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LIVE&EVENT - 2018.12.05

飲み放題&持ち込み放題の「リビングルーム」とは? 若手起業家たちが営むゲストハウス #07 北海道

MotionGalleryとゲストハウス紹介サイトFootPrintsとの共同企画として、日本各地のゲストハウスを旅しながら毎月開催する「ローカルクリエイター交流会 -Guesthouse Caravan-」。第7回は、2018年7月6日(金)北海道の「札幌ゲストハウスwaya」で実施しました。

日本各地のゲストハウスをめぐり、地域のクリエイターたちが垣根を越えて出会える場を開くことで、新たなプロジェクトの芽を育もうとする企画「ローカルクリエイター交流会 -Guesthouse Caravan-(以下キャラバン)」。第7回は、北海道にある「 札幌ゲストハウスwaya(以下waya)」にて開催しました。

札幌の中心市街地に隣接する豊平エリアにあるwaya。その特徴の1つと言えるのは、経営陣の若さです。東京の大学仲間である男性3名が北海道にUターンとIターンで移住。2014年6月、当時22〜23歳という若さで「合同会社Staylink」を設立。専門家や友人・知人の協力を受けながら、築60年のアパートを自ら改修し、同年11月にwayaをオープンしています。

代表を務める河嶋 峻(かわしま しゅん)さんと、柴田 涼平(しばた りょうへい)さん、木村 高志(きむら たかし)さんが、wayaを通じて実現したいのは、すべての人が心の中で「ただいま」と言える"居場所づくり"。その一環として、今年の夏から「リビングルーム」という仕掛けをスタートしています。宿泊者は無料・宿泊者以外は1000円で、室内にあるドリンクが飲み放題かつ持ち込み放題という、破格とも感じられるチャレンジです。

そんな「リビングルーム」実施の狙いや直近の結果、経営に込めた思い、開業から約4年経過した現在の地域との関わりなどについて、wayaの柴田さんに伺いました。北海道を旅するキャラバン全体の様子を添えながら、それらをレポートします。

上記の動画に、今回のキャラバンで巡った足跡をまとめています。ゲストハウスの館内の様子や、ローカルクリエイター交流会の開催風景、北海道に移住して約10年になる喜多あずささんがアテンドしてくれたスポットも記録しています。

第7回、北海道にまつわるメディア関係者が多い交流会に

このキャラバンは、MotionGalleryによる「日本各地で誕生しようとしている熱いプロジェクトにエールを送りたい」という思いと、 FootPrintsによる「ゲストハウスのある旅を通じて、暮らしの選択肢が広がるきっかけを届けたい」という思いを組み合わせて実現しています。

キャラバン隊として各地を巡っているのは、FootPrintsを運営する前田 有佳利(dari)と、「あなたのまちに、新しい映画体験を」をテーマに掲げるマイクロシアターサービス popcornの立ち上げメンバー梅本 智子(moko)。MotionGalleryの専属サポーターでもあるdari&mokoが、ゲストハウス運営者のご協力を得ながら「ローカルクリエイター交流会」を開催しています。

第7回の参加者の顔ぶれは、wayaの改修をサポートした方や常連さんなど、wayaに馴染みのある方々が約半数。業種は、ラジオやテレビの制作関係者、ウェブメディアの運営者やライターなど、北海道の情報発信に携わる方々がやや多い回となりました。


前半1時間が、wayaの柴田さんとdari&mokoによる「活動の原点」をテーマとしたプレゼンタイムです


後半1時間は、全員で交流会。前列の女性2名がdari(左)とmoko(右)です。その後、希望者を募り、街へと繰り出しました

"居場所づくり"を目指して起業。終身雇用ではなく終身関係を

大学卒業後に起業し、ゲストハウスの経営に至ったきっかけは何だったのでしょう。始まりは、北海道出身の河嶋さんが口にした「僕の地元に東京の学生を連れて行きたい」の一言でした。

それは、将来の仕事について日々思いを巡らせていた大学3年生の頃のこと。河嶋さんのその発案をもとに、3 名で企画を具体化し、東京の学生と北海道の学生、総勢約40名を集めた交流会を実現させたのです。それ以来、交流を通じた"居場所づくり"が共通の強い目標となり、目標に向けた1つの手段としてゲストハウスの経営という道へと進んでいきます。

資金調達・物件探し・リノベーション作業など、何もかも初めて尽くし。経験を知識で補うには想像以上に苦労を要したそうですが、周囲の応援を受けつつ、無事開業に至りました。

柴田さん

僕らの会社のミッションは「場を通して人をプロデュースし、夢を実現できる社会をつくること」。SNSが発達して、いつ・誰と・どこでもコミュニケーションが取れる時代だからこそ、実際に人が集まることにひたすら焦点を当てたい。シンプルに「やりたいことをやろう」という経営理念を置きながら、誰かの「やりたい」を一緒に実現できる"居場所づくり"を続けていきたいと考えています。

