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LIVE&EVENT - 2019.07.16

原体験に基づいた、在りたい暮らし。漁師×海女のご夫婦による離島のゲストハウス #16 長崎

MotionGalleryとゲストハウス紹介サイトFootPrintsとの共同企画として、日本各地のゲストハウスを旅しながら毎月開催している「ローカルクリエイター交流会 -Guesthouse Caravan-」。第16回は、2019年5月27日(月)長崎県壱岐市にある「みなとやゲストハウス」で実施させていただきました。

日本各地のゲストハウスをめぐり、地域のクリエイターたちが垣根を越えて出会える場を開くことで、新たなプロジェクトの芽を育もうとする企画「ローカルクリエイター交流会 -Guesthouse Caravan-」。イベントを開催し、前後日程でまちめぐりも行っています。

第16回となる今回のキャラバンは、長崎県にある離島・壱岐の「 みなとやゲストハウス」に伺いました。釣竿を担いで日本全国を旅した釣り師の大川 漁志(おおかわ・りょうし)さんと、島で25年ぶりの後継者となる海女の香菜(かな)さん。釣り師×海女という組み合わせのご夫婦が、自らとった海の幸をゲストに振る舞うというのが、この宿の特徴です。

交流会では「みなとやゲストハウス」の女将・香菜さんに、なぜ壱岐に移住して海女になったのか? どういった思いからご夫婦でゲストハウスをはじめたのか? 壱岐初のゲストハウスは地域にどんな影響をもたらしたか? などをお話いただきました。イベントレポートとして、それらの詳細をここでご紹介します。


  動画には、「みなとやゲストハウス」や「ローカルクリエイター交流会」の様子だけでなく、壱岐のモンサンミッシェルと言われる「小島神社」やエメラルドグリーンに輝く海に囲まれた「辰ノ島」などを訪れた旅の風景もまとめています。本土から船で最速1時間で到着するとは信じがたいほどの絶景と歴史を持つ壱岐。まずは動画から覗いてみてください。

壱岐の恵みを味わいつつ「ローカルクリエイター交流会」第16回 in 長崎

このキャラバンは、MotionGalleryによる「日本各地で誕生しようとしている熱いプロジェクトにエールを送りたい」という思いと、 FootPrintsによる「ゲストハウスを通じて、暮らしの選択肢が広がるきっかけを届けたい」という思いを組み合わせて実施しています。

キャラバン隊として毎月各地をめぐるのは、FootPrintsを運営する前田 有佳利(dari)と、コンセプト「あなたのまちに、新しい映画体験を」のマイクロシアターサービス popcornに携わる梅本 智子(moko)。MotionGalleryの専属サポーターでもあるdari&mokoが、ゲストハウスの方々にご協力いただき、「ローカルクリエイター交流会」を開催しています。

今回は、「みなとやゲストハウス」が運営する「 CHILI TOLI 自由食堂」を会場として実施させていただきました。麦焼酎発祥の地・壱岐の地酒を片手に、香菜さんがとったウニと壱岐の真珠アコヤ貝の貝柱などを混ぜ込んだおにぎりならぬ"ウニぎり"や、漁志さんが釣ったヒラとスズキのカルパチョ、壱岐牛のトマト煮、壱岐サザエのつぼ焼きなど、壱岐を堪能する美味しい食事をいただきつつ、交流会は夜が更けるまで大いに盛り上がりました。

ゲストハウスから徒歩約4分。漁港の目の前にある「CHILI TOLI 自由食堂」


定員30名が最後は満員御礼に! 壱岐で暮らす方だけでなく、対馬や福岡から来てくださった方もいました


イベント特製メニュー"壱岐の恵みおまかせ料理"の一部。その他に、スパイスカレーなども振る舞われました

海と密着した生活が送りたい。海女就活から、壱岐へ移住

香菜さんは、岩手県陸前高田市の出身です。遠洋漁業の船長を務めた父と、民謡歌手だった母の間に生まれた3人姉妹の末っ子で、父の実家である海沿いの民宿の近くで暮らしていました。小さな頃から、海で素潜りをしてウニや貝をとって遊んでいたそう。

高校卒業後、アパレルの専門学校に進学するために上京。そのまま、東京のアパレル会社に就職しました。それから数年が経った時、2011年の東日本大震災に見舞われました。

