国内最大級のクラウドファンディング・プラットフォームを運営する株式会社MOTION GALLERYは、コロナ禍で閉館の危機にさらされている全国の小規模映画館「ミニシアター」を守るためのプロジェクト「ミニシアター・エイド基金」を終了し、国内クラウドファンディング史上最高額となる331,025,487円を2万9,926人のコレクターより集めました。
集まった金額は、第一回を5月末、第二回を6月末まで118劇場103団体へ分配予定です(1団体あたり、303万円)。
このニュースは文化芸術に大きな影響を与える出来事として、映画ナタリーなど各紙で大きく報じられました。
https://natalie.mu/eiga/news/379342
濱口竜介監督・深田晃司監督を始めとした発起人からのコメントも寄せられていますので、ご紹介します。
・深田晃司 コメント
ミニシアター・エイド基金運営のひとり、深田晃司です。
すでにご存知の通り、ミニシアター・エイド基金はこの一ヶ月、まったく想定していなかったほどの大きな盛り上がりの中にあり続けました。
率直に言うと、私たちは最初は一ヶ月をかけてじっくり一億円を越えていこう、と話していました。そんな私たちの考えは本当に甘かったこと、映画ファンのミニシアターへの思いを舐めていたことは、開始3日で1億円を越えてしまったことで明らかでした。
しかし、1億を越え、2億を越え、設定した目標値を超えるたびに私たちはSNSに「ありがとうございます」と書くわけですがこれがどうにも座りがよくないのです。この金額は、これまで多くの映画ファンにかけがえのない思い出を残し、コロナ禍においてもそれをなくしたくないと思わせるだけの大切な仕事をしてきたミニシアターだからこそ集まった記憶と希望の結晶です。なので、ただそのきっかけに携わったいわば「仲介人」にしか過ぎない私たちが、どこの誰の代表を気取って「ありがとう」とか言っているのだろう、と。
ただ、多くの監督や俳優から賛同の声が集まり、また私の知るスタッフからもたくさんの喜びの声が寄せられるなかで、次第に考えが変わりました。今回、コロナ禍を生き抜く力をもらったのはミニシアターだけではない、映画に携わる私たち全員なのだと。なので、力をもらったひとりとして、堂々と言わせて頂きます。
本当にありがとうございました!
・濱口竜介 コメント
一劇場運営団体につき平均300万。この額は、コロナ禍を乗り切る上で十分多いとは言えません。それでも、少なすぎるものでもありません。そう言えるところまでは来たのは、本当に一人ひとりの御志があってのことです。ただ、それだけ多くの人が動いたのは「ミニシアター」という場がずっと、誰かの人生を変えたり、支えたりする経験を作り続けてきたからにほかなりません。サイト上やSNSに寄せられたメッセージの数々から、映画館で生まれたとても多くの「映画と私」の関係があり、それこそが映画や文化の「社会的価値」の内実なのだ、という当たり前のことに改めて気付かされました。この金額が多すぎるものではない、というもう一つの理由は、これはミニシアターで仕事に従事する人々がしてきたことに対して当然払われるべきであった対価(の一部)だからです。「ミニシアター・エイド基金」がたとえ束の間であっても、劇場運営者にとっての精神安定剤となり、そこで働く人たちの暮らしを支えるお金となることを、心より願っています。その間に、次なる事態へ向けて態勢を整えましょう。ここに至るまで、あらゆる形で支援をしてくださった皆様に、心よりの御礼を申し上げます。本当に、ありがとうございました。
・大高健志 コメント(MotionGallery代表)コメント
