MotionGalleryは、クリエィティブ分野のさまざまなジャンルのプロジェクトの資金調達を行っています。音楽のジャンルもそのひとつ。6枚目のシングルCDとMVの制作資金をMotionGalleryを通じて調達に成功した、音楽ユニット「ハルトラ(陽香& The Super Traffic Jams)」のボーカル、陽香さんにお話を伺いました。主に府中や国分寺の駅前でライブ活動を行い、着実にファン層を広げてきた「ハルトラ」。さらなる飛躍をかなえたクラウドファンディングについて、振り返っていただきます。
ハルトラは、ボーカルの陽香さん、ギターのYa'mangelo(ヤマンゲロ)さんの2名からなるユニット。当時、二人はロサンゼルスの音楽学校に留学しており、同郷ということもあり意気投合、帰国後にハルトラが生まれました。最新作となるシングルCD「今、風になる」を制作するためにクラウドファンディングを行いました。
自分たちの力を試したくてインディペンデントの道へ
―― 結成のいきさつを教えてください。
陽香:18歳のときに渡米して、ロサンゼルスの音楽学校でボーカルのレッスンを受けていました。講師はケビン・レトーという、セルジオ・メンデスと一緒にやっていたアーティストで、私の憧れのボーカリストでした。その時期同じ学校でギターを学んでいたのがYa'mangeloでした。帰国後、同じ学校にいたベーシストも加わり最初は3人でバンドを組んだんです。メンバーの変遷を経て、現在はYa'mangeloと2名でやっています。
―― 現在は主にストリートで活動されているそうですね。
陽香:ストリートをやりだしたのは2年前からです。事務所に所属したのを機にストリートを始めました。給料制でしたが余裕はなく、固定給なので1枚でも多く売ってやるぞ!というガッツが湧くに湧かない状況でした。その為、自分たちの力を試したく事務所を離れる事を決めました。
独立してからは、自分達で営業をし音楽を作り売って行く。というふうにやる様になりました。最初は大変だったんですが、現在は音楽を通して沢山の方に出会い応援して貰える様になり、やり甲斐や楽しさを感じながら活動出来る様になりました。
いま、主に活動しているのは、京王線沿いと中央線沿い。仙川や国分寺、武蔵境、吉祥寺でストリートライブを行っています。新宿や渋谷でもやるのですが、人が多過ぎるしストリートライブをやっている人が居て当たり前。街中のあらゆるスピーカーから音が溢れ過ぎていて、中々立ち止まる迄に至らないです。忙しい人も多いから。
ただ、東京の西側の方は、仕事帰りにふと足を止めて聴いて下さったり、次の予定を聞いてくれたりと非常に反応が良いです。仕事で疲れ、電車で帰って来て駅を降りた時に鳴っていると、割と皆さんスッと音楽が耳に入る様です。少しづつCDも売れる様になったり応援して下さる方がついてくれる様になりました。6作目となる作品を作ろうとしましたが、足らない制作費はクラウドファンディングで募ってみよう!という事になりました。
あっという間に集まった、目標の2倍近くのCD制作費
―― なぜ、クラウドファンディングをしようと思われたんですか?
陽香:1年前に前作を作ったのですが、CD製作には100万円単位でお金がかかるんです。しかし持ち合わせがなく親族に借金をして制作資金を調達しました。でも身内からお金を借りる事にも非常に抵抗がありました。応援して下さる方々のお陰でCDの売れ行きは良く予定よりも早く返す事はできたのですが、次の作品はどうにかして親族にお金を借りずに形にしたいと思うようになりました。そこでYa'mangeloの友人が「こんな方法があるらしいよ」と、クラウドファンディングを提案してくれたんです。じゃあ、やってみよう!と。
クラウドファンディングをはじめるにあたって、MotionGalleryは、音楽に実績があり知人がすでに利用していたり、facebookでいいね!をしていたり、もちろん手数料が低い魅力などもありましたし、 SHUUBIさんのプロジェクトなども拝見して、うまく運びそうだと思ったんです。
始めようと思ってからはバタバタ慌ただしかったです。CDはクラウドファンディングが失敗してしまったらCDの質を落とすしかない。募集期間も1ヶ月弱と比較的、他のプロジェクトよりも短かった。本当に必要な経費は120万円なんですが、その中で自力ではどうしても捻出できなかった472,500円をクラウドファンディングでの目標金額に設定しました。
―― その短い期間で目標を遥かに上回る820,500円もの調達に成功したんですね。
陽香:ライブ会場でもクラウドファンディングが始まる2〜3日前に1度告知しました。との時のお客さんは確か70名位でした。FacebookとハルトラホームページにもMotigonGalleryへのURLを貼り付けただけだったんです。この方は絶対に協力してくれる!と思った方には、私がピンポイントでメールを送りましたが、それ以外は特に何もせず。チラシなども1枚も配りませんでした。
でも正直な所「1円も集まらないかも知れない。それならそれで、しょうがない。」と初めから全く期待はしていませんでした。1回やるだけやってみよう!という事だったので。
でも、最初の1週間で目標額に到達してしまいました。本当に驚きました!!