香菜さん

震災をきっかけに「自分の人生がいつ終わるかわからない。今の仕事や暮らしを続けて、自分は本当にそれでいいんだろうか?」と考えるようになりました。自分の思いと改めて向き合った時、アパレルは好きな仕事ではあるけれど、海と密着した生活を送ることが、自分の原体験に基づいた在りたい暮らしなんだと気付かされました。

レジャーではなく生きる術として、海との関わりを望んだ香菜さん。そこで、「そうだ!海女さんになろう!」と思い立ち、1年間の「海女就活」に取り掛かります。その結果、奇跡的なタイミングで、壱岐市が「地域おこし協力隊」として海女の後継者を募集していることを知り、早速応募。このようにして、壱岐への移住が確定しました。


プレゼン中の香菜さん。カウンターの向こうから覗いている男性が漁志さんです

釣りと海を求めてUターン。漁志さんとの出会い

壱岐に移住してすぐ、共通の知り合いから「この人は壱岐や海のことに熟知しているので、なんでも相談してくださいね」と紹介されたのが、のちに夫となる漁志さんでした。

壱岐市の芦辺浦出身の漁志さんは、美術の大学に進学するために上京。昔から釣りがとても好きで、時間を見つけては、釣竿を担いで日本全国を旅していました。そして、改めて、自分には釣りと海のある環境が欠かせないと気付き、大学卒業後にUターンをしました。

香菜さんと出会った当時は、福岡と壱岐を往復する生活を送っていたそう。福岡に渡って、美術の予備校の講師を務めながら、釣りメーカーのプロスタッフとして活動し、壱岐に戻っては、釣りやサーフィンをしたり、海女の男版「海士」をしたり。こうして、海が縁をつなぐように2人は出会い、さまざまな共通点から意気投合し、結婚することになりました。


「みなとやゲストハウス」から歩いて5分ほどの場所にある海辺。壱岐周辺には美しい海が広がっています

海女文化の場をつくりたい妻 × ゲストハウスをつくりたい夫

「地域おこし協力隊」の任期満了後は、もちろん海女として独立しようと考えていた香菜さん。しかし、どれだけ腕が優れていても海女漁だけでは生きていけないという現実を知ることに。そこで、「どういった仕事を掛け合わせるか?」を検討しはじめました。

香菜さん

海の恵みを自らの手でとって捌いて出荷するという、一連の流れを担えるのも海女漁の素敵なところ。ですが、せっかくなら、目の前にいる人に「はじめてウニに触った!」とか「掻き立てってこんなに美味しいんだね!」とかって、工程から楽しんでもらえたら嬉しいなと思ったんです。周囲にそういう場所がなかったので、「海女さんの文化に触れながら交流できる場所をつくりたい」と考えるようになりました。

その気持ちを漁志さんに伝えたところ、逆に「俺は、壱岐でゲストハウスがしたい」と明かされます。実は、漁志さんの亡くなった祖父は、昔からさまざまな人々を自宅に快く迎え入れていました。宿探しに困っていたバックパッカーを泊まらせてあげたり、中国で残留孤児だった子どもを引き取って住まわせてあげたり。まるで、住み開きのような状態です。

香菜さん

主人は、釣りの旅を通じてゲストハウスの存在を知り、「これって俺の実家みたいやん!」と気付いて。実際に、私が主人の実家に泊まりに行った時も、頻繁にいろんな人が泊まりに来て、毎晩宴会のようになっていました。主人のお父さんやお母さんや弟の友だちもいるし、そこに付いてきた知らない人もいる。その様子を見て、「ああ、この家族は人を迎え入れるプロなんだな」と実感しました。

2人の共通の思いは、「旅人と壱岐の人の暮らしが混ざり合って縁が続いていく場所をつくりたい」と「自分たちのペースで個性を活かしながら生きていきたい」ということ。こうして、それぞれの目標と共通の思いを織り交ぜ、漁志さんの実家がある芦辺浦の物件を改装し、「みなとやゲストハウス」が誕生しました。


かつて遊郭として建築された築約100年の物件を改装した「みなとやゲストハウス」


趣のある細長い廊下に沿って、2段ベッド式の相部屋が並んでいます

ウニ体験やカヤックフィッシング体験。そして、みんなで囲む夕食も

2016年4月に開業し、4年目を迎える今。香菜さんと漁志さんの目標や共通の思いは、具体的にどういった形で表現されているのでしょうか?