開始前には想定していなかった物凄い金額の応援を頂き、基金メンバー一同本当にありがたい気持ちでいっぱいです。コレクターの方の応援メッセージ、そしてミニシアターの方のお言葉を読めば読むほど、今回参加頂いたコレクターお一人お一人のアクションが、これからの全国のミニシアターの大きな支えの1つになっていくのではないかと強く感じております。学生のときから人生に悩んでいたり苦しいときには、ミニシアターで映画を見て、色々と整理をしていたような教会のような大切でたくさんの思い出がある場所。それが自分の「ミニシアターと私」なのですが、そんな深いつながりのある「ミニシアターと私」が、支援して頂いた29926人おひとりおひとりの人生にあるのだと思います。そのようなそれぞれのオリジナルな想いを携え、ミニシアターが人生にとても大事なんだという1点のもとにこんなに多く人達が連帯したという事実にただひたすら感動しています。だからこそ、より民主的な社会になるのか、それともビッグ・ブラザー的なものを受け入れる社会になるのかの大きな分かれ目になると言われる「ニューノーマル」な世界には、これまで以上にミニシアターが果たす役割はとても重要だとも感じています。今回のミニシアター・エイド基金は、コロナ禍で苦境に陥った映画文化を支える為の狼煙であって、ゴールではありません。ですが、希望を抱かせて頂けるとても大きな狼煙であったと感じております。
本当にありがとうございました。
・高田聡(Incline LLP)コメント
まずはお一人お一人がご賛同くださり大きな運動となったことに、発起人の1人でありながら驚畏の念を感じ、深く感謝致します。
ご賛同頂いた方々にも少なからずいらっしゃると思いますが、私も1人で映画を見ることが多いです。それはとても私的な行為でありながら、映画館という開かれた場所で他人と同じ時間を過ごすことに、かえって映画に没入できる居心地の良さを感じます。「ミニシアター・エイド基金」を通じてそういった無言の連帯意識と同じような気持ちを覚えました。
一方で映画を見るという行為は、目の前のスクリーンと、それをみている自分に加え、後ろの映写機からスクリーンに映画を投射する第三の視点を意識することがあります。この場にこの映画を持ってきて、かけてくれている人がいるのだと、言葉を交わさないながら見守られている暖かさを感じるのです。自分にとって当たり前のようにあると思っていたそのような大切で個人的な場所が、ある日なくなってしまうかもしれない。急に襲われたそんな危機感からミニシアターを救いたいという思いを共有できた気がして、誰しもが大変な思いをしているこの状況下に、とても幸福に思います。ありがとうございました。
・岡本英之(映画プロデューサー、Incline LLP)コメント
冒頭、「ミニシアター・エイド基金」への数多くのご支援、ご賛同に心より感謝を申し上げます。発起人への同調のもと任にあたっており、これ以上を私から付け加えるのも蛇足かとは存じますが、ひとつ文章をさらなる御礼の言葉に変えさせていただきたく思います。私は岡山県の玉野市という街で育ち、大人になってからも3年半を過ごしました。休日となればバスに乗り、岡山市のシネマ・クレールへと向かいます。閉塞感とともに過ごした時期でしたが、ひとたびスクリーンの暗闇に身を置けば、自分も世界の一部であること、世界は繋がっていることを再確認することができました。そして、いつも背中を押されるような気持ちになったものです。押されて入っていくのは、まだ明るい時間の馴染みの酒場でしたが、店主や映画好きの仲間たちと交わす言葉は、当時も今も私の心の支えのひとつです。全国津々浦々、皆さまそれぞれの心の中にたくさんの物語が刻まれていることと思います。また、これから映画と出会う若い方々のためにも、まずはこのプロジェクトをしっかりと完遂できるよう引き続き取り組んで参ります。最後に運営からの声として、広報の佐々木瑠郁さん、西原孝至監督への謝意を告げさせてください。ミニシアターでお会いしましょう。
山小屋エイドも開始!
