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NEWS - 2016.12.05

価値観違っても、音楽で“通訳”に。 クラウドファンディングで叶えるセルフプロデュース

2回のプロジェクトを達成したシンガーソングライターの松本佳奈さん。そんな彼女はクラウドファンディングは「社会人として無理でしょ、というような夢も実現できる場所」だと言います。 MV、そしてCDの制作を実現した松本さんに、成功の秘訣や大変だったこと、今後の夢についてお話を伺いました。

海とあさりとブルーベリーの町、千葉県木更津市出身のシンガーソングライター 松本佳奈さんは、MotionGaleryで2回のプロジェクトを達成し、楽曲『あの陽だまりは瞼の裏』のミュージックビデオ、そして5th mini Album『魔法の手のひら』を制作しました。そんな彼女は、「クラウドファンディングは、普通に考えたら無理でしょ、という夢も実現できる可能性」だと言います。

MV、そしてCDの制作を実現した松本さんに、成功の秘訣や大変だったこと、今後の夢についてお話を伺いました。

由緒あるお寺でのライブ、ブルーベリー摘み取りや田植え、ホタル鑑賞会でのライブ、鳥のさえずりや木々のざわめきの中での森ライブ、地元の食材を購入できるマルシェと合わせた「かずさキャンドルナイト」の立ち上げなど、木更津の魅力も伝える精力的に活動している松本佳奈さん

価値観が違う人同士の通訳になりたい

――まず、いつごろから音楽をやっていらっしゃるのか聞かせてください。

松本: 2006年ごろからシンガーソングライターとして活動しています。曲を作り始めたのは小学校くらいから。親がピアノ教室を営んでいたので、小さい頃からピアノに触れていました。高校卒業の時、後輩への気持ちを曲にして弾き語りで歌った記憶があります。元々は物語や絵を書くのが好きで、漫画家か小説家になりたいと思っていました。小説を書くために大学進学もしました。音楽が好き、というより、表現活動全般が好きなんですね。私にとって、歌も小説も自己表現の手段の一つです。それで食っていこうとは思っていなかった。ただ、人前で本格的に活動するまでは「自分が何を表現したいのか」を、そこまで突き詰められていませんでした。

――音楽も手段の一つだった松本さんが、そこに振り切ったきっかけはなんだったのですか?

松本: 大学の時、寮にピアノがあったんです。曲を作っていることを友人に話したら「歌ってよ!」となって…ちょうどその時失恋したばかりで、『失恋』という曲を書いていて(笑)歌ったら、その子が涙を流して感動してくれて…それが大きなきっかけですね。自分の歌で、誰かの心が動くってすごいことだなと。でも繰り返しになっちゃいますが、それで食ってこうとは思っていなかった。「将来何になりたいんだ」と高校の先生に言われても、パッと浮かばなかったんです。 (表現とか創作が好きなのは)母がなんでも作る人だった、というのが影響しているのかもしれません。おもちゃも粘土で手作りだったし、すごろくなんかも作っちゃう。私が夏休みの宿題でポスターを描いていると、一晩のうちに勝手に母が完成させてる、なんてこともありましたね。自分で完成させたかったのに…(笑)ピアノ教室を営んでいますが、元々は音大の声楽科でオペラを歌っていたり。表現者なんです。

――それはすごいですね(笑)。音楽で表現したいことは、どんなことなのでしょうか。

松本: 例えば…私は相手の肩書きや権力をあまり気にせず、フラットに人間同士として接してしまうタイプなのですが、一方で肩書きを非常に重んじる方もいますよね。それって、どちらの価値観が正しい、ということではなくて、大事にしてるものが違うってことじゃないですか。そういう、「大事にしているもの」が異なる人同士が、どうやったら潰し合わずに、互いを尊重しながら折り合いをつけていけるんだろう、というところが、私の歌詞づくりの原点です。価値観が違う人同士の通訳になりたいんです。 先ほど母の話が出ましたが、親と価値観が違って折り合えなかった経験があるんですよ。原体験はそこのような気がします。

