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LIVE&EVENT - 2019.06.27

自分の中の“根本的な思い”に向き合う。元音楽学校を改装した萩のゲストハウス #15 山口

MotionGalleryとゲストハウス紹介サイトFootPrintsとの共同企画として、日本各地のゲストハウスを旅しながら毎月開催している「ローカルクリエイター交流会 -Guesthouse Caravan-」。第15回は、2019年4月19日(金)山口県萩市にある「萩ゲストハウスruco」で実施させていただきました。

日本各地のゲストハウスをめぐり、地域のクリエイターたちが垣根を越えて出会える場を開くことで、新たなプロジェクトの芽を育もうとする企画「ローカルクリエイター交流会 -Guesthouse Caravan-」。イベントを開催し、前後日程でまちめぐりも行っています。

第15回となる今回の開催地は、明治維新を切り開いた志士たちを輩出した地の1つ、山口県萩市。日本海に面した大きな三角州を基盤に発展した城下町の姿が、今もありありと残っています。この萩にある、かつて音楽学校だった4階建てのビルをリノベーションし、2013年10月にオープンしたのが「 萩ゲストハウスruco」です。館内には、萩焼の窯元「大屋窯」の器や菊ケ浜の砂など、まちの文化や歴史が散りばめられています。

カナダやニューヨークを経てUターンし、山口県で初となるゲストハウスをオープンした、オーナーの塩満直弘(しおみつ・なおひろ)さん。「保守的だった自分が今の働き方に至るとは、まったく想像できていなかったです」と話す塩満さんに、ゲストハウスを開業した理由や、6年経った今思うこと、今後の挑戦などについて伺いました。

動画には、「萩ゲストハウスruco」の紹介や「ローカルクリエイター交流会」の様子、イベントの翌日に希望者を募って開催した「古地図と照らし合わせた萩まち歩き」の風景などをまとめています。

萩の食材を味わいながら「ローカルクリエイター交流会」第15回 in 山口

このキャラバンは、MotionGalleryによる「日本各地で誕生しようとしている熱いプロジェクトにエールを送りたい」という思いと、 FootPrintsによる「ゲストハウスを通じて、暮らしの選択肢が広がるきっかけを届けたい」という思いを組み合わせて実施しています。

キャラバン隊として毎月各地をめぐるのは、FootPrintsを運営する前田有佳利(dari)と、コンセプト「あなたのまちに、新しい映画体験を」のマイクロシアターサービス popcornに携わる梅本智子(moko)。MotionGalleryの専属サポーターでもあるdari&mokoが、ゲストハウスの運営者にご協力いただき、「ローカルクリエイター交流会」を開催しています。

今回は「萩ゲストハウスruco」の方々だけでなく、オーナー塩満さんのご紹介で、東京を拠点に各地へ旅する料理人「 ピリカタント」西野優さんにもご協力をいただきました。定員30名が満員御礼!萩の旬の食材をふんだんに使用したお料理を頬張りながら、みんなで交流を楽しんでいるうちに、あっという間に夜が更けていきました。


rucoの1階にあるカフェ&ラウンジをイベント会場としてお借りしました


季節の恵みのちらし寿司や、山の幸のフリット、畑の白和えと炊きあわせなど、萩産尽くしの特別メニュー!


塩満さんとdari&mokoのプレゼン後に、1人30秒の自己紹介をし、食事をしながら交流会をしました

「一度、萩を出なくては」という衝動に駆られて海外へ

rucoオーナーの塩満さんは、萩市生まれ。意外にも、もともと起業という発想は毛頭になく、萩と運動が好きだったことから「将来は、地元の学校で体育の先生になろう」と漠然と思っていたそうです。しかし、大学生活を送るなかで、「このままではいけない。一度、萩を出なくては」という思いがふつふつと湧きはじめます。

塩満さん

自分が地元以外の世界を全然知らないことに対して、問題意識が芽生えていきました。狭い範疇でしか物事を捉えられていないから、自分の人生なのに、主導権を持てていなかった。これからどうしたいか?の明確な意識が持てていなかったんです。

そう考えるようになったのは、1つの大きなきっかけがあったと言うよりは、1つ1つの気付きが偶然重なっていったからでした。例えば、祖父母が早くに亡くなって、人生の儚さや尊さを痛感させられたり、『トレインスポッティング』という映画を観たことで「人生は自分で選ばなくちゃいけない」と思わされたりして。

そして、塩満さんは大学を休学。英語をまったく話せなかったからこそ、まるで自らに課題を課すように、ワーキングホリデーを活用して1年間カナダへ留学することにしました。


rucoオーナーの塩満さん。地元が好きで「いつか地元で何かをしよう」という気持ちはずっとあったそう


萩産の夏みかんを用いたソーダやワインを飲みながら。参加者みんな、塩満さんの話に耳を澄ませていました

人と向き合う仕事がしたい。望んだ景色を見るための手段探し

まずは、カナダの語学学校に入ることからスタートした塩満さん。そこで、さまざまなカルチャーとバックグラウンドを持つ世界各国の人々と出会います。3カ月間の講義を修了したタイミングで、運良くスタッフの枠が空き、そのまま語学学校で働けることになりました。

勤務して数カ月後、毎月開かれていた入学式で挨拶をすると、ブラジル人の女性から「あなたがSHIOね!いろんな人から一度会ったらいいって勧められたの。みんな、あなたのことが好きみたい!」と開口一番。その出来事から、人と人とのコミュニケーションを大切にすることで国籍や言語の壁を越えて関係性が築かれることを体感し、「能動的に行動をすれば、自分にも何かできるかもしれない」と自信を持つようになっていきました。

