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LIVE&EVENT - 2018.12.15

創業約80年のイワシの丸干し屋が運営。工房とお土産ショップ併設のゲストハウス #08 鹿児島

MotionGalleryとゲストハウス紹介サイトFootPrintsとの共同企画として、日本各地のゲストハウスを旅しながら毎月開催する「ローカルクリエイター交流会 -Guesthouse Caravan-」。第8回は、2018年9月7日(金)鹿児島県阿久根市にある「イワシビル」で開催させていただきました。

日本各地のゲストハウスをめぐり、地域のクリエイターたちが垣根を越えて出会える場を開くことで、新たなプロジェクトの芽を育もうとする企画「ローカルクリエイター交流会 -Guesthouse Caravan-(以下キャラバン)」。

第8回の舞台は、鹿児島県阿久根市にある「イワシビル」。昭和14年創業の水産物加工販売会社「株式会社下園薩男商店」の三代目・下園 正博(しもぞの まさひろ)さんが、2017年9月9日にオープンしました。3階建てで、最上階はゲストハウス、2階は丸干しイワシのオイル漬け工場。1階はお土産ショップ兼カフェとなっており、自社で開発した商品や地元の特産品をセレクトして扱っています。

この珍しい組み合わせのゲストハウスが誕生した経緯や、商品開発を行う理由などについて、下園さんに伺いました。鹿児島を旅したキャラバン全体の様子と共にレポートします。

地域コーディネターを務めてくださった鹿児島移住計画の上 泰寿(かみ やすとし)さんにアテンドいただき、鹿児島県阿久根市から、出水市、日置市美山区、離島の甑島まで訪問。それらの足跡も動画にまとめています。

第8回、鹿児島で暮らす人が2/3、県外からの訪問者が1/3という割合の交流会に

このキャラバンは、MotionGalleryによる「日本各地で誕生しようとしている熱いプロジェクトにエールを送りたい」という思いと、FootPrintsによる「ゲストハウスのある旅を通じて、暮らしの選択肢が広がるきっかけを届けたい」という思いを組み合わせて実現しています。

キャラバン隊として各地を巡っているのは、FootPrintsを運営する前田 有佳利(dari)と、「あなたのまちに、新しい映画体験を」をテーマに掲げるマイクロシアターサービスpopcornの立ち上げメンバー梅本 智子(moko)。MotionGalleryの専属サポーターでもあるdari&mokoが、ゲストハウス運営者のご協力を得ながら「ローカルクリエイター交流会」を開催しています。

第8回目の参加者の顔ぶれは、阿久根市の地域おこし協力隊の経験を持つクリエイターの男性や、隣町の出水市のシンボルである鶴の保全に尽力する女性、さらには鳥取・福島・京都など県外の方々にも多く参加いただけるような回となりました。


「イワシビル」。ローカルクリエイター交流会は、1階で開催させていただきました


プレゼンと交流会の後、同会場で二次会も実施。地酒と共に、美味しいイワシ料理をいただきました


参加者みんなで撮影。イワシのパネルを持った女性がmoko(左)とdari(右)、その前にいるのが上さんです(撮影:福留 敦巳)

始まりは、オリジナル商品「旅する丸干し」の直売店をつくること

下園さんは、ウェブサイトの制作ディレクターとして東京の企業に2年間勤めた後、水産関係の商社で5年間従事。2011年に阿久根市へUターンし、家業を継ぎました。現在も本業として干物をつくり、全国の量販店へ納めています。また最近では、近隣にある「阿久根めぐみこども園」の給食で丸干しイワシを提供するなど、地域の食育にも力を入れています。

下園さん

実は最初、ゲストハウスやホステルをする予定は全くなかったんです。2013年に「旅する丸干し」という干物を使ったオイル干し商品の販売を始めたのですが、その直売店をつくりたいと考えていました。そんな時ちょうど、先代である父がこの物件を購入し、使い道を託されたことが始まりでした。

コンビニでスターバックスのコーヒーを見掛けた時、スターバックスのカフェを思い出そうとすれば、イメージすることができる。だけど、マウントレーニアだとそれができない。そんなふうに、空間を絡めたブランドイメージの浸透って、すごく大事なことだと思っていて。それで、1階に直売店とカフェ、2階に工場を持ってこようと思ったんです。じゃあ、3階をどうしようか?と。


「阿久根市には13件もイワシの丸干し屋があって、全国的にも珍しい地域なんですよ」と話す下園さん

阿久根市の人口は約2万人と少なく、ランドマークだったオーシャンビューのホテルは数年前に廃業。地域の外から人を呼び込む必要があると考え、友人の勧めを受けて、世界の人々とも接点が生まれやすいゲストハウスという宿の導入を検討するようになります。そして、百聞は一見に如かずと、下園さんは日本各地のゲストハウスへ泊まりに行ったといいます。