1回目のクラウドファンディングで調達した資金を元に制作されたミュージックビデオ『あの陽だまりは瞼の裏』。家族とのコミュニケーションをテーマにしたこの楽曲のミュージックビデオは、一般公開版とコレクター専用版の2種類が制作されました。

「絶対的」な人の価値観を、緩めたい

松本:人それぞれが自分なりの「正しさ」を持っていますけど、私は絶対的な正しさってないと思うんですよ。育った環境によっても変わると思うし…「絶対にこうじゃなきゃいけない!私が正しい!お前は間違っている!」と、頑として譲らない人に出会うと、しゅんとしちゃいます。争いってなくならないのかな〜と、考え込んじゃう。そういう頑なな人の心をゆるめたいなと。 今はこれを音楽という手段で表現していますが、あと2年くらいしたら、田舎の田んぼのど真ん中に古民家借りて、「駆け込み寺」みたいな施設を作りたいと思っています。不登校、DV,虐待なんかで悩む人が長期滞在できる場所。大人でも子供でも来れる、ゲストハウスのような。そこで、自主性を重んじるワークショップなどを開催したいです。

――素敵な構想ですね。

松本: 経験のある大人なら誰でも講師になれる。実践してる人が、教える。最初は木更津を拠点にして、全国でやりたいですね。住み込む人は、他人と関わらなくてもいいけど、ごはんだけはみんなで一緒に食べる。音楽療法も取り入れたいです。 クラウドファンディングをやっていると、同じような意識を持った人たちが集まってくるんじゃないかな。私の音楽にピンときて支援してくださるのは、「価値観の多様性を大切にしたい」という方が多いように思います。


2014年5月に渋谷duo MUSIC EXCHANGEで開催したワンマンライブには300名以上の方が駆けつけた

ギブアンドテイクが、かえって良いところ

――クラウドファンディングをやってよかった点を聞かせてください。

松本: 私は、ギブアンドテイクなところがいいなと思っています。一方的にもらうのは苦手なんです。例えば急に100万くれる、と言われても怖いじゃないですか(笑)クラウドファンディングは、支援者が金額と希望のリターンを選べる。需要と供給がきちんとマッチするための選択肢があるところが好きなんです。 支援してくださる方から、「手数料は何に使われているの?」と聞かれることがありました。モーションギャラリーは、支援者さんの情報をエクセルでまとめてくれたり、どの年代の方が多く支援してくれているのかをグラフで随時閲覧できたり…支援してくださる方の人数が増えるとなかなか自分一人じゃ管理できない部分をやってもらえるのが助かります。あと、経過報告のフォーマットがシンプルで使い易かったです。 モーションギャラリー自体に、映画や芸術に興味のある固定ファンがついていたので、そういった層に届けられたのもよかったです。

――そもそも、どうやってMotionGaleryを知ったのでしょうか。

松本: 最初に知ったのは「クラウドファンディングまとめ」みたいな記事だったと思います。アート系に強そうだなと感じて、ここでやろう思いました。まずはミュージックビデオ(以下、MV)制作をしてみようと。とにかくやってみるしかない。結果、目標金額を達成できて、こんなに楽しみにしてくれている人がいるんだと肌で感じられたことは大きかったです。あのMV制作があったからこそ、アルバム制作もクラウドファンディングでやってみよう、という気持ちになれました。 そうしてできたのが、今回のアルバム『魔法の手のひら』なんですけど…クラウドファンディングを通じて「自分が関わったんだ」と言ってくれる人がたくさんいます。嬉しい。 アートって値付けが難しくて、「5万出そう」という人もいれば「1円も出す価値はない」という人もいる。クラウドファンディングは、選択肢があるのがいいなと思います。今後、もっと浸透していくんじゃないでしょうか。

