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LIVE&EVENT - 2018.08.18

始まりはお土産のデザイン。世界中に呉市の魅力を伝播する“旗じるし”をつくるゲストハウス #02 広島

MotionGalleryとゲストハウス紹介サイトFootPrintsとの共同企画として、日本各地のゲストハウスを旅しながら毎月開催する「ローカルクリエイター交流会 -Guesthouse Caravan-」。2018年2月27日(火)に実施した第2回の舞台は、広島県呉市にある「旗呉FLAGS(はたごフラッグス)」です。そこには、お土産のデザインから思い出のデザインへと広げ、地元の魅力を発信する“旗じるし”となる人々を世界各地に増やそうと励む姿がありました。

日本各地のゲストハウスをめぐり、地域のクリエイターたちが垣根を越えて出会える場を開くことで、新たなプロジェクトの芽を育もうとする企画「ローカルクリエイター交流会 -Guesthouse Caravan-(以下キャラバン)」。

第2回は、広島県呉市「 旗呉FLAGS」で開催しました。9つの峰(九嶺)に囲まれた地形から、その名が付けられた呉(くれ)。戦前は海軍の拠点が置かれる軍港、戦後は日本に4市だけ存在する平和産業港湾都市として、歴史を刻んできた港町です。その玄関口となるJR呉駅から歩いてすぐの場所に、旗呉FLAGSがあります。

横幅のある2階建てのビルをリノベーションした、コーヒースタンド併設のゲストハウス。今年2月3日から宿泊の受け入れを開始した宿です。1階には、戦前から続く老舗弁当屋「官有〇番 山崎家(かんゆうぜろばん やまざきや)」と、居酒屋も入っており、地元の人々にも親しまれています。

今回のキャラバンのレポートでは、一点集中型の日帰り観光の流れを変えるべく、街の魅力を再発掘しようとする、旗呉FLAGSについても詳しくご紹介します。

キャラバンの記録を動画でまとめました。記事とあわせてどうぞ

第2回、地元のまちづくり関係者から県外の宿オーナーも集う交流会に

このキャラバンは、MotionGalleryによる「日本各地で誕生しようとしている熱いプロジェクトにエールを送りたい」という思いと、 FootPrintsによる「ゲストハウスのある旅を通じて、暮らしの選択肢が広がるきっかけを届けたい」という思いを組み合わせて実現しています。

当日のホスト役は、FootPrintsを運営する前田 有佳利(dari)と、"あなたのまちに、新しい映画体験を"をテーマに掲げるマイクロシアターサービス popcornの立ち上げメンバー梅本 智子(moko)。MotionGalleryの専属サポーターでもあるdari&mokoユニットが、各地のゲストハウス運営者のご協力を得ながら、ローカルクリエイターたちに会いに行っています。

第2回も、初回同様に満員御礼。呉のまちづくりに関わる方が非常に多く、空間デザイナーや地域情報のメディア製作者、さらに呉らしく海軍の制服をつくる会社の方などもいました。また、翌日から広島市内で「 ゲストハウスサミット」という企画が開催されたため、東京・千葉・長崎など遠方のゲストハウスオーナーも前乗りして多数参加してくれました。

旗呉FLAGS。1階には居酒屋と空間を共有したスタンドコーヒー、2階にはゲストハウスがあります

イベントは2階の交流スペースで開催しました。二次会後は街へ繰り出し、川沿いにある屋台のラーメンで〆

お土産づくりから始まった。呉のまちづくりチーム「Blue Project」

参加者同士がアイデアや刺激をフラットに共有できる場づくりをと、いつもキャラバン冒頭では、dari&mokoとゲストハウス運営者から、それぞれの活動の原点をプレゼンしています。今回、旗呉FLAGSのオーナー上田 満也(うえだ みつや)さんが教えてくれたゲストハウス誕生の経緯を振り返りながら、この地域に向けた思いを紐解いていきましょう。

広島市内でホテルマンの経験を積み、転職をしようと地元呉市に戻ってきた上田さん。長年離れていた地元のことを知るべく、呉で最も有名な観光スポット・呉市海事歴史科学館「大和ミュージアム」のショップの運営に携わることにしました。

来場客や取引企業の人々と日々会話を交わすうちに、呉の魅力をお土産という形に込めることで、呉をもっとアピールできるのでは?というアイデアが浮かんだといいます。

上田さん

お土産を買って帰った人たちが、それと一緒にお土産話をして、全国各地に呉の魅力を広めてくれる。そんなコンセプトのもと、地元の企業やアーティストたちと一緒に「 Blue Project」というチームをつくって、お土産づくりを始めたんです。

Blue Projectの活動は、商品デザインからイベントへ発展。大和ミュージアム前の広場を使ってマーケットも開催。Blue Projectはまちづくりチームとして、仲間の輪を広げていきました。それが2012年のこと。世間で地域おこしやリノベーションという言葉がようやく認知され始めた頃に、すでに組織が確立されていたというから驚きです。

