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LIVE&EVENT - 2018.10.10

つい集客し過ぎる!? バイク倉庫を改装したゲストハウスの“巻き込み力”が高い理由 #06 京都

MotionGalleryとゲストハウス紹介サイトFootPrintsとの共同企画として、日本各地のゲストハウスを旅しながら毎月開催する「ローカルクリエイター交流会 -Guesthouse Caravan-」。2018年6月14日(木)に実施した第6回の舞台は、京都府宮津市「宮津ゲストハウス・ハチハウス」です。この宿の一番の特徴は、地域の人々を巻き込む力。その背景には、オーナーが小さい頃にご両親の姿から学び、自身も開業前から続ける、あるアクションがありました。

日本各地のゲストハウスをめぐり、地域のクリエイターたちが垣根を越えて出会える場を開くことで、新たなプロジェクトの芽を育もうとする企画「ローカルクリエイター交流会 -Guesthouse Caravan-(以下キャラバン)」。

第6回となる今回は、日本三景の天橋立で有名な宮津市にある「 宮津ゲストハウス・ハチハウス(以下ハチハウス)」へ。宿を起点に、近年続々と都心からローカルクリエイターたちが移住していると噂の、宮津・京丹後・伊根といった京都府北部をめぐってきました。

ハチハウスは、バイク屋のガレージ倉庫をリノベーションし、2015年5月1日に誕生。“泊まれるスナック”をコンセプトに、週末気まぐれ営業の「スナック女王蜂」を併設。それらもインパクトの強い特徴ではありますが、とりわけ注目したいのは、「つい集客し過ぎる」と話すオーナー寺尾 菜々(てらお なな)さんの"巻き込み力"の高さです。

キャラバン当日のレポートと共に、なぜハチハウスを始めたのか?どのように地域の人々を巻き込み、どうして上手に巻き込めるのか?といった裏側のストーリーもご紹介します。

併せて、上記の動画より、京都府北部をめぐるキャラバンの足跡もご覧ください。今回のコーディネーターを務めてくれた「まちの編集者」坂田 真慶(さかた まさよし)さんが、各所へとアテンドしてくれました。

第6回、京都府北部のこれからの担い手が集う交流会に

このキャラバンは、MotionGalleryによる「日本各地で誕生しようとしている熱いプロジェクトにエールを送りたい」という思いと、 FootPrintsによる「ゲストハウスのある旅を通じて、暮らしの選択肢が広がるきっかけを届けたい」という思いを組み合わせて実現しています。

当日のホスト役は、FootPrintsを運営する前田 有佳利(dari)と、"あなたのまちに、新しい映画体験を"をテーマに掲げるマイクロシアターサービス popcornの立ち上げメンバー梅本 智子(moko)。MotionGalleryの専属サポーターでもあるdari&mokoユニットが、各地のゲストハウス運営者のご協力を得ながら、ローカルクリエイターたちに会いに行っています。

第6回の開催地である宮津は、江戸時代には近畿地方有数の城下町として栄えた、京都の海の玄関口。宮津節で「縞の財布が空になる」と歌われ散財するほど、かつては人々を魅了する花街でしたが、今や人口は約1万8千人まで減少。街には穏やかさが漂っています。

イベントの参加者は、そんな宮津で水産業に奮闘する人や、京丹後に移住し織物業を営む人、伊根に移住し古民家を改装して新たな拠点づくりに励む人など。車で30分圏内がひょいと繋がる京都府北部のネットワークの強さに驚かされつつ、街々のこれからを盛り上げていくであろう担い手と一斉にお会いできる夜となりました。


当初定員20名でしたが、予想以上に参加ご希望の声を多くいただき、急遽25名まで枠を広げることに!


ハチハウスから歩いてすぐの場所には宮津湾。イベント前に、近隣の七輪焼きの店で、炙り鮮魚をいただきました


車で30分ほど走ると伊根に着きます。世界的にも珍しい舟屋。重要伝統的建造物群保存地区に選定されています

ゲストハウス開業の理由。地域の"公民館”のような場所を目指して

宮津市生まれの寺尾さん。威勢の良い寿司屋の雰囲気に惹かれ、高校を卒業後、大阪の寿司屋に勤め、大好きな接客業に励んでいました。32歳の時、母の看病をきっかけに実家へ13年越しのUターン。創業40年になる家業のバイク屋を手伝いながら、最初は地元との関わり方を模索していたのだといいます。


ハチハウスのオーナー寺尾 菜々さん。寿司ネタにちなんで、愛犬には「イクラ」と名付けたのだとか

寺尾さん

私が戻ってきた8年前は、同世代が少なく、若い人たちが集まって遅くまでしゃべれる場所もなくて。どうしていったらいいんやろう?って思いが常にありました。家業を手伝いながら、この街で自分ができること・自分らしいことは何だろうって。

家業の影響で、時々バイクで旅をして、各地のゲストハウスに泊まることがあって。旅先でふと、素泊まりの宿なら、料理が苦手な私でも、大好きな接客業に携わることができる。これなら、地元でできるかも!とヒントになりました。