ファンドに参加して下さった方々は、ストリートライブによくいらっしゃる方々でした。コチラからのリターン発送の時に「あ、あの人だ」「この人だ」って、知ってるお名前が沢山ありました。
クラウドファンディングで見えたファンとの信頼の絆
―― クラウドファンディングは、まだまだ知られていない仕組みですが、参加してくれる方が多かったんですね。
陽香:実際には「僕分からないから、クレジットカードを持っていないから」と、声をかけてくれて現金を持って来て下さったり、直接コチラへ振込をして下さった方々もいました。本当にありがたかったです。クラウドファンディングって、仕組み自体もまだ浸透していないし、ネットでお金をやりとりする事もハードルが高い。だからこそ自分の思いをシッカリと言葉にし、「実現したい事はコレで、その為にはコレだけのお金が必要で、それぞれの金額に設定した特典はコレです!皆さんにはコレだけ楽しい事も戻ってきます」というのを提示する事が大切だと思いました。
参加しようと思ってくれる人も不安だと思います。「クラウドファンディングははじめてだし、クレジットカード番号を入力する事自体もちょっと不安だった。でも、ハルトラさんに対する信頼があるから入れる事が出来た」と言ってくれたファンの方がいらっしゃったんです。 その時に、信頼して下さる方がいたんだ!今迄のライブや、やりとりの中で信頼を作っていけていたんだ!と嬉しくなりました。だから、コレからこの信頼をもっと強いモノにしていかないといけない!って、強く思いました。クラウドファンディングってそういう信頼関係が一番大切なんだな、と後で教えて貰いました。
―― いままでの活動で作っていけた緩やかな絆が、クラウドファンディングでしっかり見えるようになったんですね。
陽香:クラウドファンディングという仕組みそのものもおもしろいと思います。単にファンへのカンパを募るんだったら、ストリートでもライブ会場でも出来ますが、クラウドファンディングのサイトに活動や試みを掲載する事で、他のファンドをしようとした私達を知らない方にも「ハルトラ」というバンドがいることを知って貰える。新しいファンを作るキッカケにもなり得ます。
応援して下さる方々にも「こんな活動してるんだよ」という事を、漠然とではなく、キチンと理解して貰える。CD完成迄にはアレンジ、録音、ミックス、マスタリング等の工程があり…、というのをライブ会場で説明すると何十分もかかってしまう。だから「CD製作中です」としか言えない。でも本当は、こんなに素晴らしい人達がCD制作に関わっている!という事も知って欲しい。
なのでクラウドファンディングのページではしっかりそのあたりもお伝えしたのですが「ああ、こんな人にお願いしてCDをつくるのね」「CD製作ってこんなにお金がかかるんだ」って理解してくれて「じゃあ一肌脱ごうか!」という方もいらっしゃった様です。
特典でシークレットライブがある事をクラウドファンディングのページを見て知ってくれて、そこで参加を決めて下さった方も多かった様です。
Facebookをなんとなく見ている方や、そんなに普段はやりとりしない友達からも「なんか凄いね!」「達成しなさそうだったら入れようと思ったけど、アッと言う間に達成したね」っていうメールを頂きました。 クラウドファンディングを行う事で、ハルトラそのものも盛り上げる事ができた。応援して下さる方々との一体感も作り出せたので、とても良かった!思っています。
ただ、それ迄のハルトラFacebookの投稿に対しての いいね!の数が急激に減りました。プラスの事ばかりではない!という事も事実です。
アーティストとリスナーが直接つながる世の中になってくる
―― そしてすでにアルバムは完成しているんですね。
陽香:クラウドファンディングが成功した事もあり、比較的早く完成しました。先日、リリースライブを調布で開催しました。ファンドに参加して下さっていた方には、直接手渡しする事が出来ました。実際にお会いしてお礼を伝えられて良かったです。地方の方やライブに来られなかった方にもお送りできたので、比較的早く完結できました。
リリースライブ@Rach
―― シングルCDなのに7曲も入っているんですね。
カラオケも3曲入っているので。ポイントは「ハルトライアル」という、私達の音楽の凝縮版で、2013年から2014年までに作った作品の聴きどころを10秒、15秒づつカットして、まとめて入れているんです。ストリートライブでこのCDを買って下さった方へ、もっとハルトラを知って欲しいと思い作ったモノなんです。