塩満さん

それからニューヨークでも1年半働きました。海外経験を通じて自信は持てたけど、「じゃあ、萩で何をしよう?」という次のハードルに直面して。ただ、絶対に、人とじっくり向き合った仕事に就こうとだけは決めていました。だから、その思いを核に「じゃあ、何を介して人と関わるか?」という発想に転化していって。帰国後は、東京の企業や神奈川県の旅館に勤めたりして、手段をずっと模索していました。

なので「ゲストハウスをすることが夢だったの?」って今も時々尋ねられるけど、実はそういうわけではなかったんです。萩の人たちに関わりながら、訪れる人たちを迎え入れて、その両者に直接向き合って、つないでいく。自分が見たいと思った景色を一番見ることのできる手段を探した結果が、ゲストハウスでした。


多くの旅人を迎えてきたrucoの相部屋。個室ニーズの増加から、最近では個室をもう1室増やしたそう


金色の大きな蛇口が特徴的な洗面台。水受けの器は、萩焼の窯元「大屋窯」のものを使用しています

明かりを灯し続けること、自分の思いに向き合うこと

こうしてゲストハウスを開業して、6年の歳月が過ぎました。最近では、塩満さんは地域と関わる仕事が増え、現場に立つ機会は減っているそう。ですが、頼れるスタッフ陣が、人と人との関わりを大切にするrucoの思いを継ぎつつ、1人1人の個性を加え、豊かな空間をつくりだしています。そこで、塩満さんに、この6年間を振り返って今思うことを伺いました。

塩満さん

僕は今まで、“rucoを起点に、地域のために何ができるかを考えよう”としていました。でも、それだとベクトルが散漫になってしまうと気が付いて。必ずしも、宿ありきで考えることや、地域のことだけを考えることが重要ではないんです。

大事なのは2つ。“地域の中に、rucoという1つの明かりを灯し続けること”。そして、自分は何をして生きたいか、自分は何を見たいか、自分がどういう人と出会いたいかという、“自分の中にある根本的な思いそのものに向き合って行動すること”。最近では、そう思うようになってきました。


夕暮れになるとガラス張りのエントランスから、あたたかな明かりが漏れ、地域をポッと灯します


2階へと続くらせん階段の壁には、萩ガラスや大漁旗の端切れなど。rucoは、実に萩愛に溢れた場所です

「何もない」から「何かある」へ。日本の地域資源を発掘する雛形をつくりたい

最後に、地域との関わり合いの中で、今後予定している挑戦について伺いました。

塩満さん

今、JR西日本の方々と一緒に、利用者の減少した駅を再活用するプロジェクトに取り組みはじめています。単に駅として使うだけじゃなく、他の用途を加えて、従来の駅という存在の価値観を少し変え、周辺を含めて、人々が自由な楽しみ方をしてもらえるような場所をつくろうという企画です。

これを皮切りに、「何もない」って言葉で見過ごされがちな地域資源を発掘していき、「何もない」と思われていた場所を「何かある」と思える場所に変えていきたい。「何もない」で終えてしまうのは、いつかの自分のように、狭まった範疇内で見ている景色に対する言葉ではないかと思っています。そして、そういう場所が、より多くの人々の価値観を広げるきっかけにもなったらいいなと思っています。

地域資源が眠ったままになっている理由を探り、時には世界の事例を参考にしながら、関わり方を再編集することで、「何かある」に変えられる。塩満さんは「この考え方は、萩に限ったものではなく、きっと日本の各所でも同様です」と付け加えました。


rucoのカウンターに立ち、微笑む塩満さん

塩満さん

だけど、今時点の僕の言葉は抽象的で、完成した実物がないから伝わりづらい。だから、まずは実際に、自分が1つでも事例をつくろうと思っています。行動して結果を出せば、歴史ある企業の何代目でもない、地盤のない僕みたいな人間でも、地域の固定概念に風穴を開けられるという証明にもなるはず。

そうやって、行政や大企業との関わり方の新たな雛形をつくって、何かしたいと思った人がバックグラウンドに関係なく挑める土壌を築いていきたい。この挑戦が、萩市内だけでなく、日本の他の地域でも役立つようにしたいと思っています。

日本の未来をつくろうと尽力した萩の志士たちの息吹を感じるような、塩満さんのプレゼンのおかげで、「ローカルクリエイター交流会 in 山口」は一層深みのある会となりました。

地域資源を掘り起こす「古地図と照らし合わせた萩まち歩き」

イベント翌日、塩満さんの取り計らいで、「萩ジオパーク推進協議会」の白井孝明さんと「萩まちじゅう博物館」の山本明日美さんにご案内いただき、萩の歴史や地形の解説を交えながら「古地図と照らし合わせた萩まち歩き」を開催いただきました。

萩で暮らす参加者の方からも、「普段と異なる視点で地域の良さを再確認できた」と、「何もない」から「何かある」への価値観のシフトを予期させる感想が多数あがっていました。


山本さん(左手前)と白井さん(左奥)の解説を受けながら、希望者を募ってまち歩きへ!


途中、商店街にある老舗薬局の店主の方にも、店や萩の歴史などをお話いただきました


菊ケ浜越しに、萩の象徴とも言える指月山を眺めて。指月山の麓には、萩城跡が残っています

1つの場所を起点に発想を展開したり、地域のためを思って活動するのも、きっと素敵なこと。ですが、塩満さんが教えてくれたように、自分の中にある根本的な思いそのものを核にすることで、ベクトルにブレのない拡張性や、どこかの誰かに影響しうる汎用性さえも、生み出すことができるのかもしれません。

そして私たちのキャラバンは、今後もまだまだ続きます。
次はきっとあなたの街へ。

(文/写真/動画: FootPrints 前田 有佳利


この記事を書いた人

MotionGallery編集部

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