版映像を作ったことが大きいと思います。3分弱の映像だったんですが、島の自然の美しさをたくさんいれることでどんな作品になるかを伝えることができたと思います。あとはポストカードサイズのチラシを作り、島の人に配ったことが良かったですね。チラシがあると映画の説明に併せてクラウドファンディングのことも話すきっかけになったので、たくさんの人に興味を持って貰えました。

ーーなるほど。一方で大変だったことはありますか?

高野:苦労したのは精神的なプレッシャーですね…。募集をかけたときは1ヶ月で70万円弱の支援が集まったのですが、その後全く動きがなくなってしまって。その時は「この映画って必要とされていないのかな?」なんて考えてしまい、落ち込んだりしました。そして達成したらしたで、今度は応援して下さった方への期待に応えなきゃ!というプレッシャーをすごく感じました。

ーー確かに、応援=コレクターの人数として具体的に現れますもんね。

高野:そうなんです。今回は89名の人たちが応援して下さったので、“応援してくれた人に対して恥ずかしくない映画にしよう!”という気持ちをもって撮影を進めました。

人のつながりで完成する映画には強度がある

ーー「二十代の夏」を撮影するきっかけはなんだったんでしょうか?

高野:伊豆大島の豊かさを伝えたい、という気持ちですね。僕が伊豆大島を訪れたきっかけは、青山真治監督の『東京公園』で映し出されていた筆島を見てみたい!という動機でした。島には1週間の旅行で訪れたんですが、自然の豊かさはもちろん、島の方々の“人とのつながりの豊かさ”に驚きました。島ではすれ違う人同士が挨拶したり、車を止めて雑談したりする光景が日常だったんですね。僕が映画を撮るときは自分の日常の疑問が出発点になるんですが、今回は “こうした人のつながりは都市では失われつつあるんじゃないか?”ということでした。

ーーなるほど。更に今回の撮影では“俳優を大切にする”という強い気持ちがあったそうですが、その気持ちにはどんな背景があるのでしょう?

高野:僕は助監督時代に色々な撮影現場を経験したのですが、俳優が物のように扱われていると感じる場面に出くわすことが度々ありました。一方で濱口監督の現場では脚本の本読みに1日費やしたりするんです。やはりそういう丁寧な準備をすると、演技経験のない人でも素晴らしい演技をされるんです。濱口組では、良い映画を撮るために必要なことは“俳優が安心して演技ができる環境を整えること”なんだと学びました。なので僕が映画を撮るときは、できる限りその環境を整えたいという思いがありました。

ーー撮影期間は15日だったそうですが、現場はいかがでしたか?

高野:今回は映画を丁寧に作るため、余裕をもったスケジュールを組みました。ですが撮影にはトラブルがつきものなので、現場ではスタッフはもちろん、島の人にもたくさん協力して貰いました。島の人は撮影に対しては基本的に「やりたいなら勝手にやればいいんじゃない?」というスタンスだったんですが、車を1ヶ月も貸してくれたり、撮影を暖かく見守ってくれたりして応援してくれました。そしてコミュニティスペースのkichi(http://kichi.to-on.info/)の方には撮影場所を教えて貰ったり、食事や宿泊のサポートをして頂いたりして本当に助けられました。

ーーそれは監督が魅了された島の豊かさにつながりますね。

高野:そうなんです!撮影のきっかけは、伊豆大島の自然と人のつながりの豊かさを伝えたい!ということだったんですが、撮影中もまさにそれを実感しました。そしてその“豊かなつながり“は、しっかりと映画に込めることができました。そういった人のつながりで完成する映画は嬉しいものですし、伝えたい内容にも強度が生まれると思います。

撮影後も続く新たな“人とのつながり”

ーー映画は11/5に神戸で上映会があったそうですが、反響はいかがでしたか?

高野:神戸の上映会では人との出会いと再会が嬉しかったですね。 神戸は「ハッピーアワー」でお世話になった映画関係者の方や映画を見た人からクラウドファンディングでたくさん支援を頂いた地域だったんです。だから赤字覚悟でも上映会をしたくて企画し、喜んで頂けたので嬉しかったですね。あと、その上映会をきっかけに大阪シネ・ヌーヴォの館長さんから“是非うちで上映したい!”と連絡を頂けて、新しいつながりが生まれました。

ーーそれは嬉しいですね!そして11/27(日)は横浜での上映会が控えていますね。

高野:横浜は以前僕が住んでた地域で、街のイベントを手伝ったりしていたご縁で神戸に並んでたくさんの応援を頂きました。なのでやはり、応援頂いた地域でこそ映画を上映したい!と思って企画しました。他にも、海に浮かぶ映画館(http://umi-theater.jimdo.com/)という企画でも上映が決まり、嬉しいつながりが続いています。「二十代の夏」は伊豆大島から神戸・横浜と、なんだか“港から港へ流れ着く映画”なのかもしれないです。

ーー高野監督の今後の予定を教えて下さい。

高野:「二十代の夏」は11/27(日)横浜での上映会と、年末に大阪シネ・ヌーヴォと神戸元町映画館での上映が控えています。あとは英語字幕が完成したので、海外の映画祭へも出品したいと思っています。監督としては今後も映画を撮り続けることが目標なので、自分の日常の疑問を出発点にした映画はもちろんですが、依頼されたことも“いかに面白く演出した作品を撮れるか”という事にチャレンジしていきたいです。


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