facebook hatenabookmark line motiongallerymagazine next prev top twitter

LIVE&EVENT - 2018.07.23

開業約1年にも関わらず、地域と深い絆を結ぶ理由。神戸灘区に誕生したゲストハウス #01 兵庫

MotionGalleryとゲストハウス紹介サイトFootPrintsとの共同企画として、日本各地のゲストハウスを旅しながら毎月開催する「ローカルクリエイター交流会 -Guesthouse Caravan-」。2018年2月22日(木)に実施した第1回の舞台は、兵庫県神戸市灘区にある「神戸ゲストハウス萬家」です。当日の様子だけでなく、所縁のなかった地を“第二の地元”に変え、さらに宿泊者へ“第二の地元”として提案する、ゲストハウスオーナーの取り組みにも注目。

日本各地のゲストハウスをめぐり、地域のクリエイターたちが垣根を越えて出会える場を開くことで、新たなプロジェクトの芽を育もうとする企画「ローカルクリエイター交流会 -Guesthouse Caravan-(以下キャラバン)」。

第1回の開催地である 神戸ゲストハウス萬家(以下MAYA)は、賑わうJR三ノ宮駅から1つ隣の灘駅を最寄りとしています。MAYAの目の前には、阪急電車の王子公園駅から春日野道駅にわたる高架下の空きスペースを活用して、続々とクリエイターが店舗や工房を構えていると近年注目の「灘高架下エリア」。さらに神戸市内屈指の規模を誇る水道筋商店街にも歩いてすぐという興味深い場所に位置しています。

なぜ生まれも育ちも韓国・ソウルのオーナーが、かつて診療所兼住居だった灘区の空き物件に出会い、ゲストハウスを開業したのか。なぜ開業して約1年にも関わらず、商店街と連携して食べ歩きツアーを実施できるほど地域の人々と良好な関係を築いているのか。

そんなMAYAの誕生ストーリーや現在に至るまでの秘訣を、第1回となるキャラバンのレポートを通じてご紹介いたします。

キャラバンの記録を動画でまとめました。記事とあわせてどうぞ

第1回、異国情緒漂う港町・神戸らしい交流会に

このキャラバンは、MotionGalleryによる「日本各地で誕生しようとしている熱いプロジェクトにエールを送りたい」という思いと、 FootPrintsによる「ゲストハウスのある旅を通じて、暮らしの選択肢が広がるきっかけを届けたい」という思いを組み合わせて実現しています。

当日のホスト役は、FootPrintsを運営する前田 有佳利(dari)と、"あなたのまちに、新しい映画体験を"をテーマに掲げるマイクロシアターサービス popcornの立ち上げメンバー梅本 智子(moko)。MotionGalleryの専属サポーターでもあるdari&mokoユニットが、各地のゲストハウス運営者のご協力を得ながら、ローカルクリエイターたちに会いに行っています。

第1回は、イベントページを立てて約1週間で満員御礼になりました。参加者は、神戸在住者のほか、滋賀県や福島県など遠方の方々も。また、映画を製作している方や、インバウンドメディアでライターをしている方、国内外の事例を学びつつアートを用いて社会課題を解決しようと取り組んでいる方など、異国情緒漂う港町・神戸らしく、海外とのつながりも垣間見える多彩な顔ぶれとなりました。

イベント当日の様子。プレゼンと交流会を1時間ずつ実施しました。参加者は約20名

二次会は、宿から高架下をくぐったところにある「居酒屋 やぐら」にて。家族経営の良い雰囲気のお店でした

MAYAの誕生ストーリー。20年前の日韓学生交流会がはじまり

参加者同士がアイデアや刺激をフラットに共有できる場づくりをと、キャラバン冒頭では、dari&mokoとゲストハウス運営者から、それぞれの活動の原点をプレゼンしています。今回、MAYAのオーナー朴 徹雄(パク チョルン)さんが教えてくれたゲストハウス誕生の経緯を振り返りながら、この地域に向けた思いを紐解いていきましょう。

朴さんが高校生だった約20年前、日本と韓国は現在ほど交流がなく、互いに偏見も少なくなかったといいます。そんな折、第二外国語の日本語教師が、日韓学生交流会を実施。朴さんは、初めて日本人と交流することになりました。

朴さん

言葉はうまく通じないけど、みんな良い人で、打ち解け合って。3日間くらい一緒に過ごして、お別れの時には、空港で抱きしめ合いました。そのシーンが忘れられなくて。

国籍や文化や宗教が違ってもお互い尊重し合える社会をつくるには、個人と個人が交流して、友達としてつながることが大切なのだと痛感。そして、いつかそういう場所を自分でつくりたいと願い、ゲストハウスという泊まれる交流拠点を運営しようと心に決めました。

大学で日本語教育を専攻し、ワーキングホリデイで東京へ。一般企業で社会人経験を積もうと東京の企業に就職。その後、ゲストハウスの開業を支援する 株式会社宿場JAPANの存在を知り、開業希望者向けの約半年間の研修「Dettiプログラム」に参加。品川にある「ゲストハウス品川宿」と、プログラム卒業生が運営する長野の「ゲストハウス蔵(KURA)」で事業ノウハウを学び、奥さんの地元である兵庫県で開業をしようと開業地を検討し始めます。

