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LIVE&EVENT - 2019.05.24

人口約6300人の西会津町にある集落が面白い。"町のキッチン"併設のゲストハウス #13 福島

MotionGalleryとゲストハウス紹介サイトFootPrintsとの共同企画として、日本各地のゲストハウスを旅しながら毎月開催している「ローカルクリエイター交流会 -Guesthouse Caravan-」。第13回は、2019年2月18日(月)福島県西会津町にある「ゲストハウスひととき」で実施させていただきました。

日本各地のゲストハウスをめぐり、地域のクリエイターたちが垣根を越えて出会える場を開くことで、新たなプロジェクトの芽を育もうとする企画「ローカルクリエイター交流会 -Guesthouse Caravan-」。イベントを開催し、前後日程でまちめぐりも行っています。

第13回となる今回訪れたのは、福島県西会津町の上野尻(かみのじり)という小さな集落にある「ゲストハウスひととき」です。運営者は、佐々木 祐子(ささき・ゆうこ)さんと雄介(ゆうすけ)さんご夫妻。元桐下駄屋の空き家をリノベーションし、2018年5月に宿を開業。先日、"町のキッチン"となるカフェ&バーもオープンしました。

近年、1泊より1杯という気軽な来店動機を生み出せることからも、カフェ&バーを併設するゲストハウスが増えています。しかし「ゲストハウスひととき」は、他とはちょっと違った経緯から併設を決意。小さな集落でゲストハウスを開業した理由や、さらに1周年を迎えるタイミングでカフェ&バーをつくった背景などを伺いました。

動画には、交流会からまちめぐりまで、キャラバン全体の様子をまとめています。

地域のみんなでつくる「ローカルクリエイター交流会」第13回 in 福島

このキャラバンは、MotionGalleryによる「日本各地で誕生しようとしている熱いプロジェクトにエールを送りたい」という思いと、FootPrintsによる「ゲストハウスを通じて、暮らしの選択肢が広がるきっかけを届けたい」という思いを組み合わせて実施しています。

キャラバン隊として毎月各地をめぐるのは、FootPrintsを運営する前田 有佳利(dari)と、コンセプト「あなたのまちに、新しい映画体験を」のマイクロシアターサービスpopcornに携わる梅本 智子(moko)。MotionGalleryの専属サポーターでもあるdari&mokoが、ゲストハウスの方々にご協力いただき、「ローカルクリエイター交流会」を開催しています。

今回は、チャイ屋「楽屋」の樋口 裕一(ひぐち・ゆういち)さんが、舞台美術のようなカウンターで挽き立てのチャイを提供してくださったり、"上野尻のマドンナ”と言われた集落のお母さんが、前日から仕込んだおでんを振る舞ってくださったり。まるで佐々木さん夫妻と地域の方々との関係性の濃さを表すような、みんなでつくる交流会となりました。


「ゲストハウスひととき」の共有スペースをお借りして、イベントを開催しました


「楽屋」の樋口さん。その時のテーマに合わせて、服装から音楽まで揃え、空間をつくるアーティストです


ダシの染みたおでん。唐揚げやおにぎり、地元の食材をつかったおひたしなども振る舞ってくださいました

故郷である福島のために。学ぶ体験とともに出会いを届けたい

福島県郡山市出身の祐子さんは、以前まで東京にある制作会社や出版会社などに勤めていました。2011年の東日本大震災を受け、「故郷である福島のために何かしたい」と思い、原発事故で大きな被害を受けた南相馬市で福島の復興に力を入れる「一般社団法人あすびと福島」に入社。そこで、同じ境遇の雄介さんと出会い、意気投合をして結婚しました。

その後、2人で話し合いを重ね、「福島に遊びに来てくれた友人たちがもっと気軽に泊まれるように、ゲストハウスをつくろう」という結論に至ります。2017年に「地域おこし協力隊」として西会津町に移住し、並行して宿の開業準備をスタート。2018年の開業後、平日は協力隊・週末はゲストハウスオーナーとして日々を過ごし、2019年4月からは祐子さんが「地域おこし協力隊」を卒業し、ゲストハウスを本格始動させています。

祐子さん

福島県内で高齢化トップ5に入る西会津町ですが、ここ数年注目が集まり、面白い人材が集まりつつあります。その流れを生み出しているのが、廃校の木造校舎を活用した「西会津国際芸術村」です。アーティストインレジデンスの受け入れや移住相談窓口、「地域おこし協力隊」の活動の拠点にもなっていて、かく言う私たちも、この「西会津国際芸術村」を訪れたことをきっかけに、このまちへ移住を決めました。


毎年平均1m40cmの雪が積もる西会津町。今年は暖冬だったので、この一面の雪景色でも雪が少ない方だそう


高齢化の事実が信じがたいほど、交流会には30代前後の方々が大勢集まり、祐子さんの話に聞き入っていました


まちの記憶を継ぐために廃校となった木造校舎を活かした、クリエイティブセンター「西会津国際芸術村」

祐子さん

そして、上野尻も、今とても面白くなっています。宿の共有スペースに飾っている絵を描いてくれたのは、ニューヨークから移住してきたグラフィックデザインユニット「ITWST」のご夫婦。この近くで、コミュニティスペースと本屋を備えたプリントショップ「バーバリアンブックス」を営んでいます。また、今回チャイ屋を出店してくださった樋口さんも、ご近所さんで移住者なんです。