――そうした中で、逆に大変だったことを教えてください。

松本: 最初の文章を考えるのが、今思い返すと一番大変でしたね。私を初めて知る方にも「支援してみようかな」と思ってもらえるような書き方をしたい。でもそこがあまり難航するとスタートも遅れる。告知の方法やタイミングも難しかったです。SNSは書き方や時間帯によって閲覧者数がだいぶ変わるので。経過報告の文章をいつツイートするかとか、もう少し緻密に考たかったいうのが反省点です。

――1回目と2回目ではどうでしたか。1回目は89名の方から727,000円、2回目は204名の方から1,722,000円と、2回目は2倍以上にプロジェクトが大きくなっているのも特徴的です。

松本: 初回のMV制作は目標金額が20万だったのですが、始める前はどれくらいの方が支援して下さるのか予想がつかなかったので、不安で仕方なかったです。それが、開始から3日で達成してものすごく驚きました。支援してくれた方々自身も驚いていました(笑)元々、経費の一部分だけをクラウドファンディングで集めてあとは自費で、と考えていたので、キャリーオーバーは本当に有り難かったです。 

初めてのクラウドファンディングで、勝手がわからないところもたくさんありました。ブルーレイ2枚とか、トートバッグとか、特典を付けすぎてファンの方から逆に心配されたり(笑)何より大変だったのは発送作業です。そんなに部屋が広くないんですけど、床が見えないくらい小包でいっぱいに…(笑)手伝ってくれた友人がいたからできました。郵便局からまとめて出したのですが、郵送代の高さに驚愕。ブルーレイだけだったらそんなにかからなかったと思うのですが、トートバッグもあったので結構重さがありました。ブルーレイは特典のためだけに作り、販売はしていません。 

2回目はアルバム制作でしたが、ジャケットの紙質やレコーディング環境にこだわったり、リリースワンマンライブの制作費も込みだったので、最初から高めの目標金額設定をしてしまいました。こちらも正直、達成できるのか、とても不安でした。MV制作の時と違って、すぐに目標達成!とはいかず、約一ヶ月かけてゆるやかに集まった印象です。MVと違って、CDは売価にある程度の相場があるじゃないですか。そのせいか、「先行予約」のような気持ちで支援して下さる方が多かったのかもしれません。少額ずつ、たくさんの方が支援してくださいました。制作するものによって、そこは慎重に考えなくてはいけないと思います。

「リクエストでつくる、あなただけの30秒自撮りムービー」などオリジナルなリターンも設定

「普通に考えたら無理でしょ」という夢も叶えられるツール

――最後に、今後どんな活動をしていきたいかについて教えてください。

松本:今後もフリーでやっていくと思います。事務所やレコード会社に所属していないからこそできる、ということにどんどんチャレンジしていきたいです。セルフプロデュース型のアーティストは、これからどんどん増えていくんじゃないでしょうか。 

クラウドファンディングというのは世間一般で「無理でしょ」と思われているようなことが叶えられるツールだと思います。どんな人でも、やりたいことを諦めずに挑戦できる世の中になる可能性。モーションギャラリー内部でも、プロジェクトを実行した人同士が集まったらすごく濃い話ができて面白いんじゃないかと思います。目標達成することだけが成功じゃないし、表面だけ見てもわからない部分がたくさんある。それぞれが過程にドラマを持っている。そのすべてが「文化」だなって私は思うのです。私はここでまたやりたいと思っています。

プロフィール

松本佳奈

<略歴>
2007年 東京都内で活動を開始 2009年 1stミニアルバム『Strings』をリリース 2011年  生まれ故郷の木更津に拠点を移し、2ndミニアルバム『昼下がり、旅日和』をリリース。 2013年 3rdミニアルバム『生きているだけの価値』をアソルハーモニクスforestimeレーベルより全国リリース。 2014年 4thミニアルバム『死んだように生きるのはもうやめた』をベルウッドレコードCocktailレーベルより全国リリース。同月に渋谷duo MUSIC EXCHANGEにてリリースワンマンライブを開催、300名超えの超満員御礼となる。 2015年 新大久保R'sアートコート労音会館にて初の弦楽四重奏とのホールワンマンライブを開催。満員御礼。

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MotionGallery編集部

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