MAYAのオーナー朴さん。お若く見えますが、今年で36歳。日本に暮らして10年以上になります

地域密着型のゲストハウスを目指して。“地元の人”になる決意

「ゲストハウス品川宿」と「ゲストハウス蔵」での研修を通じて、地域とも関わりのあるゲストハウス像を思い描くようになった朴さん。関係性が築けそうなプレーヤーのいる街を探して各所をめぐった末に水道筋商店街にたどり着き、地域の人々の底力に強く惹かれます。

朴さん

だけど当時の僕は、この街に知り合いが一人もいなかった。じゃあ、まずは自分が、“地元の人”になろう。そう思って商店街の喫茶店で働くことにしたんです。他のお店の人に積極的に話しかけ、地域の行事があればボランティアとして参加して。そうやって少しずつつながりが出来て、気付いたら、地元の会議にも呼ばれるようになっていました。

地元の人の紹介から現在の物件に出会い、今は遠方に暮らす大家さんへ手紙や電話でアプローチ。最初は断られ、マンションへ建て替える計画もあったそうですが、半年にわたる朴さんの真摯な提案と、街の人たちの応援もあって、ついにOKの返事をもらうことができ、2017年7月に大勢の人々に祝福されて無事オープンを迎えました。

エントランス。かつて診療所だった頃に実際使われていたレントゲン機器を生かして、ロゴマークが輝く看板に

宿泊者がくつろぎ、交流が自然と生まれるようにと、交流スペースの一部が円状にデザインされています

改装中のDIY作業に携わった人数は、300名以上。女性ドミトリーの壁は近所の子どもたちが塗ってくれました

改装デザインは、“みんなでつくろう”をコンセプトに建築内装のリノベーションやイベント会場のデザイン・施工・設営などを行っている、関西で有名なDIY集団「 TEAMクラプトン」が手掛けています。また、交流スペースに吊るされた円板状のスピーカーは、オーダーメイドを得意とする家具屋「Magical Furniture」が製作しています。

どちらも宿の前にある高架下に拠点を構えているため、MAYAの交流スペースで、近隣にあるパン屋「ふくろうパン」の名物「塩パン」を朝食にしながら、珈琲片手に窓の外を眺めていると、朝からせっせと作業を始める彼らの姿が目に入ります。

TEAM クラプトン。依頼者の思いに合わせ、チームで柔軟に対応する現代的リノベーション集団

Magical Furniture 小寺さん。1階で工房、2階で家具のショールームや雑貨のショップを営んでいます

世界と地域をつなぐ食べ歩きツアー。“第二の地元”という提案

MAYAと地域との関係性の深さを象徴するような企画が「つまみ食いツアー」です。チェックアウト後に参加者みんなで高架沿いを歩き、450軒以上の店々が軒を連ねる水道筋商店街へ。朴さんの解説を受けながら、商店街や市場の6〜8店舗ほどで食べ歩きをします。

実はこの企画は、もともと水道筋商店街の組合が主催となり、日本人向けに月1で開催していたもの。ですが、朴さんがボランティアでガイドアシスタントをしていたことから商店街の了承を得ることができ、宿泊者限定MAYAオリジナル版が実現。朴さんが韓国語や英語に通訳してくれるので、日本語が苦手な海外ゲストも安心して参加できます。

朴さん

国籍を超えてつながりやすい「食」をテーマにしたツアーなので、楽しんでいるうちに宿泊者同士や地域の人々とも仲良くなって、この街に良い思い出ができたことで、また訪れたいという気持ちにつながったら、うれしいですね。

朴さん率いるツアーメンバーがやってくると、どの店主も楽しそうに接してくれる姿が印象的でした。このツアーは、ゲストやスタッフの状況に合わせた不定期な開催なので、気になる方は、ぜひチェックインの時にご確認を。

練り物屋のお母さん。玉ネギやゴボウなど、いろいろある種類から好きなもの選ばせてくれました

魚屋さん。この日はナマコに挑戦!ということで、その場でさばいた新鮮なナマコをみんなでいただきました

神戸牛からデザートまで、つまみ食いのフルコース。最後はMAYAに戻り、ツアーの参加者みんなで記念撮影

オープンして約1年にも関わらず、地域と深い絆を結ぶ理由。それは、約20年前の原体験に基づき人と人とのつながりを心から大切にしているから。さらに開業前の約2年間、“地元の人”になろうと努力を絶やさず、開業後もなお努力を継続しているからこそだったのです。

六甲山地中央に広がる摩耶山を眺めると「ああ、神戸に帰ってきたんだ」と安心できるように、MAYAを訪れると我が家に戻ってきた気持ちになれる。「萬(万)の人が集う家」という宿名に込めた思いの通り、きっとMAYAは多くの人々にとって、“第二の地元”となっていくことでしょう。

そして私たちのキャラバンは、今後もまだまだ続きます。
次はきっとあなたの街へ。

(文/写真/動画: FootPrints 前田 有佳利


この記事を書いた人

MotionGallery編集部

MotionGallery編集部です。

https://twitter.com/motiongallery/


この記事を
シェアする!

Twitter

Line

Ranking
記事ランキング

Follow Us
Motion Galleryをフォローする

各種ソーシャルメディアでも、MotionGalleryの情報を配信中。今すぐフォローして最新情報をチェックしよう!