上野尻の地域の人たちは、私たちのような若い移住者を快く受け入れてくださって。田植えや稲刈りを教えてくれたり、お祭りではお神輿を一緒に引かせてくれたり。落語家の友人にイベントをしてもらった時は、集落のみんなが集まってくれました。こんなにあたたかく迎えてくださる地域に住まわせてもらえて、すごく幸せです。


元呉服屋をリノベーションして「バーバリアンブックス」を営む、「ITWST」のモモさんとウィルさんご夫妻

地域の人々へ恩返しをするように「学ぶ体験とともに出会いを届けられる場になりたい」と祐子さんは話します。東京時代、ユニークな講義を展開する大人の学びの場「自由大学」で講義を受けたことがあったそう。その時の出会いがゲストハウスという思いの実現を後押ししてくれたことから、今度は誰かの思いを後押しできる場を提供したいと考えています。

"町のキッチン"に通ずる地域のニーズと、確かな手応え

地域の人々や旅人との関係性を豊かにするように、学びを含む数々のイベントを企画し、柔軟に対応をしてきた「ゲストハウスひととき」。すると、"食"が関係性のハブになりやすいことから、近隣住人から"食"にまつわる新たな要望が集まるようになっていきました。

祐子さん

昼にふらっと来てお茶が飲めたらいいなとか、夜はボトルキープして缶詰さえ置いといてくれたらいいからさとか(笑)。開業まもないうちから、ご要望をいただける関係になれたことが、次のステップへ踏み出す勇気になりました。私たちも、東京にいた頃のように仕事に集中できるカフェが身近にあったらいいなという思いもあって、宿の土間を使ってカフェ&バーをつくろうと考えました。


カフェ&バー新設前の土間の状態。今までワークショップの場として使用していました(画像提供:ひととき)

過去に、県外のパン屋に勤める友人とパンのイベントを宿で開催したところ、1時間で200個を完売。会津若松でバーを営む店主にクラフトビールやクラフトジンを販売してもらったところ、これまた盛況。これらの手応えもあり、飲食業を始めることを決意しました。

カフェ&バーをつくるにあたり、祐子さんと雄介さんはクラウドファンディングにも挑戦。「旅人と地域の人が『ふくしまの食』を通して交流を」をテーマに掲げ、"町のキッチン"という役割を目指して掲載したところ、155人から1,667,000円を集める大反響に! 達成当日は、人に会う度に「おめでとう!」という明るい第一声で会話が始まっていました。


リターンには、宿泊券付きの「ひととき遊びにいくよ!コース」なども。新たな来客につながっています

目指す未来は、福島が"みんなのふるさと"になること

最後に、「ゲストハウスひととき」が目指す3つの未来について話してくれました。

祐子さん

上野尻は昔、新潟と会津を結ぶ越後街道という宿場町でした。かつて旅人が行き交った場所を、旅人や地域の人々で賑わう場所として復活させたいというのが1つ目です。

2つ目は、上野尻を夢の叶えられるまちにしたい。この集落には空き家がたくさんあります。宿泊をきっかけに「この空き家で自分もチャレンジしてみたい」という思いが生まれたらいいなと。また、田舎なので子どもたちが接する大人の職業が少なく、夢の選択肢が狭まりがちです。だから、出会う大人の職業をもっと増やしていきたい。その1人として、自分の生きる道を子どもたちに伝えたいと考えています。

そして、3つ目。私たちは震災をきっかけに福島に戻ってきたので、1人でも多くの人に福島に行こうと思ってもらいたいし、1人でも多くの人に福島に生まれて良かったと誇りを持ってもらえる未来を目指したい。そんな思いを込めながら、この場所で、ゆるやかな"ひととき”をこれからも提供していきたいと思っています。

今、このまちには、既存の文化を大切にしながら新しい風を吹かせようと挑戦する仲間が続々と増えつつあります。そして、そんな彼らをあたたかく迎え入れてくる地域の人々がいます。思わず暮らしたくなる"みんなのふるさと"をつくるには、この両者が手を取り合うことが大切なのだと、今回のキャラバンを通じて実感させられました。


2019年5月1日、カフェ&バーを無事オープン。早くも多くの人々が訪れ、賑わいを見せています(画像提供:時さえ忘れて)

"町のキッチン"となるカフェ&バーをオープンし、さらにパワーアップして福島の魅力を発信する「ゲストハウスひととき」。彼らの目指す未来が実現する日は、そう遠くないかもしれません。

そして私たちのキャラバンは、今後もまだまだ続きます。

次はきっとあなたの街へ。

(text/photo:前田 有佳利)


この記事を書いた人

MotionGallery編集部

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