「今、風になる」は、じつはトライアスロンをテーマにしているんです。歌詞はスイムからはじまって、バイク、ラン、という流れなんです。榛名湖トライアスロンというのが群馬県にあり、通称ハルトラって言われています。
同じ名前だし、もしかしてココにアプローチしたらおもしろいと感じてくれて、なにか一緒に出来ないかな?と思いアプローチしました。その結果、ハルトラの楽曲を気に入って下さり、今年の夏に榛名湖トライアスロン(はるトラ)へ行き、ステージで演奏する事が出来ました☆
―― 自分たちでタイアップ先を想定して制作できるようになったら、レコード会社も広告代理店も必要がなくなっていきますね。
陽香:今後、CDというもの自体に価値がなくなっていく世界になっていくと思っています。 既にCDは買われない時代に突入していますし、曲を買うといえば、iTunesなどの音楽配信。YouTubeなどで無料で聴き、そこで終わりという方も多い。更に世の中では今以上にレコード会社などの存在は不必要になり、アーティストとリスナーとの繋がりがより大切になってくると思うんです。ハルトラが今の活動を続けるには、いかにライブに来て貰えるか!が勝負になっていくんだと思います。ハルトラのライブを観に来て下さる方を何よりも大切にしていきたいです。この先大きなステージに立つチャンスを掴みたい!と思っています。でも負け組の遠吠え、売れてから言え!と思う方が沢山いらっしゃるかもしれませんが、売れる為の音楽を作りたい!とは思いません。売れている音楽でも良くないモノが沢山ありますし、売れていなくても素晴らしい音楽は沢山あります。今後は自分達にしか表現出来ない、自信を持って良い!と思えるものを模索し確立して行きたいと思っています。有名な人は良い!無名な人は良くない!という判断基準の方にとってハルトラは良くない。色んな価値観の方がいて当然ですし、その考え方を否定している訳ではありません。判断基準が自分の耳で、聴いて心に響くかどうかで、その結果 良い!と思って下さった方がハルトラを応援して下さっています。今後もそういう方と出会う為にストリートライブやライブを地道に続け、少しずつ規模を大きくして行けたらと思います。
―― 今後はどのような音楽を作っていく予定ですか?
陽香:秋くらいに新しいCDを出したなとは考えています。そのときはギターとマンドリンとボーカルだけ。ちょっとアコースティックな感じのモノを作ってみようかと構想を練っています。元々、エラ・フィッツジェラルドやケビン・レト―の様なジャズが好きなのですが、加えてビヨンセやアリシア・キース、あと槇原敬之や玉置浩二も大好きです。アーティスト性が見えるというか、人となりが見える音楽が好きです。その様なアーティストになっていきたいと思っています。
ハルトラ (陽香 & The Super Traffic Jams)
ヒーリング効果を与える声と言われている「1/fゆらぎ声」を持つHaruka(Vo) 恍惚感と絶望感を与える「ゲロ節」を操るギタリストYa'mangelo(Gt) 2人からなる『ハルトラ』(陽香 & The Super Traffic Jams) LAで知り合い結成。 カーペンターズのカバーを発売し、iTunesやレコチョクで特集され好評を得る。 「Alice」は OLYMPUS×my spaceアートソングフィルターコンテストにて1000曲の中より優秀作品に選ばれる。 フジテレビワッチミーTVとTokyoFM系東京ベイサイド主催 「新人オーディションODAIBA MUSIC FACTORY」にてグランプリを受賞。 「繋がる想い」「Every Little Kisses」「Because You Smile」「今、風になる」全4曲が全国コミュニティFMのパワープレイに選ばれる。 吉祥寺シアターにて行われた「吉音コンテスト」にて準グランプリを受賞する。 OLYMPUSフォトシネマ「星空の世界へ」の挿入歌に「朝陽の中で」が採用される。 武蔵野公会堂でのワンマンライブを成功させ、その模様を収録したLIVE DVD「The Live」を発売。 初のシングル「今、風になる」をリリース。渋谷ビジョン DHC channelにて「今、風になる」のPVが1ヶ月間放映される。