「合同会社Staylink」という社名は、StayとLinkを掛け合わせたもの。「滞在してつながる」だけでなく「つながったままでいる」という意図も込めています。後者はゲストハウスという場を介したつながりに限らず、社内の人間関係もそうです。僕らが大事にしたいのは、終身雇用ではなく終身関係。一生つながり合える仲間が世界中に広がっていく。そんな会社にしていきたいと思っています。


ゲストハウスwayaの階段で撮影された開業直後の3名の様子。左から順に、柴田さん・河嶋さん・木村さん


ゲストハウスの内装。寝室はドミトリー(相部屋)と個室があり、共有リビングやキッチンもあります

宿泊者は無料・他は1000円で、飲み&持ち込み放題「リビングルーム」の狙い

2015年8月には、ドミトリー(相部屋)として使用していた1階スペースを、交流の場として開くため「Barスペース」に再度改修。さらに、2018年6月1日には、「Barスペース」の在り方そのものを見直し、「リビングルーム」という例のスタイルに変更したのです。

柴田さん

Barだった頃の目標は、売上アップでした。でも僕らが目指しているのは、場づくりであってBarづくりではないって気付いて。だから、短期的な利益追求じゃなく、長期的な存続を見据えながら、まず価値追求に専念する必要があると思ったんです。

でも、どうやったらいいだろう?と悩んでいる時、一緒に経営している木村に一本の記事を教えてもらいました。その内容は、東京のとある居酒屋でドリンクを持ち込みOKにしたことで、来客者同士の“おすそ分け文化”が定着し、場のコミュニティ形成やリピーターづくりに一役買ったというもの。僕らがしたいのはこういうことだ!と、早速実施したのが、この「リビングルーム」というやり方でした。

導入初月の「リビングルーム」の訪問者数は、のべ314名。うち105名が宿泊者で、209名が札幌で暮らす周辺住民だったといいます。現在ではwayaでも“おすそ分け文化”が定着しつつあり、語学や地域の壁を越えた豊かな交流が生まれています。


「リビングルーム」の様子。wayaのスタッフさんたちがカウンターの内側に立ち、場の解説をしています


イベント当日、地元の方からスイカをおすそ分けしていただきました!(写真提供:waya)

相思相愛の関係になりたい。地域に根付いた"居場所づくり"

柴田さんたちの挑戦は、wayaだけにとどまりません。2016年8月には「 札幌ゲストハウス雪結(yuyu)」という2号店をオープン。yuyuと学童保育サービス「アドベンチャークラブ札幌」が連携し、地域の子どもたちの創造性を育むべく、世界中から訪れる旅人たちとの交流イベントを定期的に実施しています。

柴田さん

海外の人たちが「ハロー!」と挨拶すると、子どもたちが照れながら「は…はろー」と返事をして、その光景が可愛くて。英語がしゃべれなくても海外の人とコミュニケーションを取ることで、海外って近いかも、世界って狭いかも、と心理的な距離が縮まって将来の可能性を広げるきっかけとなったら嬉しいです。


yuyuのリビングにて。宿の立ち上げに関わったメンバーで撮った記念の一枚(写真提供:yuyu)

他にも、wayaの近くにある豊平商店街と共同し、地元の子どもたちを対象に「お店物語」という仕事の体験イベントを企画。今まで意外と接点のなかった、商店街の店主と子ども、またその親との新たな関わりをつくっています。

柴田さん

僕らが開業した時、本当に多くの地域の人々が助けてくれました。だから、助けられるだけじゃなく僕らからも何かしたい、相思相愛の関係になれたらいいなと思って、地域とつながる活動を積極的に行うようにしています。

また、もう一度会いたいと思える人が増えること。それが、その場所に再び訪れたくなる唯一の理由だと、僕は信じています。美味しいご飯や素晴らしい景色は札幌にも世界中にもあるけど、また来たいと思ってもらうためには、きっと人とのつながりが大事なんじゃないかって。

だから今後も、僕ら自身がちゃんと地域に根付きながら、全ての人がただいまといえる居場所をつくり続けていきたいと思っています。

会いたい人たちの顔が浮かぶ居場所づくり。今後も、柴田さんたち「合同会社Staylink」が仕掛けるwayaやyuyuを起点としたコミュニティの拡張と再構築は、世界中から訪れる旅人や地元の人々にとって、かけがえのないつながりを生み出していくのでしょう。

その出会いを機に世界に羽ばたいた子どもたちが、いつか大人になって地元に帰り、そこから若手起業家のストーリー第2章がはじまるかもしれませんね。


クラークの名言「Boys, be ambitious(少年よ、大志を抱け)」を思い起こさせるお話でした

そして私たちのキャラバンは、今後もまだまだ続きます。
次はきっとあなたの街へ。

(文/写真/動画: FootPrints 前田 有佳利


この記事を書いた人

MotionGallery編集部

MotionGallery編集部です。

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