そして、このBlue Projectでの6年間の活動が、旗呉FLAGS誕生の礎となります。

上田さん。現在、Blue Projectのメンバーは10名少々。30代40代が多く、55歳の上田さんは最年長だとか

呉市海事歴史科学館大和ミュージアム。エントランス横の大きなお土産売り場が上田さんのもう1つの職場です

日帰り観光に終止符。ゲストハウスの運営を通じて、街の魅力を再発掘

呉を訪れる人々は、大和ミュージアムを目的とした数時間の日帰り観光がほとんど。呉駅を挟んで反対側にある商店街にも人の流れをつくろうと、年間100万人を超えるインバウンドシティ・広島市から呉まで電車で約30分ということも考慮して、グローバルかつ地域と密接したゲストハウスをつくることにしたのです。

上田さん

特に海外の人の目から見た呉の魅力とは何か。それは僕らじゃわからない。だから、ゲストハウスという接点をつくることで、海外ゲストに訪問の目的や、どこから来て次はどこへ行くのかを聞いたり、彼らのSNSの発信を見たりすれば、答えが見えてくるんじゃないか。また旅人のニーズを聞くことで、必要なものを地元にフィードバックできるんじゃないかって思ったんです。

呉を訪れる人々の新たな流れを生みながら、次のまちづくりのアプローチにつなげるべく、ゲストと会話のしやすいコーヒースタンド併設のゲストハウスをオープン。場づくりにはBlue Projectを始めとする多くの地元の人たちが関わっています。

建築のデザインやロゴのグラフィックから、1階のコーヒースタンドで提供されるコーヒーやカレー、2階のコミュニティスペースに飾られた地元作家の作品に至るまで、その関わりは一言では言い尽くせないほどです。

通訳ガイドの経験を持つ妻の美紀さん。日本語・英語・中国語を話す香港出身のスタッフなどもいます

コミュニティスペースに展示された作品の1つ。商店街にある「ほんまる珈琲」4代目の女性がキュレーターです

前職ホテルマンだった上田さんの経験がベースとなっているため、宿泊施設としても快適でした

世界各地に、呉の魅力を広めてくれる“FLAG”たちを増やしたい

こうしてオープンを迎えた旗呉FLAGS。最後に、その名前の由来を伺いました。

上田さん

「旗呉(はたご)」は、宿屋を示す昔ながらの言い方「旅籠(はたご)」に漢字を当てたもの。僕がもともと考えていた「FLAGS(フラッグス)」という言葉にちなんで、妻が宿や街のイメージと重ねた漢字を加えてくれました。

フラッグというのは、“旗じるし”という意味です。このゲストハウスを訪れた世界各地の人たちが、呉の思い出を自国に持ち帰り、思い出話をすることで、世界中に呉の魅力を伝えてくれる旗が増える。だから旗の複数形なんです。

仲間たちと一緒に築き上げたBlue Project。お土産と一緒に思い出を持ち帰り、呉の魅力を全国各地に広めてもらおうというコンセプトの思いが、ここにもつながっているのです。

イベント翌日、上田さんのご紹介で、 NPO法人呉サポートセンターくれシェンドに務める小野 香澄さんが呉の街案内をしてくれました。劇場用長編アニメ「この世界の片隅に」の舞台でもある呉。歴史的建造物や長年愛される地元の味、世代を超えて受け継がれているものが多く、観光名所を訪れるだけの日帰りではもったいないと体感させられました。

旗呉FLAGS近隣の「森田食堂」からスタート!「この世界の片隅に」で声優を務めた女優のんさんも来たそう

旧呉海軍下士官兵集会所。終戦まで旧海軍エリアと呉市街地の境界となっていたシンボリックな場所です

呉YWCA。戦時中は海軍の倉庫、戦後は進駐軍の将校が使用した建物。現在は街の憩いの場となっています

商店街の様子。UターンやIターンをした人たちが、雑貨屋やカフェなどを出店し、賑わい始めています

お土産のデザインから、思い出のデザインへ。世界中に“旗じるし”を広げつつ、街の観光に新たな流れを生み出そうとする姿がここにありました。このレポートを読んで、呉のまちづくりについて気になった方は、旗呉FLAGSを拠点に、呉を訪れてみてください。帰宅する際は、お土産と思い出のテイクアウトをお忘れなく。

そして私たちのキャラバンは、今後もまだまだ続きます。
次はきっとあなたの街へ。

(文/写真/動画: FootPrints 前田 有佳利

※ 残念ながら、やむを得ない事情により、2018年10月21日をもって「旗呉FLAGS」は閉店しております。


この記事を書いた人

MotionGallery編集部

MotionGallery編集部です。

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