下園さん

それまでゲストハウスやホステルに泊まった経験がなかったので、最初は抵抗がありました。廊下で外国人に「Hi!」と声を掛けられたらどうしたらいいの?とか、絶対全員が話し掛けてくるものと思い込んでいたので、やたら身構えていたり(笑)

でも実際は違っていて、タイミングが合えばちょっと話したり、受付のスタッフさんと街のことについて会話ができたり。その距離感が心地よくて。それでゲストハウスを始めようって思ったんです。「旅する丸干し」の“旅”ともリンクできれば、何か面白いことが始められるかもしれない。そう直感的にも良いなと思って。


宿泊者専用フロアとなっている3階の共有リビング。内装は地元の空間デザイナーと一緒に手掛けています


1階で販売している「旅する丸干し」。ボンタンエッセンスやオリーブ・ハーブなど全4種の味があります

“ワクワクすること”を活動の軸にしながら、企業理念を体現する

開業して丸1年。予約サイトを介して海外ゲストの意外なニーズに気付けたり、「イワシビル」をきっかけに阿久根市に初めて訪れたというゲストを迎えられたり。チェックインやチェックアウトの時だけでなくカフェや朝食の時間などにも、各地から訪れる人々と接点が生まれ、今では需要の受け皿かつ地域情報の供給の場となりつつあるようです。


カフェの人気メニュー「港町のたい焼き」。阿久根市の名産物である鯛から着想しています


丸干しイワシを用いた朝食。「今日はどちらに行かれるんですか?」という一言から会話が広がることも

水産物の加工や、オリジナル商品の開発、ショップとカフェの経営、そしてゲストハウスの運営と、一層多忙な日々。でも活動について語る下園さんの表情は、穏やかながらも熱意に溢れ、なおかつ楽しそう。それは、なぜなのでしょう?

下園さん

「人口2万人の阿久根市でやるなんて、挑戦だね」と周囲によく言われますが、結局は自分にとって一番ワクワクできることを選んでいるだけなんです。阿久根は生まれ育った故郷であり、代々続く下園薩男商店があって、この土地で育った魚をずっと扱ってきている。関わりが深くて一番よく知る地域だから、こうアプローチしたらこう変わるかもっていう具体的なイメージが湧いて、ワクワクするんです。

それに、父や母、じいちゃん、ばあちゃん、一緒に働いてきた従業員さん、代々積み重ねてきた石の中に今の自分がいる。自分の番でくじけられないぞと背負っているものがある。その覚悟のもと、24時間365日、会社や「イワシビル」のことを考えていて。だからこそ、ワクワクすることをちゃんと軸に持たないと続かないですよね。

あえて手間を掛けて商品開発を行う。その先に見える未来

企業理念は「今あるコトに一手間加え、それを誇り人生を豊かにする」。その思いは、内観のデザインから商品づくりに至るまで、はしばしに反映されています。

自社開発の商品数は、食品から生活雑貨まで、30種にも上ります。鹿児島県の特産物であるボンタンの“実”ではなく、薪以外の用途が見い出せていなかった“木”に着目したカッティングボードの制作など。日常業務を含めた全作業を、現在10名で行っています。


干物を乗せる台車をリメイクして商品棚にしています。右上に飛び出して見えるのがカッティングボード

下園さん

昔はどの地方も素材の状態で都会へ流通していました。しかし、物が溢れている現代、それだけでは売れにくい。だから、自分たちで付加価値を付ける必要があると思っています。うちの商品開発は徹底的に現場主義。農家さんや養殖家さんのもとへ伺い、取材をして、その熱量を受け、デザインを通じてどう伝えるか?をスタッフ一人一人が各商品の専任となって考え、全員で話し合いながら商品開発をしています。

手間が掛かるので効率は悪いかもしれないけど、地域のものを使った良いお土産が増えれば、購入者や素材の提供者が喜んでくれるだけでなく、この地域で暮らす人たちが地元の魅力を再認識するきっかけになるかもしれない。そうやって後世に残るような商品になったらいいなと、イメージを膨らませ、またワクワクしています。

灯台下暗しとなりがちな地元という存在。楽しい未来を描きながら宝を掘り起こして磨くか、何もないと嘆きながら眠ったままにするか。表裏一体となった2つの選択肢から、後者を選ぶことは容易ですが、前者を選ぶことの価値を強く感じさせられました。

そして私たちのキャラバンは、今後もまだまだ続きます。

次はきっとあなたの街へ。

(text/photo:前田 有佳利)


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この記事を書いた人

MotionGallery編集部

MotionGallery編集部です。

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