ミニシアター・エイド基金の影響を受け立ち上げられた、書店・古書店を支える「ブックストア・エイド基金」、小劇場演劇を支える「小劇場エイド基金」が反響を呼び、昨日、山と溪谷社が発起人を務める「山小屋基金エイド」がスタートしました。岩崎元郎氏(登山家)、湊かなえ氏(作家)、工藤夕貴氏(俳優)、釈由美子氏(俳優)らに賛同いただき、早くも14時間で目標金額の300万円を達成し、引き続き、クラウドファンディングの参加、賛同する山小屋の参加を募っています。
【山小屋エイド基金、その意義について】
登山の自粛が続く中、宿泊場所、登山道の保守、避難場所としてお世話になっている山小屋の厳しい状況を応援するため、山岳関連の書籍や雑誌を90年にも渡り出版してきた山と溪谷社が立ち上げたプロジェクトです。集まった支援金は、本基金に賛同し、分配先となっている山小屋に均等に分配されます。
雪解け後の荒れた道から落石や倒木を除け、生い茂る笹を刈り取り、歩きやすい道づくりをして下さるのは山小屋従業員の方たちです。また、人里から遠く離れた山中にある山小屋は、私たちの重要な宿泊施設となり、いざというときの避難場所にもなります。トイレの整備をしてくださるのも山小屋であれば、遭難救助の最前線基地としての役割を果たすのも山小屋です。登山者にとって山小屋は安心と安全を保障してくれる、なくてはならない存在なのです。
現在、新型コロナウイルス拡散防止のために自治体から休業要請を受けたり、自主的に休業を余儀なくされている山小屋が多数、存在します。登山を自粛される傾向がしばらく続くものと予想され、このまま山小屋の利用客が減り、廃業することになれば、登山道を整備する人がいなくなります。万が一、遭難してしまったときの救助対応にも時間がかかるようになり、救える命が救えなくなるかもしれません。そのような状況になると、登山そのものが安心してできなくなり、山を楽しみ自然に親しむことができなくなります。
【山小屋エイド基金発起人・山と溪谷社からのメッセージ】
本来であれば、山に登り山小屋を訪れることが最大の支援となるはずです。それができない現状で、できることが何かないかを考えて本プロジェクトを企画しました。私たちの目的は山小屋を応援し、登山環境を維持しつつ、登山文化を持続・継承していくことです。ですから、「山と山小屋を応援したい」という試みに共感される方は、このような動きをSNSなどで広めていただけたらと思います。
山小屋エイド基金賛同人より応援コメントなども届いていますので、是非プロジェクトページもチェックしてください!
「ブックストア・エイド基金」についてのストーリーをMOTION GALLERY CROSSINGで配信開始!
書店・古書店を支える「ブックストア・エイド基金」について、
MOTIONGALLERYがお送りするポッドキャスト番組『MOTION GALLERY CROSSING』にて、2週に渡りお届けしています。後編を本日5月20日に配信開始しまいた!
・#003 まちの本屋さんはどうなるの? / 阿久津隆+内沼晋太郎
今回のゲストは、本の読める店fuzkue店主の阿久津隆さんと、ブックコーディネーターで、本屋B&Bの内沼晋太郎さん。
町の本屋さんを守ろう!と立ち上がったプロジェクト「ブックストア・エイド基金」の発起人です。
本屋講座の先生と生徒、という立場で出会い、その後書き手と編集者、さらには大家さんとテナントと、関係性を変えて交流してきたお二人。お二人のお店のことをはじめ、新刊書店と古書店の待遇の違いって?影響を受けた「ミニシアター・エイド基金」との違いとは?「未公開の手書き原稿」にまつわるお話など。前後編に分けてお届けいたします。
https://propo.fm/motiongallerycrossing/3
・#004 書店で本を買う醍醐味は? / 阿久津隆+内沼晋太郎
前回に引き続き、ゲストは本の読める店fuzkue店主の阿久津隆さんと、ブックコーディネーターで、本屋B&Bの内沼晋太郎さん。
町の書店を守ろう!と立ち上がったプロジェクト「ブックストア・エイド基金」の発起人です。
書店で本を買う醍醐味とは、買う予定のなかった本を買ってしまうこと!ゲストのお二人が実際によく行く書店とは?大きい書店と小さい書店それぞれの良さ、コロナの影響下における文化芸術のあり方、世界への信頼感についてなど。前後編の後編です。
https://propo.fm/motiongallerycrossing/4
是非お聞きください!