実家のバイク屋「モトハウス テラオ」。ここから徒歩30秒ほどの場所にハチハウスがあります

そこで、バイク屋と同じ通りにある老朽化が進んだ実家のバイク倉庫を、建物自体の修繕も兼ね、ゲストハウスとしてリノベーションすることに。しかし、宮津には民宿やホテルはあっても、ゲストハウスという先行事例はほぼなく、当初周囲の反応は「ゲストハウスって何?」「本当に商売になるの?」といったものでした。

寺尾さん

だから、ゲストハウスという存在の透明化を図るために、公民館のような場所になろうと決めたんです。地元の人たちにいっぱい来てもらって、こういう商売の形があるんだよ、他府県や海外の人だけに向けた場所じゃないんだよって、ちゃんと示したくて。

宿泊ゲストにも、地元の人との会話を通じて、この街に素敵な人がいることを知ってもらいたいし、数日でも地域の一員になったと感じてもらえたらいいなと思っています。

そこで、誰でも気軽に参加可能なイベントを積極的に開催し、スナックを併設して無理のない範囲で時々オープンすることにしたのです。さらに、地域の人々が自分のしたいことを実現できる場としても活用してもらえるようにと、持ち込み企画を歓迎しました。

その結果、ヒップホップやフラダンスといったダンス教室、落語、手話や認知症の勉強会、ビアガーデン、宮津の飲み屋をめぐるツアーなど、地元の人々と協力したさまざまな企画が行われ、ハチハウスはどんどん地域に開かれた存在となっていきました。


元倉庫と聞くとイメージが湧きづらいかもしれませんが、非常に心地の良い宿です。寝室は二段ベッド式の相部屋


中庭やリビングといった憩いのスペースから、台所・シャワー・トイレなどの水周りまで綺麗に整えられています


ハチハウスの一室を使って時々運営されているスナック「女王蜂」

地域の人々を繋ぎ、かつての賑わいを取り戻す企画「えびす横丁」

寺尾さんが携わる数々の企画のうち、特筆したいのが、2018年4月22日に開催された「えびす横丁」。ハチハウスの前にある蛭子通り沿いの住宅の軒先を借り、今の宮津を象徴するような店主たちが集まって一日限定の商店街をつくるというイベントです。

酒屋やパン屋といった「食」だけではなく、地元の古物屋や和紙作品のショップ、ブリーダー、靴磨きなど、今の宮津を形づくる「職」を表現しようという趣旨のもと、19店舗分のブースが蛭子通りに並び、約500名の来場者で賑わいました。

寺尾さん

ちょうどハチハウスを始めた4年ほど前から、宮津界隈にUIターンをする面白い人たちが増え始めて、地域内の関係づくりで相談を受けることが多くなりました。だったらと、彼らを一斉に繋ぎながら、こんな人たちが今の宮津をつくろうとしているよと地域のみんなにお知らせする場になればと、「えびす横丁」を開催することにしたんです。

実際やってみたら、子どもからおじいちゃんやおばあちゃんまで、思っていた以上に地域のいろんな人たちが訪れてくれて。昔の街の賑わいを彷彿とさせる光景を目の当たりにして、私はこれが見たかったんや!と気付かされました。


えびす横丁当日、軒先の出店だけでなく、ダンスパフォーマンスも行われました(写真提供:ハチハウス)

"巻き込み力"の秘訣。好きという気持ちをもとに、自分から行動を起こす

「人を集めるのが得意で、イベントではつい集客し過ぎてしまって。ブレーキが壊れているんですよ、私」と照れ笑いを浮かべる寺尾さん。ハチハウス改装前からの相談相手であり、寺尾さんのことをよく知る、株式会社 宮津町家再生ネットワーク 代表取締役の羽田野(はたの)まどかさんが、"巻き込み力"の高さの理由を教えてくれました。

羽田野さん

菜々ちゃんが開業前から続けていることが重要なんだと、私は思います。彼女が起業をしようと考え出した頃、「自分が暮らす街なのに知らないことが多い」と、どんどん街に出て知ろうとした。そして、良いなと思った宮津の場所や人たちのことを、素直な気持ちで言葉にして、外へ発信し続けてきた。そうやって菜々ちゃんに応援された人たちは、結果的に菜々ちゃんが何かするという時は応援したくなるんです。

好きという素直な気持ちをもとに自分から起こすアクションが、気付けば相手の役に立ち、感謝の気持ちが良い循環を生む。実はこれは、バイク屋を営むご両親が、昔から大切にしてきた行動でもあるそう。ご両親の背中を見て、寺尾さんの"巻き込み力"が育まれていったのです。そして、そんな寺尾さんの背中は、きっとまた別の誰かに影響を与えていくのでしょう。

寺尾さん

ハチハウスを通じて、こんな私でもできるんだってみんなに見てもらえたら、「じゃあ、自分にもできるんじゃないか」って誰かの勇気になるかもしれない。そうなったら嬉しいです。そういう意味でも、巻き込み型ゲストハウスで、今後もがんばります!

そして私たちのキャラバンは、今後もまだまだ続きます。
次はきっとあなたの街へ。

(文/写真/動画: FootPrints 前田 有佳利


この記事を書いた人

MotionGallery編集部

MotionGallery編集部です。

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