香菜さん

私の目標だった海女文化の交流は、私がとってくるムラサキウニを使って「五感で味わう、とれたてウニ体験」として実現しています。ゲストさんにウニを触ってもらうことからスタートして、ウニの生態について解説し、みんなで中身を掻き出して、ここでしか味わえない"掻き立ての壱岐のウニ"を味わっていただくというものです。

また、ご近所のピザ屋「Pizzeria Potto」さんから嬉しいお誘いを受け、私のとったウニ100%のコラボメニュー「ウニ・ピザ」と「ウニ・パスタ」を、お店で期間限定でご提供いただいています。とれたてのウニ体験から、地元の人と一緒にアレンジしたウニ料理まで、多くの方々に楽しんでいただけて、とても嬉しいです。


「五感で味わう、とれたてウニ体験」の様子(写真提供:みなとやゲストハウス)

香菜さん

主人の特技である釣りも「カヤックフィッシング体験」として取り入れています。希望されたゲストさんと一緒に、日が昇る前に、カヤックに乗って海抜ゼロの景色へと滑り出します。エンジン音がないので、波の音と鳥の声が聞こえて、時間が経つと綺麗な朝日が昇ってくる。そんな環境で釣りをするのも、とても楽しいですよ。


晴れた日に決行する「カヤックフィッシング体験」の様子(写真提供:みなとやゲストハウス)

そして、何より「みなとやゲストハウス」の一番の醍醐味と言えるのは、香菜さんと漁志さんがその日にとった海の幸を、ゲストやスタッフみんなで囲む夕食です。ゲストの状況や天候をふまえ、ベストな献立を考えるそう。天気のいい日は、宿のそばの駐車場でテントを張ったり、時には足を伸ばしてキャンプ場に行ったりするのだとか。


宿泊ゲストからスタッフまで、みんなで壱岐の恵みの料理を囲みます(写真提供:みなとやゲストハウス)

宿だけにとどまらない、地域との関わりを。食堂と移住相談窓口

香菜さんと漁志さんの活動は、ゲストハウスにとどまりません。2019年3月には、今回のイベント会場としてお借りした「CHILI TOLI 自由食堂」をオープンしています。

50年以上もの間、芦辺浦の人々に愛され続けた「千里十里(ちりとり)食堂」。その閉店を受け、「地域の人たちに元気をくれるような場所を、今度は自分たちの手でつくろう。芦辺浦に人がもっと立ち寄りたくなる場所を、宿以外にもつくろう」という思いから、漁港の前にある空き物件を改装し、屋号を受け継ぐ形で食堂をはじめています。


「千里十里食堂」の常連だった人も、復刻メニュー「やきそば」を求めて訪れてくれるそう


「CHILI TOLI 自由食堂」の名物は、特製のスパイスカレーです(写真提供:みなとやゲストハウス)

香菜さん

「CHILI TOLI 自由食堂」には、フリースペース「たちまち」を併設しています。そもそも、芦辺浦には目立った観光名所がないので、通り過ぎてしまわれがち。だけど、その分、おだやかな壱岐の日常がしっかりと積み重ねられています。みんなで子どもを見守ろうって意識も強い。とても住みやすいまちなんです。

だから「もう少し多くの人たちに芦辺浦に立ち寄ってほしいな。そのまま気に入って住んでもらえたら嬉しいな」なんて思いを込めて、この場所を開いています。

現在では、移住相談窓口も兼ねて「たちまち」を運営しているそう。すでに、今回の交流会の参加者からも、「大川さんご夫妻に出会えたことがきっかけで、壱岐の芦辺浦に移住した」や「みなとやゲストハウスの夕食会があるおかげで、壱岐の暮らしに馴染みやすかった」といった声が多数あがっていました。


移住相談窓口を兼ねたフリースペース「たちまち」。壁には、この場所ができた経緯が貼り出されていました

自分がどういった暮らしを望むか? を検討する際、まず、自らの原体験を思い返してみる。そして、自らが望んだ暮らしを送ることで、他者にその魅力を心から伝えることができる。大川さんご夫妻の姿から、それらを痛感させていただく会となりました。

そして私たちのキャラバンは、今後もまだまだ続きます。
次はきっとあなたの街へ。

(文/写真/動画: FootPrints 前田 有佳利


この記事を書いた人

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